テラーノベル
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「はい、終了!」マイッキーが勢いよくボタンを押して、
マイクのランプが消える。
「つかれたー」
「今日いい感じだったんじゃない?」
二人同時に息を抜いた、その瞬間。
――♪♪♪
スマホからの着信音。
しかも、
マイッキーのスマホから。
画面が点いて、
着信表示がはっきり見えた。
名前。
知らない名前。
マイッキーが一拍遅れて固まる。
「……あ」
すぐに画面を伏せる。
切る、じゃなくて、
伏せる。
音だけが消える。
「……電話?」
ぜんいちは静かに聞いた。
「友達」
マイッキーは早い。
「今じゃないから」
「ゲーム終わった瞬間だったけど」
冗談みたいな口調。
でも、目は逸らさない。
「たまたま」
マイッキーは笑って、
すぐ距離を詰める。
「ね、喉乾かない?」
「飲み物取ってくる?」
話題を切る速度が、
少しだけ速い。
「……誰?」
ぜんいちは、
初めて単語を変えた。
「え」
マイッキーの動きが止まる。
一瞬。
ほんとに一瞬。
「ただの友達」
それから、
「心配しすぎ」
軽く言って、
ぜんいちの肩に触れる。
「今日は俺たちの日でしょ」
その言葉は甘い。
でも、
さっきの着信が
まだ部屋に残ってる。
ぜんいちは頷く。
頷くけど、
“名前”だけが頭から離れない。
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