テラーノベル
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【クーン城・ステイシーの私室】
クーン城には部屋数こそ多いものの、子供たち専用の居室はなかった。
そこで、以前ミラベル親子が使っていた宿舎を建て替え、子供たちの離れとして利用している。
「よっと」
自室のベッドの上で、バーチャルにダイブしていたステイシーが起き上がる――。
「いやー、ランクは下だけど強かったな~」
ヴァレリアとの勝負は、勿論サラが勝った。
だが、正統派の剣技と高速三段突きの組み合わせに、凄く苦労させられた。
「受け流しも上手だったし、カウンターの切れが半端なかったわ~」
よくよく考えてみれば、彼女の父親はロイヤルガードで、伝統を重んじる騎士だ。
教科書には載っていない古風な剣技に苦しめられ、久しぶりに追い詰められた。
「あの子、意外と礼儀正しくて真面目だったな〜」
ヴァレリアは向き合う時、軽く一礼。
負けた後も、悪態をつくことなく、最後は握手を求めてきた。
彼女にとって剣は「術」ではなく、騎士としての「道」なのだろう。
間違いなく努力家であり、対策されれば次は負けるかもしれない——。
「昔の剣技か……対策より……よし覚えよう!」
考えがやっぱ脳筋——。
相手の技を知るのが早道だと考える。
ようするに、ライバル認定――。
「昔の書物となれば、アデールに相談するのが一番ね!」
サラは、新たな剣技を身につけることを決意した。
※※※※※※
【クーン城・地下図書室】
「ほれステイ、この部屋に武器や剣技に関する書物が置いてあるよ」
古い剣技に興味を持ったステイシーは、アデールに相談すると地下の書庫を案内してくれた。
「暗くて埃っぽいイメージしてたけど、全然違うね」
クーン城は内部も古風だが、キッチンや地下倉庫など、目に付きにくい場所の設備は最新式に更新されている。
図書室もそれにもれず、凄く近代的な作りになっていた。
「大昔の文献があるからね。それに実物を見ると色々とイメージが沸きやすいでしょ」
デジタル化してあるのでタブレットでも読めるが、アデールは実物を手に取り読めば、感じるものが違うという。
なので、ここまで連れて来られた――。
「ああ、何となくその意味が分かるかも」
ステイシーは剣技についての本を手に取る。
それは指南書に近く、型を再現しながら読み始めた。
「ページをめくるとワクワクが止まらない」
実物の本を手に取り、ページをめくっていく。
本ならではの魅力に、段々と引き込まれていった――。
「剣技も良いけど、《《夜》》の指南書もちゃんと読んでね。王族の責務よ(笑)」
——ッ。
最後にとんでもない事を言い放つアデール。
お年頃なので、淑女としてちゃんと知識を入れなさいという事だろう――。
「この本がお勧めよ♡」
「……ンッ……は、はい……ぜ、善処します……」
頭では分かっているものの、恋愛感情に疎い脳筋姫は、顔を赤らめながら《《剣》》の指南書に目線を落とす――。
※※※※※※
【ステイシーの私室】
図書室から戻って来たステイシー。
早速、剣を片手に型の練習を始める。
「ハッ! エイ!」
剣を振り、切っ先をピタリと止める。
構え直し、また剣を振る――。
懸命に剣を振るその姿は、まるで中世時代の騎士のようだ。
「なになに……棒を何本も吊るして、剣で切りながら避ける……か」
型が体に馴染んできたら、次は実践だ――。
修練場へ向かい、指南書に書かれていた内容を参考に、腕を磨く。
「早く次の本が読みたいな……」
ステイシーは、バーチャルRPGに潜るよりも、剣技に磨きをかけることを優先していた。
課題を終わらせ、公務をこなし、そして剣技を学ぶ――。
そうして過ごす冬休みは、あっという間に終わりを迎えた。
※※※※※※
【出発日当日・修練場】
「それじゃいつものように、乱取りしましょうか」
毎朝の鍛錬を怠ることは無い。
今朝もまた、母フローレンスとステイシーは剣を片手に向き合っている。
「それでは参ります」
ガキィィィン!
いつものように鋭く踏み込み、飛び出したステイシー。
フローレンスは軽く受け止め、横切りのカウンターを繰り出す。
シュン!
しかし、その剣は空を切る——。
「クッ!」
寸前で身を屈め、切先をかわしたステイシーは、空いた脇に向け斬撃を繰り出す。
「おっと」
フローレンスは身を捩りながら、斜め後方へ飛び退く。
そして体勢を整え、切先をステイシーに向けた——。
「すごく速くなっているわね。学校に行って見違えるように良くなっているよ」
「えへへ、手数も増えたんだよ、いくよ」
刃を裏返し、脇を締め、剣を腰だめにする。
そして——
シュババ!
バキン、キン!
上段目けて突きを繰り出し、弾かれるとすぐに脇を締め、下段に突きを放つ——。
「うわぁ、どこで覚えたのよ、その連撃……」
ヴァレリアの三段突きを参考に編み出した連撃。
しかし、三撃目はどうしても切っ先が定まらず、まだ二撃までしか繰り出せなかった。
不意を突かれたとはいえ、ギリギリで交わしたフローレンスは、目を見開く——。
「バウンデの書物にあったのよ」
「もうお母さんを超えそうね。そろそろ時間よ、ご飯食べに行きましょう」
そして――。
デルタに戻る時が来た。
※※※※※※
【貴族学校・バーチャルルーム】
「さて、ここから挽回しますか!」
冬休みが終わり、デルタに戻って来たサラは、バーチャルRPGの順位を上げる為、早朝から潜ろうとしている。
冬休み中、指南書を何冊も読み込んだ。
その代わり、バーチャルRPGの順位は二十四位まで後退していた。
だが、彼女は焦ることなくバーチャルの世界に飛び込んでゆく――。
※※※※※※
【漆黒の森】
先ずはクエスト受注前に、RPG内での剣技の精度を試す。
ギィィィィ!
森に入って早々、ポイズンバットが襲って来る――。
「とりゃ!」
シュババ!
ギィー……
「凄いな、この二段突きは使えるな……」
ヴァレリアの三段突きを参考にした、上下二段突きで、魔物をあっさり切り倒したサラ。
出足は順調だ――。
いつものキラベアちゃんを数体倒し、勢いづいたサラは、クエストがある森深くの村に向かう。
※※※※※※
【辺境の村】
村に入ったサラは、クエストを発注するNPCを探した——。
「お困りごとはありませんか?」
「最近ネズミが多くて、保管庫の食料が食われちまうのよ、退治してくれんか」
困った顔をした村長に話を聞くと、クエストが発生。
サラは二つ返事で受注する。
だがこのクエストは、気持ち悪いと評判の依頼だった――。
「ああ、あの黒いネズミね」
ガサガサガサ——。
「えぇぇぇぇ、ネズミじゃなくてアレはゴキだよ(汗)」
ちょこまかと動く黒い物体は、足が六本もあり、どう見てもネズミというよりゴキブリだ。
不人気の理由——それはその動き方が問題なのだ。
「まぁ別にバーチャルだし、始末すればいいだけだし――」
そしてサラは、何ら躊躇する事なく、ちょこまかと動き回るネズミを、正確に突き刺してゆく。
「おお、このスタイルだと突きやすいわ」
技巧と言うか、フェンシングのスタイルで、細かいステップを踏みながら次々とネズミを屠ってゆく。
ジャンプして向かってこようが、足元をチョロチョロと動き回ろうが、野生児のサラは全く気にせずに、ガンガン突きまくる――。
「はい、完了!」
ほかのプレイヤーが嫌がるクエストを、覚えたての剣技で難なくクリアするサラ。
まさに脳筋に死角なしだった――。
※※※※※※
【王族用・控室】
「姫姉様、凄いですね。気持ち悪いクエストばっかりこなすとは」
「えへへ、練習には最適だったよ(笑)」
脳筋姫様は皆が嫌がるクエストを率先してクリアした。
嫌がる=高単位。
結果、首位に躍り出る事に――。
「古風な剣術指南書のお陰ですね」
「ええ、アレの実用的な剣裁きを参考にしたのよ」
見た目はカッコは悪いけど、基本に忠実な型は理にかなっている。
改めて剣の新たな使い方を学んだサラは、褒められて嬉しいのか口角を上げる――。
「ステイは予習すれば無敵」
「そうそう、勉強も同じだから頑張れ」
何処からともなく、バグウサギが現れ、アドバイスをしてくる。
「そっか、じゃあ二年生の参考書で勉強するわ」
新たな剣技で成果を上げたサラは、その成功体験を勉強に活かし始めた。
単純な事だが、彼女には一番あっている。
参考書に向き合う姿は、才女の雰囲気が漂っていた。
コメント
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第23話、読み終わりました!ステイシーがヴァレリアとの戦いをきっかけに古流剣術に目覚めて、冬休み中ずっと没頭してる感じ、すごく伝わってきました。実物の本をめくるときのワクワク感、いいですよね。あとアデールに「《夜》の指南書もちゃんと読んでね」って言われて赤面するところ、お年頃ならではって感じでほっこりしました(笑)。脳筋だけど新しい発見に貪欲なステイシーらしさが光る回でした!
耀聖(ようせい)
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