病室の夜は、
いつもよりずっと長かった。
天井の灯りが落とされ、
ナースステーションのざわめきが遠くに聞こえる。
元貴のベッドサイドで若井が手を握っている。
モニターの音は規則的だけど、
その息は浅く、唇は白っぽくて、
見ているだけで胸が潰れそうになる。
「……若井、」
かすれた声で元貴が目を細める。
頬に触れた若井の指先に、
弱々しく自分の指を絡めた。
「大丈夫だ、俺がいる」
若井は絞り出すように、
低く、でも確かにそう言った。
こんな声、誰にも聞かせたことがない。
どんな患者にも、
どんな看護師にも見せなかった顔で、
ただ元貴のためだけに必死に笑顔を作っている。
「……ねえ、若井、もし……」
元貴の瞳が、ふいに泣きそうに揺れる。
「もし俺、ずっと
このままでも、笑っててくれる?」
「そんなこと言うな」
若井は苦く笑って、頭を撫でる。
「必ず連れて帰るからな」
隣のベッドから
涼ちゃんが心配そうに身を起こし、
「元貴……無理しないで、ね……」
と小さな声で言った。
でもその声すら遠くなっていくようで、
元貴は瞳を閉じかけたまま、
力を振り絞って言葉を紡ぐ。
「起きたら、キスしてよね……」
「約束だよ…?」
その一言が空気を
裂いたみたいに、若井の喉を詰まらせる。
返事をしようとするけど、声が出ない。
ただ強く元貴の手を握りしめるしかない。
モニターの音がやけに大きく響く。
静かな病室の中で、時間が止まったように感じた。
若井の指先に残る温もりだけが、
ほんのかすかな救いのようにそこにあった。
指先の感覚が無くなった。
どうでしょうか?
今回は、元貴でも、若井でも、涼ちゃん
でもない視点で描いてみました。
一応今話で、
主話は完結にさせていただきます。
番外編として、また続きが出るので
ぜひご覧くださいね(^。^)
軽いバッドエンドのような感じの仕上がりになって
おります。
ご観覧、誠に有難うございます。
皆様のお陰で100人フォロワー様、
達成させていただきました。
今年の5月末くらいから、?
始めていたのですが、早い者ですね。
ありがとうございます😉
何卒宜しくお願い致します🥺
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