テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【水縹と紫苑の行く末】
nk×sm 死ネタ含む
【Side きんとき】
ただのサボりだった。こんな気分で授業に集中できるわけが無い。仕方がない、と心のなかで言い訳をする。
「……えっ」
誰も来ない、屋上への階段を登った先に、彼はいた。
水色の瞳に焦げ茶色の髪。背が少し低くて、華奢な体。
「な、Nakamu……?」
それは、明らかにNakamuだった。でも、どうして?
昨日、彼の葬式に行って別れを告げたのに。もう二度と会うことはできないと、散々涙を流したのに。24時間後に再会してしまった。
肝心の彼は、元々大きい目をさらに大きく見開いたまま動かない。
「俺のこと、見えるの?」
ようやく彼が口を開いたかと思えば、よく分からない質問をしてくる。
「え、うん」
「じゃあさ、ここ、座って」
彼は、自分の隣を指し示す。俺は、そこにゆっくりと腰を下ろした。
「ねぇきんとき」「俺は今、ユウレイなんだ」
「ほら、触ってみて」
Nakamuが、右手を差し出してくる。そこに自分の手を重ねようとしたが、その手は空を切った。
「なにこれ……」
そこにいる筈なのに触れられない。よく見れば、影もなかった。
「俺は、誰からも見えない筈だよ」
「俺の声もさ、誰にも聞こえない筈なんだよね」
「じゃあ俺今一人で喋ってるヤバイ奴なるじゃん」
「そうだね」
「どうしてここに居たの?」
「屋上に行ってみたかった」
「……どうして、ユウレイになったの?」
「それはねぇ、俺もよくわかんない」
「気づいたらこうなってたからさ」
彼の口ぶりは意外にあっけらかんとしていて、なんだか拍子抜けしてしまった。
なんかもっと、こう___
「死んじゃって、悲しくないの?」
不安だとか悲しみだとか、そういう負の感情がNakamuからは感じられなかった。
俺の問いかけにNakamuは、はっとした顔をする。
その後、目をそっと伏せた。
「そりゃあ悲しいよ」
「誰にも気づかれなくってさぁ、独りぼっちでさぁ、話し相手もいなくってさぁ」
「すっごく怖かったよ」
「どこに行っても自分の存在は空気みたいでさぁ」
「でもね、今きんときと話せたことが」
俺はすっごく嬉しいんだ
彼はそう言って、笑った。その笑顔はとびきり明るくて、それでいて、とても悲しそうだった。
きっと、彼なりに『死』に向き合っているんだろう。悲しくない訳がないじゃないか。だって、まだたった17歳の少年だ。Nakamuのことだから、夢とかやりたいこともたくさんあっただろう。
「そっか」
二人の間に気まずい沈黙が流れる。この話題の後に何を話せばいいかよく分からない。
「てかさ、きんときは何で俺のこと見えるの?」
先に口を開いたのはNakamuだった。
「うーん……俺別に霊感とか強くないよ?」
「だよね」
心当たりなんて全く無い。幽霊を見たのはNakamuが初めてだし、心霊現象の類も出くわしたことはなかった。
「あとの4人はどうだったの?」
「多分見えないと思うけど……」「まだ会ってないからわかんない」
「ま、親友パワーってことじゃない?」
「そういうことにしとくか!」
二人で顔を見合わせ、ケラケラと笑う。
こんな何気ない時間がずっと続けば良かったのに。