テラーノベル
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昼休み。
珍しく三年生の教室に人が少ない。
その窓際で、風音と守土は並んで座っていた。
風音「……でさ」
風音が小さく口を開く。
風音「昨日の問題、あれどうやって解いた?」
守土「昨日の?」
風音「数学」
守土「ああ」
守土は自分のノートを開いた。
守土「ここはこうして……」
「なるほど」
風音が身を乗り出してノートを見る。
その背中では、六本の手が暇そうに揺れていた。
一番上の手は風音の髪を弄り。
別の手は机を指でとんとん叩いている。
守土はそれを見ながら、ふっと笑った。
守土「……相変わらず、元気だね」
風音「何が?」
守土「その子たち」
守土の言葉に、風音は背中を見る。
風音「……まあな」
守土「僕の目も、さっきからずっと見てるよ」
守土が右手を持ち上げる。
手の甲にある黒っぽい赤色の目が、ぱちぱちと瞬きをした。
その瞬間――
??「ねぇねぇ!」
突然、頭上から声が降ってきた。
風音「……?」
守土「……?」
二人が同時に顔を上げる。
そこには、緑色の髪をした男子が立っていた。
ぱっちりとした緑色の瞳。
少しくせのある髪は、後ろがぴょこんと跳ねている。
??「何の話してるの?」
にこにこと笑いながら、二人を見ている。
風音は少し眉を寄せた。
風音「……誰?」
??「え?」
緑髪の男子が目を丸くする。
??「同じクラスじゃん!」
風音「……そうだっけ」
??「そうだよ!」
守土が苦笑する。
守土「風音くん、この人……風速くんだよ」
風音「へぇ」
風速「へぇって!」
風速が笑う。
風速「俺、結構このクラスにいるんだけどなぁ」
風音「……ごめん」
風速「いいけどさ!」
風速は全然気にしていない。
そのまま二人の前の席を引いて、くるっと椅子を回した。
風速「で? 何話してたの?」
風音「数学」
風速「数学かぁ」
風速は机に頬杖をつく。
風速「俺、数学ちょっと苦手なんだよね」
守土「……意外」
守土が言う。
風音「守土は得意そうだもんね」
守土「まあ……嫌いではないかな」
守土「風音は?」
風音「普通」
風速「絶対嘘!」
守土「なんで?」
風速「だってこの前のテスト、学年上位だったじゃん!」
風音「……見てたのかよ」
風速「そりゃ見るよ!」
風速が笑う。
そのとき。
風速の足元に落ちている影が、わずかに揺れた。
風音の六本の手のうち一本が、ぴたりと止まる。
守土の右手にある目も、風速の足元へ向いた。
風速「……?」
風速は二人の視線に気づいた。
風速「どうしたの?」
風音「いや……」
風音が目を細める。
風音「……今、影」
風速「影?」
風速が足元を見る。
いつも通りの自分の影。
けれど、その影は風音と守土を見ているように、ほんの少しだけ揺れていた。
風速「……ああ」
風速はしゃがみ込む。
風速「こいつ?」
守土「……こいつ?」
守土が首を傾げる。
風速は自分の影をぽんぽんと叩いた。
風速「俺の友達」
風音、守土「…………」
風音と守土が顔を見合わせる。
守土「……友達?」
風速「うん!」
風速は当たり前のように答えた。
風速「ずっと一緒にいるんだ」
影が、少しだけ動いた。
そして――
風速の足元から、ゆっくりと離れていく。
黒い影が床を這うように広がり、
やがて、人の形へと変わっていく。
影「……」
顔はない。
目もない。
口もない。
ただ、人の形をした真っ黒な存在。
風音の六本の手が、一斉に守土の背後へ隠れた。
守土「……珍しい反応」
守土が呟く。
風速「お前の手、びっくりしてる?」
風音「たぶん、てか、見えてたの?」
風速が影を見る。
風速「まぁね!話しかけていいのか迷ってたんだよ」
すると影は風速の隣で、
ぺこっ。
と頭を下げた。
風音「…………」
風音が固まる。
守土も固まる。
守土「……礼儀正しい」
風速「でしょ?」
風速は嬉しそうに笑った。
風速「こいつ、いいやつなんだよ」
風音の背中から、一本の手がそろそろと伸びる。
影の前で止まる。
風速がそれを見る。
風速「触ってみる?」
風音は少し迷ってから、
風音「……いいの?」
風速「もちろん!」
手が影に触れる。
風音「……」
風音が目を丸くする。
風音「……冷たくない」
風速「へへ」
風速が笑う。
風速「じゃあ次、守土も」
守土「僕?」
守土が右手を差し出す。
その手の甲の目が、影をじっと見つめている。
影も、守土の手を見る。
影「……」
目「……」
右手の目が、ぱちっ。
影が、
ぺこっ。
守土「ふふっ」
守土が笑った。
守土「よろしく」
影がもう一度、
ぺこっ。
風速は満足そうに笑う。
風速「よし!」
そして、風音と守土を交互に見る。
風速「ねぇねぇ!」
風音「……何?」
守土「……どうしたの?」
風速「俺たちさ!」
風速は満面の笑みを浮かべた。
風速「仲間になれそうじゃない?」
二人は一瞬、黙った。
風音の六本の手が揺れる。
守土の右手の目が細くなる。
そして――
風音「……悪くないかもな」
風音が小さく笑った。
守土「僕もそう思う」
守土も笑う。
風速「やった!」
風速が嬉しそうに拳を握る。
その足元で、影も嬉しそうに揺れた。
こうして――
六本の手と。
一つの目と。
一つの影と。
三人の高校生の、少し不思議な日々が始まった。
コメント
1件
第4話、めっちゃ良かった! 風音の六本の手と守土の目の描写が自然で、そこに風速の影が加わって一気にコミュニティ感が出たよね。特に影がぺこって頭下げるところ、めっちゃ可愛くて笑ったわ。能力者同士が「仲間になれそう」って感じで繋がる流れがすごく心地よかった! この3人+αの日常、これからどう転がっていくのか楽しみすぎる🔥
#カラフルピーチ
ハム✨投稿2ヶ月 1週間執事化
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