コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「放課後、体育館裏な」
今日も地獄の時間が始まる。
はい、と小さな声で返事をするが、返答などない。毎日毎日、体育館裏に呼び出されてはあちこち殴られ、暴言を吐かれる。
もし親がいれば、こんな人生にはならなかったかもしれない、と時々考えてしまう自分がいる。そんなこと考えたって、過去は変わらない。それでも、考えてしまう。
なんで俺ばっかり。なんで努力している方が報われないんだって。あの時俺が上手くボールを渡せてたら、とか、車が来なかったら、とか。
考えて、考えて、考えて。でも、答えなんてなくて、明日は当然のようにやってきて、何もできないまま今日が終わって。
何が生き甲斐なのかもわからないまま、今日もひたすらに殴られ、蹴られ、暴言を吐かれている。
青は俺がいじめられていることなど知らない。もし親がいれば、相談相手になってくれたのかと考えると、少しだけ寂しくなる。
あの日、確かに死んだんだ。親が目の前で。誰のせいでもない、事故だった。それはわかってる。
だけど、やっぱり考えてしまうんだ。
青が飛び出してボールを拾いに行かなければ。ちゃんと車を確認していれば。俺がボールを道路に出さなければ、親が死ぬことなんてなかったんじゃないかって。
悔やんでも、戻ってきてと願っても。親が戻ってくることなんてなかった。
ようやく受け入れられたのは小学校に入学してからだった。
それまでは、またあの日と同じように四人で公園に行ったり、お出かけをしたりする日が来るって信じてた。
だけど、入学式の日に、周りの子はみんな親が来ていて、俺たちだけ、祖父母が来ていることに気づいて、周りの普通にも気づいて。
それで確信したんだ。
もうあの日常は戻って来ないんだって。青もそんな様子だった。
あのとき、すごく寂しそうな顔をしてた。きっと俺も同じ顔をしてたと思う。入学式の日までは、たまに親の話もしていたけど、それ以降あまりしなくなってしまった。
お互い現実を知ってしまった。
過去は変わらないということ。
明日は当たり前に来ないこと。
今日は二度とないこと。
そして、親はもう戻って来ないということ。
全て気づいてしまった。
だから、現実から目を背けるために、俺たちは親のことを話さなくなっていった。