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翌日
「………」
カイナは朝早くに起き、外を眺めていた。
港には昨日訪れてきた海賊の船。
その向こうに視線を向ければ水平線から顔出す朝日。
この崖から見える景色はとても美しい。
でも、カイナは満たされずにいた。
どんなに綺麗な景色を見ても、
自分の心には光が全く差し込まず、ただただ暗いものが広がっているだけ。
そんな生活をしている内に、何が楽しいのか分からなくなってしまった。
「……そろそろやろうかな。」
カイナは指先に力を入れ、念を込めた。
パチンっ
思いっきり指を鳴らす。
しかし何も起こらない。
「…また駄目か。」
もう一度、
今度はもっと想いを込め、指先に力を入れる。
(お願い。今度こそ、!)
パチンっ
ピキっと音がした。
その瞬間
ガラガラ、
周りを囲っていた氷が砕けた。
「!」
「やっと…出来た。!」
ほっと一息つく。
おそらく、ずっと力をぶつけていたおかげだろう。
しかし、まだ肝心の氷が砕けていない。
「まだまだ足りない…」
カイナは続けて指を鳴らす。
だが、母を覆っている氷はヒビすら入らない。
「…はぁ。」
まだまだ力をコントロール出来ていないせいか
足に力が入らなくなっていく。
「もっと、強い力を込めなきゃ…!」
もう一度、もう一度と
カイナは指を鳴らす。
「………」
誰かが物陰に身を隠し、カイナを見ている。
しかしカイナは気付いていない。
黒い人影は、じっとカイナを見つめ続けていた。