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ああ、もう、胸がぎゅっとなりました……。零号体が「♡♡♡てない」って自分の手を見つめるシーン、本当にぐっときました。涼架が「命だから」って伝えた言葉が、ちゃんと届いてるんだなって。でも最後の“処刑犬”、あの絶望感たるや……。次が気になって仕方ないです。
山の下で、サーチライトが揺れていた。
無線のノイズ。
犬みたいな遠吠え。
木々を踏み潰しながら、何かが近づいてくる音。
ヒロトは窓際で震えていた。
「……来る」
モトキが前へ出る。
狼耳が立つ。
だが、その横を。
零号体が静かに通り過ぎた。
裸足のまま。
床に血のついた足跡を残しながら。
涼架が反射的に腕を掴む。
「待って」
零号体が振り返る。
赤い目。
その瞳に、さっきまでより少しだけ感情が宿っていた。
怒り。
そして
“守りたい”という感覚。
『りょうか』
「行っちゃダメ」
涼架の声が震える。
「君が行ったら、いっぱい死ぬ」
零号体は数秒黙った。
それから、不思議そうに聞く。
『だめ?』
「……ダメ」
『なんで』
涼架は言葉に詰まる。
零号体にとって、“敵を壊す”ことは呼吸みたいなものだ。
善悪が分からない。
殺すことの重みも知らない。
だって
誰も教えなかったから。
涼架は苦しそうに目を伏せる。
「……命だから」
零号体が首を傾げる。
『いのち』
「死んだら、戻れない」
静かな声だった。
「苦しくても、怖くても、生きてる方がいいんだよ」
モトキが目を見開く。
ヒロトも黙って聞いていた。
涼架はゆっくり零号体の手を握る。
冷たい。
だけど
ちゃんと生きている手だった。
「君にも、生きてほしい」
零号体の目が揺れる。
理解できない。
でも
胸の奥が、変だった。
痛いみたいに熱い。
『……わかんない』
「うん」
涼架は少し笑った。
「ゆっくりでいいよ」
その瞬間だった。
――バンッ!!
窓ガラスが砕け散る。
ヒロトが悲鳴を呑む。
飛び込んできたのは、人影。
いや
“獣人”。
犬型の耳。
異様に膨れ上がった筋肉。
濁った目。
口元には涎。
理性がほとんど残っていない。
「捕獲……対象……」
掠れた声。
モトキの顔が険しくなる。
「……薬で無理やり戦わせてる」
その獣人は次の瞬間、ヒロトへ飛びかかった。
「っ!!」
だが
ヒロトへ届く前に。
零号体が、その顔面を掴んでいた。
空気が止まる。
獣人の巨体が、片手で持ち上げられている。
ヒロトの瞳が震えた。
ありえない。
力の桁が違う。
獣人は暴れる。
だが零号体は無表情だった。
ただ
じっと相手を見る。
『……いたそう』
次の瞬間。
獣人の身体から、力が抜けた。
崩れ落ちる。
死んではいない。
ただ、完全に意識を失っていた。
モトキが息を呑む。
「……手加減、した」
零号体は自分の手を見つめる。
少し不思議そうに。
『ころしてない』
涼架の目が見開く。
零号体が、自分で止めた。
今までなら考えられなかった。
その時。
外から怒声が響く。
「零号体を確認!!」
「確保しろ!!」
サーチライトが家を照らす。
森の奥には 武装兵。
そして
檻みたいな装置を背負った大型車両。
涼架の顔色が変わる。
「あれ……捕獲用だ」
ヒロトが震える。
「捕まったら……」
涼架は答えなかった。
答えなくても分かる。
また、地獄に戻される。
零号体は窓の外を見る。
静かに。
すると
ぽつり、と呟いた。
『……また、いたい?』
その言葉に。
涼架の胸が締めつけられる。
零号体は、覚えているのだ。
痛みだけを。
彼の人生の全てだったあの実験を。
涼架は強く首を振った。
「違う」
零号体が振り返る。
涼架は真っ直ぐ見た。
「もう誰も、痛い思いさせない」
その言葉を聞いた瞬間。
零号体の赤い目が、初めて柔らかく揺れた。
まるで
凍った何かが、ほんの少しだけ溶けたみたいに。
だが
次の瞬間だった。
山の奥から、重低音が響く。
ドォン――……
地面が揺れる。
モトキの耳がぴくりと動く。
「……なに」
そして現れた。
森を押し潰しながら。
四メートル近い巨体。
黒い毛皮。
異形の狼。
その背中には、無数の薬液チューブ。
口元からは血混じりの泡。
目は完全に壊れていた。
ヒロトが青ざめる。
「……うそ」
涼架の声が掠れる。
「あれ……失敗作の、“処刑犬”……」
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