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床から拾い上げられ履歴書の上に散らばるそれら現在履歴の細切れを、財布に仕舞いなおす。
「その中に、将来はこれってのがあるわけ?」と旅人は言った。
「なくはないけど、夢でしかないんだ。言わないでおくよ」
「もったいぶらずに言えばいい」
「いや、いいんだ。どっかで諦めないといけないのはわかってる、自分の実力ってものは分かってるつもりだよ」人の思いつかないアイディアは引っ張り出せるが、それを計算したりコツコツ論証したりが苦手だ、と青年は説明した「クタイの奴は反対に、そういうの得意で大学に残ってるよ。俺には、そういう素質ってものがないんだ」
「会ったばかりの僕が言うのも変だけど、君はいい人生送ってると思うけどね」と旅人が言う。
「君の言葉を借りれば、ジャンルごとには、少しはね。で、ジャンルごとには最悪さ。クタイなんて、今じゃ最高に嫌なヤツさ。何しろ、俺が大学離れてからは全然連絡してこないんだからね。それで、ジャンルを総合すればこの通り」
青年はジャケットのポケットに手を突っ込んで、穴から指を出した。青年は口には出さなかったが、ビジネスミーティングの仲間が立てたプロジェクトに出資し、それが倒産に終わり、損を取り返そうと株に手を出して傷を広げていた。その分、仕事を増やそうとしている。