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次に目を覚ました時、もう寮室には誰もいなかった。
みんな学校に行ってしまったのだろうか。
机の上には、ラップされた冷えた朝ご飯と、
先輩が書いたのであろう手紙があった。
『莉犬くん。おはよう。昨日は色々なことが話せてよかったよ。朝ごはん、食べれる分だけ食べてみてね。俺たちは、それぞれ学校に行きました。莉犬くんは、先生にも連絡しておいたから大丈夫だと思ったら学校に行ってね。
無理そうだったら、大丈夫だよ。ななもり。」
あぁ、皆んな行っちゃったんだ。
先輩もるぅとくんもいない寮室はここに来て初めて体験したものだった。
室内は静かで、心なしかいつもよりも涼しいように感じた。
窓の外を見てみると、雨がシトシトと降っていて外に出るのが億劫になってしまうほどだった。
用意された朝ご飯を手に持って、電子レンジの中にいれる。
3分ほど待つと電子レンジから音が聞こえて、
湯気の経つ朝ご飯を机に並べる。
莉犬「いただきます…」
莉犬「あちち、」
莉犬「おいし…」
1人だったのはあの頃と変わらないのに、今では凄く寂しく感じた。
朝ご飯は、3つの大きなおにぎりと焼き鮭とお味噌汁だった。
メニューを見ると寮でおにぎりが出されることは無かっため、きっと誰かが握ってくれたのだろう。
大きさからして、ジェル先輩だろうか。
俺のために、俺のためだけに握られたおにぎりはやけに美味しく感じた。
莉犬「もぅ、ぃいかな…」
作ってくれたおにぎりを全て食べることはできなかったけれど、最低限食べれるところは食べることができた。
ブルブルブル
スマホが震えた。
スマホを手に持つと、るぅと君からの連絡が来ていたことに気がついた。
るぅと「体調どう?」
るぅと「朝ご飯美味しかったですか?」
るぅと「ジェル君が握ってくれたんですよ」
るぅと「学校には来れそう?」
るぅと「連絡待ってます♪」
連絡は30分ほど前から送られてきていて、
それに気づけなかった自分に不甲斐なさを感じてしまう。
莉犬「るぅと君連絡ありがとう」
莉犬「体調は大丈夫そうだよ」
莉犬「朝ごはんも美味しかった」
莉犬「準備終わったら向かおうかな。」
送ったメールにはすぐに既読がつき、可愛らしいスタンプと共に返信が来る。
るぅと「待ってる!!!」
俺はグッドとスタンプを送った。
食べ終わったお皿以外にはラップをして、自分の部屋に戻り制服に着替えた。
制服はブカブカで、新一年生というそのものを感じた。
カレンダーを見てみると今日は先輩と後輩の交流の日で、るぅと君が楽しそうにそれについて話していたのを思い出した。
莉犬「会えないかなぁ、」
バッグを掴んで、寮室を出る。
先輩に言われた通りに鍵をかけて、昨日通った道をもう一度通った。
莉犬「あれ、ここどこ、?」
焦りに焦り散らかして、スマホを持った右手からスマホが落ちる。
運良く、フィルムは割れていなかった。
校内マップを開いてしばらく歩くも、それらしい教室は見当たらなかった。
これは完全に迷子である。
?「あれ?君、一年生?」
莉犬「は、はい」
?「皆んななら講堂にいると思うよ」
?「ほら、高校生との交流会」
?「君何組?送っていくよ」
莉犬「一年A組です。」
?「あ、もしかして莉犬くん?」
?「担任から話を聞いているよ」
?「入学早々大変だったね」
#似たような作品があってもパクリじゃない
莉犬「そんなことないです」
?「あ、俺社会科の如月。よろしくね。」
莉犬「お願いします」
如月「どう?慣れた?」
莉犬「少しずつですけど」
如月「まぁまだそんな経ってないもんね」
如月「莉犬くんは寮生だったっけ?」
莉犬「はい、そうです」
莉犬「よく知っているんですね」
如月「ははは、君は有名人だからね笑」
莉犬「有名人、?」
如月「入学初日から不幸だったからね笑」
莉犬「あ、そういう…」
如月「そうそう笑」
如月「体調はどうなの?」
莉犬「もう、大丈夫です」
如月「向こう立ってばっかりだからね」
如月「気をつけるんだよ」
莉犬「ありがとうございます」
如月「ここまっすぐ行ったら講堂ね」
如月「私はこっちなんだ笑」
莉犬「そうでしたか、」
莉犬「ありがとうございました」
如月「はーい、行ってらっしゃい!」
如月先生はどうやら遅刻をしているらしい。
まぁ、俺も遅刻とおんなじようなものなのだけど。
おんなじようにされたら困る。
るぅと「おぉ、莉犬!!」
小声でるぅと君から声をかけられた。
るぅと「莉犬、ここだよ!」
るぅと「もう大丈夫なの?」
莉犬「うん、大丈夫、ありがと」
るぅと「ご飯は全部食べた?」
莉犬「大体は食べたかな」
るぅと「そっか、ならよかった!」
この会の主なところをこれから始まるらしく、
ちょうど良いタイミングだったらしい。
先生の話を聞き終わると、それからは先輩後輩合同のパーティーが行われる。
担任「何かあったら、こっちに来てくれ」
担任「それじゃあ、行ってらっしゃい!」
担任「あ、莉犬さん!」
莉犬「先生…」
担任「体調はどうですか?」
担任「もし辛かったら言ってくださいね」
莉犬「もう、大丈夫です」
莉犬「ありがとうございます」
担任に軽く会釈してから、会場に向かう。
隣には礼の如くるぅとくんがいる。
るぅと「楽しみだね!莉犬!」
莉犬「楽しみだね」
るぅと「どんなことするんだろう?」
莉犬「話すとかじゃないの?」
るぅと「あれ、話聞いてなかったの?笑」
るぅと「お菓子とかもあるんだよ」
るぅと「あとなんか、イベントもあるらしい」
るぅと「絶対楽しいよねこんなの!」
目をキラキラと輝かせて、前進するるぅと君を見てますます体調が悪いことなんて言えないなと思ってしまう。
今は体調が良いから良いとしても、いつどうなるかは自分にもわからない。
もし何かあった時。
るぅと君にはきっと言えない。
るぅと「莉犬!先輩いるよ!!」
そう言われて前を向くと、たくさんの後輩に囲まれた先輩たちの姿が見えた。
莉犬「凄いね、めっちゃ人気」
るぅと「顔がいいですからね」
莉犬「確かにね」
先輩達は俳優さんなのかという顔つきをしていて、それぞれが種類の違ったイケメンである。
まぁ、それは俺を除いてって話だけれど。
莉犬「これじゃ話せそうにないね」
るぅと「うーん、そうだね」
るぅと「他見てみよっか!」
莉犬「あ、うん!」
先輩と話せないのは少し残念ではあったが、この状況を考えると仕方のないことだと思う。
先輩「こんにちは〜」
先輩「2人は誰かと話さないの?」
後ろにいたのは知らない先輩で、ネクタイの色を見る限り高校2年生なのだと悟った。
先輩「俺は誠!君たちは?」
るぅと「僕はるぅとです!」
るぅと「こっちは莉犬!」
るぅと「莉犬は恥ずかしがり屋なんです」
さらっと酷いことを言われる。
莉犬「違うもん!!」
るぅと「えぇ、こんなに緊張してるのに?」
こんなにと言うのは、るぅと君の背中の後ろに隠れて服を摘んでいる姿のことだろうか。
それに気づくと、隣に出て服から手を離した。
先輩「可愛いね君たち笑」
先輩「もしかして、寮の子?」
先輩「見たことある気がする…」
るぅと「そうです!ななもり先輩の!」
先輩「あぁ、ななもり先輩か。」
先輩「すげぇはそれは笑」
先輩「つぅことは、さとみところんか!」
るぅと「そうです!!」
先輩「2人ともいいやつだろ?笑」
るぅと「ころん先輩は馬鹿ですよ?」
先輩「あいつも言われるもんだなぁ笑」
先輩「学年的には頭いいんだけどな笑」
先輩「まぁ、馬鹿そうなのはわかるよ」
るぅと君はあっという間に先輩と打ち解けて少しずつタメ口になっていく。
悪いことじゃないんだろうけど、この警戒心のなさには少し驚いてしまう。
もちろん、俺は緊張なんて解けるはずもなく震える手で握り合って見なかったことにする。
それくらいしか、気持ちを変える方法を思いつくことができなかった。
先輩「莉犬くんだっけ?」
先輩「これ、食べる?」
差し出されたのはイチゴチョコのコーティングをされた可愛らしいマドレーヌだった。
莉犬「いただきます…」
それを手に取って口に入れるとほんのりと甘い味が口の中を満たしていった。
莉犬「美味しい…」
先輩「だろ!俺も好きなんだよねぇ」
先輩「舌があうね」
るぅと「莉犬良かったね」
莉犬「一口食べる?」
るぅと「いいの?食べる!!」
そう言ってマドレーヌを齧るるぅと君。
驚いたように目を見開いて美味しそうに口を上舌に動かしていた。
先輩「美味しい?」
るぅと「めっちゃ美味しい!!」
先輩「あはは、良かった笑」
先輩「楽しんでね〜、俺向こう行くから!」
そう言って駆け足で向かう先輩の目の先には可愛らしい先輩がいた。
きっと、恋人か好きな人なのだろう。
甘酸っぱいなぁ。
そう思った。
るぅと「あれは恋だね!恋してる!」
莉犬「やっぱり?」
るぅと「あ、気づいてたんだ笑」
るぅと「いいなぁ、楽しそう」
莉犬「楽しくないの、?」
るぅと「ううん、楽しいよ!」
るぅと「いや、好きな子いるのいいなって」
莉犬「あ、なるほど…」
いまいちその感情は理解することができなかったのだけど、きっとこれが普通の男の子というものなのだろう。
るぅと「莉犬次向こう行こ!!」
そう言って強めに手を掴んで引っ張るるぅとくん。
それは俺が思う以上に幸せな時間だった。
きっとあの生活を続けていたらこの幸せは感じることがなかったのだろう。
やっぱり頑張って良かったと、過去の自分を褒めてやった。
これで少しでも報われていたらいいな…。
そう思いながら、一歩二歩と前進した。
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