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昼のリビングはやたら明るくて、マイクのランプがちかちか光ってる。
「今日は…セキュリティ対決!」
「望むところだよぜんいちきゅん!」
マイッキーの声、いつもより楽しそう。
ぜんいちは横で笑いながら、
「じゃあ早速作ろっか!」
「コマンドブロックをおいて…」
「土ブロックで家を作って〜…」
「え、マイッキーほんとにそれで大丈夫!?」
軽口。
コントローラーの音。
肩が触れる距離。
「おおマグマね!マイッキーいいじゃん!」
「やっぱ僕天才だね!」
「なんでよw」
空気は完全に“いつもの二人”。
そのとき、
テーブルの上でスマホが震えた。
短い音。
一回。
マイッキーの声が、ほんの一瞬だけ途切れる。
「……あ、ミスった」
すぐ笑って、
「今のカットで」
スマホをさっと伏せる。
動きは自然。
でも、ちょっと早い。
「通知?」
ぜんいちは画面見たまま聞く。
「友達」
即答。
「ゲームの誘いじゃない?」
「今?」
「今」
マイッキーは平然として、
マイクに向き直る。
「気を取り直して後半いきまーす」
「集中集中!」
「……そうだね!」
実況は続く。
笑い声も、掛け合いも戻る。
でも、ぜんいちは
さっきの“間”だけを覚えてる。
「最近さ」
少しだけ間を置いて。
「友達からよく来るね」
マイッキーは一拍遅れて、
「そう?」って笑った。
「まあ、暇なんでしょ」
軽い。
軽すぎるくらい。
「そっか」
ぜんいちはそれ以上言わない。
言わないけど、
伏せられたスマホから
目だけは離れなかった。
「よし、次ラスト!」
マイッキーが明るく言う。
楽しそうな声。
変わらない距離。
それでも、
通知音だけが、
実況の外で静かに残ってた。