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「おはようございます。快斗。」
「……よぅ。」
昨日、紅子に白馬が満足するまで白馬の恋人でいろと言われた。でも、果たしてこいつはそれだけで満足するのだろうか?
「なぁ、白馬。今満足してっか?」
「どうしたんです?急に。充実した生活だとは思いますよ。」
「……そか。」
充実した生活だと本当に思っているなら今頃俺は白馬と口喧嘩でもしていただろうに……。紅子によると、どうもこちらの世界では俺と白馬はあまり口喧嘩をしないらしい。
「快斗。良ければ今夜、夕食を一緒にどうです?」
! これは白馬を満足させるチャンス!
「おう!」
色良い返事を貰ったはずなのに白馬はすごく目を見開いて驚いた顔をしている。なんでだ?
「……では、放課後に江古田駅集合でいいですか?」
「おー。」
放課後の予定を立てているとキリがいいところで朝のホームルームを促す予鈴がなった。
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「えー。Xは8になるため、Yは〜」
数学教師の声をBGMに白馬をどうやって満足させるかを考えるために、左隣の列の前の前に座っている白馬の後ろ姿をずっと見つめていた。
「……」
教師の言葉を一語一句聞きもらさぬようにと耳を傾けながらノートをとっている白馬は、悔しいくらいに様になっていて……
なんか腹たってきた💢
途端、白馬が後ろを振り向き俺と目を合わせてきた。
「ふふっ」
ドキッ
何笑ってんだよ!!!!!!
伊達に探偵をしているわけじゃない。視線は忍ばせていたつもりだったが、思っち以上に熱視線を向けていたようだった。白馬は口角をゆっくりあげて、まるで慈しむような目線で俺を射抜いてくる。
やめろよ!移るだろ!!!!!!
なんだかコットンで柔らかく暖かく心を包まれたような気がして、顔に熱が集まってくるのを感じる。
いつもだったらこんなことにならないのに……。
やはり恋人という設定だから少し意識してしまっているのかもしれない。その後の授業は教師の話が一寸たりとも俺の耳には入って来なかった。
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「おっ。いたいた。白馬ー!」
約束の時間に江古田駅に着いた。5m先には探偵用ではない茶色のコートを着て、壁に背中を預けながら両足をくんで、本を読んでいる白馬がいた。ハーフということもあり、日本人より明るい色をした髪の毛だったので、それだけでも十分目立つ。さらにイケメンときた。当然、周囲には自然に女性の人だかりができるわけで……。
……なんか気に入らない。
俺の声に気づいたのか、白馬が本を片手でパタンと閉じ、こちらに顔を向けた。
「快斗。では、行きましょうか。」
俺の歩幅に合わせてゆっくり白馬が歩き出す。そんな優しい仕草を自然とやってのけるのだから、恐ろしいものだ。だが、現在進行形で少し意識し始めてしまっているので、当然ときめいてしまった。
……やめろよそういうの!ちょっとキュンとしちまったじゃないか!
「で、どこ行くんだよ。」
「OBERは知っていますか?」
「あー。あそこだな。」
「えぇ。」
どうも江古田で1番人気のレストランに行くらしい。どうやら、今日はばあやにOBERまで送って貰うんじゃなく、徒歩で向かうようだ。意外と白馬との会話は面白く、退屈せずにお店まで着いた。
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「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「えぇ。それでお願いします。」
「かしこまりました。」
まずは前菜の注文を終え、届くまで会話を楽しむことにした。
「白馬はどんな感じがいいんだ?」
「どんな感じ……とは?」
「ほらあるだろ?恋人にはこうして欲しいあーしてほしいとか。」
「ふむ。特に希望はありませんが。……快斗がこうやって僕と話してくれるだけで嬉しいですよ。今回だってディナーを一緒に頂いていけるだけでも……」
「おー。そうか。」
無駄に奥ゆかしいな。こちらとしてはさっさと注文してくれればありがたいのに。
「こちら、ご注文の品でございます。」
その後も何とか白馬の希望を聞き出そうとしたが、相手は強情でなかなか話して貰えなかった。
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あっという間に食事は終わって、レストランを出た。現在、だいぶ寄り道をして北江古田橋の上を歩いていた。
「……」
前を歩いていた白馬が急に止まって後ろを振り向いた。急に止まったから俺は白馬の背中に思い切り顔面をぶつけた。
「ぶっ!!おめぇ急に止まんなよ!」
「快斗。」
「あ?なんだよ。」
「……キスしてもいいかい?」
「は?ダメに……」
あなた、白馬探を満足させてちょうだい。
腹を括るしかないのか……
「……いいぜ。」
「ありがとう。」
白馬が首を少し下に向け、俺の頬に暖かい手を添えた。少しばかり俺の骨格を人差し指でなぞったあと、今度は親指で俺の下唇をぷにぷにと潰してきた。
さっさとしろよ!恥ずかしいだろ!
そんな仕草をじっと見ているしかないと、羞恥心がうなぎ登りになり顔に熱が集まってくる。しばらくすると白馬はもう十分指で楽しんだのか、顔がどんどん近づいてくる。
チュッ
軽いリップ音を鳴らしてゆっくりと顔が遠ざかっていった。
「ご馳走様。 」
自分が白馬とたったさっき何をしたのか脳内でリプライをしてしまって、唇の感触などを鮮明に思い出してしまったおかげでまた顔に羞恥の火が集まってくる。しばらく羞恥に耐えていると、既に前に歩き始めていた白馬が、後ろから歩いてくる気配がなかったのだろう。後ろを振り向いて、「快斗?」と不審に思った顔で俺を見つめていた。
「……今行く。」
そうぶっきらぼうに答えながらも未だ心臓はドキドキといつもより早い鼓動をならせていた。