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「あの……昨晩はすいませんでした」
「ああ」
年甲斐もなく大泣きしてしまってすごく恥ずかしかった。
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「プロラトム大陸に行く」
師匠が不意に言い出した。
「急にどうしたんですか?」
俺は驚きながらも聞き返した。
プロラトム大陸とは、遥か昔、五界覇神の一人が創り出したと言われる神秘の大陸だ。そこにはいくつもの迷宮が存在し、多くが未踏破とされている。
「このまま修行を続けても、ヘラクレスには届かん。魔道具や魔剣の力を借りるしかない」
「師匠……迷宮なんて攻略したことがあるんですか?」
半信半疑で尋ねると、師匠は腰に下げた剣にそっと手を当てた。
「ああ、何度かある。この剣も、迷宮で手に入れたものだ」
その剣――名は「闇淵源」。闇に沈むような黒光りを放つその刃には、言葉にしがたい威圧感があった。世界に三本しかないと言われる、神級の剣だと聞いている。
「神級のものが手に入るなんて……すごいですね」
「ああ、神級とまではいかなくても、役立つ上物が手に入るだろうと見込んでいる」
「あと数時間でここを発つ。準備をしておけ」
「はい!」
というわけで、俺たちはプロラトム大陸を目指すことになった。
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出発してから数時間が経ち、緩やかな丘を越えながらふと思ったことを口に出す。
「師匠、プロラトム大陸行きの船はないですよ?……どうやって行くんですか?」
プロラトム大陸は辺境にあり、海の真ん中にぽつんと浮かんでいるという。そして、その周りには特殊な魔力質によっていくつもの強大な魔物が住んでいる。そのため全く交通の整備が整っていないのだ。
「行けば分かる」
師匠は無表情のまま、それだけを言った。
その言葉だけでは不安は晴れないが、師匠の言葉に逆らうわけにもいかない。俺はただ、彼の後ろについて歩き続けた。
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ひたすら歩き続けて、一ヶ月が経過した。
そしてついに、俺たちは大陸の端にたどり着いた。眼前には果てしない大海原が広がっている。空は澄み渡り、太陽が輝き、潮風が心地よく頬を撫でていく。
「師匠、ここからどうするんですか?」
「これを使う」
そう言って、師匠は懐から小さな箱を取り出した。
俺は驚きに目を見張る。
「それ、壊した場所に転移する箱ですか?俺が渡されたものとよく似ています」
「ああ、そうだ」
師匠はその箱を巧みに分解し始めた。中から現れたのは、複雑に絡み合う魔法陣。彼は手慣れた様子でその魔法陣を地面に並べ、低く何かを呟き始めた。
すると、魔法陣が徐々に輝きを増し始めた。俺は師匠の力の片鱗を目の当たりにし、思わず息をのむ。
「俺の体のどこかに触れておけ!」
「はい!」
言われるがままに師匠の肩に手を置く。その瞬間、魔法陣の光が一層強くなり、俺たちは白い光に包まれた。
「ぐうおおおおお!」
体に信じられないほどの圧力がかかり、目が眩む。まるで空を飛びながら、風に押し流されているかのような感覚だった。
次に目を開けたとき、見知らぬ風景が広がっていた。青空の下、見渡す限りの草原が広がっている。しかし、その草原には無数の建造物が立ち並んでいた。それぞれが異なる形状をしており、どれも迷宮のように見える。
「……あれ?ここは?」
「ここがプロラトム大陸だ」
「……え?どういう事ですか?」
まさかこんなにあっさりと着いてしまうなんて。頭が混乱している。
「転移しただけだ」
「どういう事ですか!今のは一体……!」
「知り合いに教わった転移方法だ。詳しいことは知らん」
師匠はそれだけを言い、どこか他人事のように肩をすくめた。
「ええ……」
思わず呆然としてしまう。こんなことができる知り合いって、一体どんな人なんだ……
ともあれ、一ヶ月もかからず、俺たちは無事にプロラトム大陸にたどり着いた。
「ここからはどうするんですか?」
やることと言えば一つしかないだろうが一応聞いてみた。
師匠は険しい目つきで迷宮を見据え、言葉少なに答えた。
「迷宮巡りだ」
そう言って師匠は歩き出し、俺はそれに続いた。