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#近未来
鳳蓮荘
751
#憑依
成瀬りん
633
#家族
たつ
53
吹雪舞う白銀の世界。
唯我は厚い雪を踏みしめながら、田舎道を一人、急ぎ足で進んでいた。
畑中から届いた一本の連絡。
「探していた人物の情報が入った。場所は、北部の雪深い町――」
唯我は胸の内で静かに呟く。
(……本当に、美鈴なのか?)
風が吹きすさび、頬を切るような寒さが容赦なく顔を打つ。
だが唯我の足は止まらない。
ふと、幼い日の記憶が脳裏をよぎった。
小さな手。
白い息。
泣きじゃくる誰かの声。
そして――遠ざかっていく背中。
唯我は立ち止まり、白く霞む雪景色を見つめる。
その瞳の奥には、決意とわずかな迷いが揺れていた。
寒村にて
到着したのは、山間にひっそりと佇む小さな町だった。
雪に埋もれた木造家屋。
人気のない通り。
唯我は人影を探しながら、黙々と歩き続ける。
だが集まる情報は断片ばかりだった。
「本当にここにいるのか……?」
焦りを抱えたまま、唯我は雪道の片隅に腰を下ろす。
吐く息は白く、胸の内だけが熱を帯びていた。
その時――
「おや、若いの。こんなとこで冷えちまうぞ」
振り返ると、毛糸の帽子を被った年配の農家の男性が立っていた。
手には湯気の立つ水筒。
穏やかな笑みを浮かべている。
「探し物かい? 旅人にしちゃあ、ずいぶん鋭い目をしてるな」
唯我は少し警戒しながら答えた。
「……人を探しています。霧島美鈴という名前です。昔、この町にいたと聞いて」
男は眉を寄せ、遠くを見るように目を細める。
「あぁ……美鈴ちゃんか。確かにおったよ。もう随分前の話じゃがな」
唯我の表情が変わる。
「本当に?」
「詳しい話は、焚き火でも囲みながらにしようや。宿も空いとるし、腹も減ったろう。今夜はウチに泊まっていきなさい」
唯我は数秒考えた後、静かに頭を下げた。
「……お願いします。少しでも、何か知っていることがあれば」
小さな希望の灯火。
唯我はその光を頼りに、一晩この町に留まることを決めた。
農家の男と並び、雪道を歩き出す。
二人の背中を、夕暮れの柔らかな光が照らしていた。
雪原に潜む影
――その様子を、遠くの林の陰から見つめる存在があった。
雪原の中に浮かぶ、異様な黒い影。
まるで世界から切り取られた闇のように、その場に佇んでいる。
輪郭は曖昧。
だが確かに、人の形をしていた。
その奥で、冷たい双眸が不気味な光を放つ。
雪の冷気すら届かぬ異様な気配。
人ではない何かが、静かに笑った。
「……まさかここまで来るとはな」
低く響く声。
そして口元が歪む。
「さて――試してやるか」
影が一歩踏み出す。
その足元から黒い闇が広がり、雪を侵食するように這っていく。
「お前がどこまで強くなったのかをな」
唯我と農家の男は、その存在に気付くことなく町の奥へと消えていった。
だがその背後では、新たな脅威が静かに動き始めていた。
そして――
唯我と美鈴を巡る運命が、再び交差しようとしていた。
コメント
1件
唯我の胸の中で揺れる「決意と迷い」、あの雪景色に立つ描写がとても胸に響きました。幼い日の記憶の断片がフラッシュバックするのも切ない。農家の男性が差し出す湯気と「ウチに泊まっていきなさい」という距離の詰め方、あったかいなあと思いました。そして最後の黒い影——不気味だけど、これから唯我がどう立ち向かうのか、続きがすごく気になります。