好きだったよ。
なぁ、好きだったんだよ。真ちゃん。
似合ってねえクソダサい髪型
総長のくせに誰よりもボロボロになって
喧嘩する姿
なんか、かっけぇ人
なんでかわかんねーけど目を惹く
煌道の白豹と呼ばれた俺も
彼のカリスマ性の前には屈服した
一生ついて行こうって気持ちでいたのに。
真ちゃんはいつも急だよね。
シンイチロー/黒龍は解散だ。もう黒龍より上がねぇならこの先弱い者イジメになっちまうだろ。
解散する事に対して驚きが隠せないのは俺だけじゃなかった。
臣も弁慶も、勿論俺も
だけど、あんな真剣な顔見たら反論なんて出来なかった。
臣はなんでだって真ちゃんに言いまくってたけど俺も弁慶も何も言えなかった
分かったって。今までありがとうって。そうするしか無かった
真ちゃんは笑って俺に言った
シンイチロー/ 今までありがとうな!ワカ!
あぁ、俺の好きな…あの笑顔だ
ワカサ/ あたりめぇだろ、、真ちゃん。
俺の王。最上であり最愛だ
俺さ、ずっと思ってた。ずっとずっとその優しくて甘い笑顔で微笑んでくれるって
「シンイチローが死んだ。」
神様は残酷だった。
呆気なく大事な人を奪っていった
彼が何をしたって言うんだ。
暴走族の長にいた事はそんなに罪なことか?
彼は絶対に”弱いものいじめ”なんてしなかった。
本来裁かれるべきなのは、逝かされるべきなのは俺なはずだ。
どうして真ちゃんだったんだ。
好きなことを仕事にして、みんなのために親身になって。
年の離れた兄弟のために頑張って寄り添って、親代わりになって
俺らを包むことも忘れずに
真ちゃんの葬式は閑散としていた
参列した殆どは男。屈強であったり、華奢であったり。それぞれ違えど皆同じ心を持つ。
佐野真一郎を慕うものとしての最後の挨拶をしに、みなここへ出向く
葬儀場の端、俺と臣、弁慶は立っていた
万作さんの近くで泣きじゃくるエマと、事態を受け入れられない万次郎。
当たり前だ。俺らだって受け入れられない。
そんなのを小学生、中学生そこらの餓鬼が理解出来るわけが無い。
みんなアイツらを見て言う。
”置いてかれた”
”可哀想だ”
”どうしてもっと長くいてあげられなかったんだ”
うるさいうるさい。
黙れ。
お前らに真ちゃんの何がわかる
真ちゃんがどれだけアイツらのことを考えて、無理させねぇようにってして、笑わして
自分の店の業務だってきっちりこなして
佐野家はすんげぇ、幸せだったんだよ
なのに、なのに、勝手に物言ってんじゃねぇよ
ワカサ/ 真ちゃんの何がわかる!なんにも知らねぇくせに勝手言ってんじゃねぇよ!
辺りが静まり返った
普段大声なんて出さない俺が声を荒らげたからなのか
もう何年前かすら分からない記憶の中の白豹を呼び起こしたような剣幕だったからか
臣と弁慶が俺を宥める
やめろ、やめろ
お前らまで、そんなことをするな
悲しそうな顔をするなよ
同情したような目で見るんじゃねぇ
そうだ、そうだみんな気づいてた。
俺が真ちゃんのこと、佐野真一郎のこと好きだって。
敬愛ではなく、恋慕の心を持っていることを
気づかねぇのはあの鈍感野郎だけだった。
俺の事を愛してもないのにニコニコして、くっついて
俺のザリを整備してる時だって幸せそうだった
きっとバイクを触れたら彼は幸せだったんだろう。
けど、俺のザリを触る時は誰のものを触る時より笑顔が輝いて見えた。
惚れた人間の弱味なのかもしれないけど、自分の都合のいいように解釈する許可をくれよ
なあ真ちゃん…一回でよかったんだ、好きだって言ってよ。…お前だけ愛してるよって
真ちゃんが寝てるところに行く
ほんとに綺麗な顔だ。まるで時が止まったみたいにいつもの真ちゃんだ。
今にでもドッキリでしたーって起き上がってくるんじゃないかって無意味な妄想を繰り返す
そんなこと願ってアンタは起きないんだよな。
”佐野真一郎”
俺は生涯でアンタだけを愛し続けるって誓うよ
俺だけの真ちゃん。
ワカサ/ ごめん、真ちゃん。愛してるよ…
優しく口付けた唇は酷く冷たかったけど幸せだった
ワカサ/ …泣いてなんか、やんねぇかんな、バカ真ちゃんッ…
後に臣と弁慶は言ってた。
【白豹の涙は綺麗だな】
もうその名前は捨てたってのに俺は初代黒龍 特攻隊隊長 今牛若狭 であってそれ以上でもそれ以下でもない
全くあいつらも懲りないと、笑って葬式場を後にした。
負けた。
惨敗だった。
寺野南。あいつは別格だ
俺も、臣も弁慶も、姫だって手も足も出なかった
”生きる伝説”
なんて異名を付けられてるのに、負けた。
【あの頃】の栄光はもうそこにはなかった
ごめん、真ちゃん。俺負けちゃったよ…
見てないよね、見ないでくれたんだろ?
俺がカッコ悪いとこ見せるの嫌いだから…
知ってるでしょ、知っててよ…
また俺の独りよがりだ
ここに真ちゃんがいなくて良かった…
こんな情けない顔、見られずに済んだんだから
ベンケイ/ ワカ行くぞ、撤収だ。
ワカサ/…ごめん、ごめんね、真ちゃん、
うわ言のように呟き続けた。
それでも撤収しなきゃ行けなくて、ベンケイに半ば無理やり連れてかれようとしたその刹那、
ワカサ/ ?!…
振り返った。
あの人の声がしたから。
真ちゃんの…真ちゃんの声がしたから
よくやったって。
真ちゃんが褒めてくれた
こんなにダサくて、情けない俺を、褒めてくれた
やっぱり、やっぱり俺にはあんたしかいねぇよ、真ちゃん
ワカサ/ 真ちゃん、愛してるよ…会いてぇなぁ…
そんな俺の声と涙は地雨の中に消えた
コメント
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やーーーーん真ワカ好きなんだよねー!!!!! 相変わらず湊ちゃんのお話引き込まれるよ大好き
※途中で時間軸が変わります。 え、ちょっと語彙力がお出かけカマしてるらしくてまた駄作になってしまいました… これから真ワカと弱虫ペダル(夢等を含む)投稿が増えるかと思うので何卒よろしくお願いいたします🙇🏻♂️