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まなこ〜友
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#ますしき
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ヤバいヤバい!!😭💕 第50話、読み終わったよ〜!! 夏帆ちゃんが「黒崎さん」って呼ばれるのに慣れてきたの、なんかじんわり来たね…。あの再会から結婚まで駆け抜けた感じが全部詰まってて、胸がいっぱいになったよ🥺 玲くんがあの時から夏帆ちゃんのこと知ってたって話、まさかの伏線回収すぎて鳥肌たった!!「大学の時、雅から飽きるほど夏帆の話聞かされた」ってエピソード、雅の一途さが伝わってきて尊すぎる…😭💕 最後のキスからの「孕んだら考えようかな」発言、雅くんマジでクズだけど憎めないよね…笑 でも「お前との子なら絶対可愛い」って目が本気だったのがズルすぎる!! この夫婦のドタバタ日常、ずっと見てたいなあ〜。次の話も楽しみにしてるよ!!🎀✨
「黒崎さーん」
「はい?」
呼ばれてから、コンマ数秒遅れて前を向く。
黒崎と呼ばれたのは、雅ではなく私だ。ついこの間まで朝比奈 夏帆だったはずの女である。
最初はあんなに違和感があったこの名前も、最近ようやく自分のこととして自然に反応できるようになってきた。
あの夜のプロポーズから、事態は怒涛の勢いで進んだ。すぐに結婚指輪を買いに行き、その三週間後、完成して受け取ったその足で籍を入れた。左手の薬指には、また一つあいつとのお揃いが増えている。
入籍までの間に、私の両親への報告と、義母への挨拶。さらには玲くんや会社への報告…、とこんな感じで、息つく暇もないほど慌ただしい日々を乗り越え、今ようやく平穏な日常が戻ってきていた。
「ストプラから、この間打診をお願いしていた案件、来週までに返事が欲しいと伝言頼まれていて、もし無理そうなら内線でもメールでも良いから連絡が欲しいと言ってました」
「わかりました」
「それと、黒崎さんって名前呼ばれるのようやく慣れましたね」
後輩の女性社員にからかうように言われ、私は苦笑いを返す。
呼ぶ方も呼ばれる方も、それなりの慣れが必要だった。取引先への改姓の挨拶で何度も黒崎を自称し、ようやく板についてきた。
社内にはまだ、私を朝比奈と呼ぶ人もいる。
少し前までは、新しい名字に馴染めなさすぎて、黒崎と呼ばれても無意識にスルーしてしまう感じの悪い人になってしまっていたけれど、ようやくそれも何とか落ち着いてきたようだった。
⋆⸜
結婚してからも、毎週金曜日は決まってこのバーに顔を出している。
「夏帆ちゃん! いらっしゃい!」
「玲くん! お疲れ様! 雅は?」
いつものカウンター席に腰を下ろし、店内を見回す。奴の姿がないので問いかけると、玲くんは「見送りに行ったよ。会わなかった?」と店の外を指差した。
「また路地裏とかで女の人とキスしてたりして」
「懐かしいね、それ」
冗談めかして再会した夜の話を振ると、玲くんが声を立てて笑った。
忘れもしない。ふらっと立ち寄ったバーの脇、あの薄暗い路地裏で客とキスを交わしていた雅の姿を。
あの時はありえない場面に出くわしたと呆れていたけれど、知り合いだなんて夢にも思わなかった。それもまさか、元カレだったなんて。
あんな最悪な再会から、縒りを戻して、同棲して、挙句の果てに結婚しているなんて、人生、何が起こるか本当に分からない。
「本当、夏帆ちゃんよく雅と結婚したよね」
「ね、私もそう思う。雅があまりにもしつこいから、困ってたのに。流されるがまま付き合って、遂に結婚までしちゃった」
「今だから言うけど、俺は夏帆ちゃんの事知ってたよ」
「……え?」
玲くんの言葉がうまく理解できず、思わず聞き返してしまう。
きっと、信じられないほど間抜けな顔をしていたと思う。
玲くんはそれを見て、楽しそうに笑っていた。
「まず、俺と雅が大学一緒なのは知ってる?」
「え…、知らない。友達でって言うのは聞いていたけど……」
「雅が彼女出来たって大騒ぎだったからあの当時。当然俺の耳にも届いてたし、大学時代からそれなりに仲良かったから」
「ええ……、てか私が玲くん程のイケメン見逃すはず無いのに、大学同じなの!?」
「俺は目立つ方じゃなかったから」
そんなわけないだろ、そんな綺麗な顔してるくせにと喉まで出かかった言葉を飲み込む。
今の玲くんを知る限り、雅に劣らず目を引く容姿をしているのだから、当時だって絶対にモテていたはずだ。
もっとも、入学してすぐ雅と付き合い始めた私には、周りの男性を視界に入れる余裕なんて一ミリもなかったのは事実だけれど。
「名前も知ってたから、朝比奈 夏帆って名前を聞いた時にこんな奇跡あるんだなって思った」
「……だから地元がこの辺かとか、あの時聞いてきたの?」
「そうだね。もしかしたら同姓同名の違う人かもって思ったし」
ストン、と胸の仕えが落ちた。今思えば、玲くんは本来あまり他人のプライベートを詮索するタイプではないのに、あの夜の彼は妙に踏み込んだ質問をしてきた。
あれは雅が私の事を当時話していて、当時の別れ方も名前も知っているから違和感を感じたのだと思う。
「雅、大学の時私の話してたんだ」
「そりゃ、飽きる程聞かされた。名前も覚えるくらい」
玲くんの揶揄うような口調に、私は少しだけ笑い声を零す。
そんな会話を交わしている時、バーの重厚なドアが開き、入ってきたのは見送りを済ませた雅だった。
「来てたの」
「悪い?」
「毎度悪いとか言ってないだろ、勝手に来たら良いじゃん」
本当は来てくれて嬉しいくせに、ツンツンしちゃって素直じゃない。
外ではどこまでも不愛想だけれど、家の中では隙あらばくっついて甘えてくる姿を知っているから、そんな言い方をされても全く腹は立たなかった。
微笑ましく彼を見つめていると、カウンターの中に入った雅が、私を凝視して僅かに眉を寄せた。
「……何」
「別に?」
本人は無自覚なのだろうけれど、その隠しきれない独占欲が面白くて、私はわざと黙っておくことにした。
さすがに家での彼がどれほど可愛いかを玲くんの前で暴露したら、恥ずかしさのあまり奴がここで働けなくなるだろうから黙っておいた。
「何の話してたわけ? 二人で楽しそうに」
相変わらず、私が自分以外の誰かと通じ合っているのが気になって仕方がないみたいだ。結婚してからも、雅は私のすべてを把握したがる。飲み会に行くと聞けば、当然のように男の有無を確認してくる。
それは、私を信用していないからではない。ただ、自分の知らないところで私が笑っているのが、どうしても気に入らないらしい。
「いや、よくこんな綺麗で可愛い女性が、雅の奥さんに来てくれたよねーって思って。雅には高嶺の花じゃない?」
「学生時代付き合ってたんだからそんなこともねぇだろ」
雅はぶっきらぼうに吐き捨てると、煙草に火を点けて紫煙を燻らせた。
玲くんは私のことを過大評価しすぎだと思う。高嶺の花なんて呼ばれるような女じゃないし、特別可愛げがあるわけでもない。
だけど、今までの私達を振り返って、ふと思い当たった。
私達の恋のキューピッドは、実は玲くんだったのではないかと思う。自分達の力で進んできたようなつもりでいたけれど、要所要所で彼の言葉に背中を押されていた気がする。
「そう思えば、玲くん悪かったよね。雅の嫉妬心に火付けるためにわざと私に告白とかしてさ。もし私が玲くんに落ちてたらどうしてたのさ」
「その時は責任取るよ。本当に良いなと思ってたし」
「はは、胡散くさ」
私が笑うと、玲くんも楽しそうに口角を上げた。
そこまで長いとは言えない付き合いの私にも、玲くんが他人に、というか、恋愛そのものに執着がない人だということは分かっていた。
もし彼に好きなタイプがあったとしても、きっと私のような女ではないと思う。
彼は何よりも、自分の手で築き上げたこのバーを愛している仕事人間。この場所が一番であるうちは、誰かを心の底から好きになることはない様な気がする。
彼がこの店よりも優先したいと思う女性が現れるとしたら、それは一体どんな人なのだろう。そんな想像をしてしまうくらいには、玲くんという男性がよくわからない。
「俺も雅が結婚してくれて、本当に嬉しいよ。雅もお客さんに手出さなくなったし」
「まだ根に持ってんの。夏帆と会ってからやめたじゃん」
「俺はその前までの話をしてるんだよ。本当修羅場で壊されたものとか考えると雅に弁償してほしいくらいだけどね。クビにしてるよ、他なら」
玲くんの心底呆れ果てた表情に、雅は何か言い返そうとして結局、バツが悪そうに口を噤んだ。
「何その楽しそうな話」
「聞かなくていいから」
雅の気まずそうな表情に思わず口角が上がる。
修羅場で物が壊れた何て、何があったのか。グラスでも投げつけられたのか、それとも雅が殴り飛ばされた先に何かあったのか、そんな想像をするだけで、胸がわくわくしてくる。
私の周りには、そんなバイオレンスな騒動に巻き込まれるような人間は一人もいない。だからこそ、そういった刺激的なエピソードに好奇心が湧いた。
自分の色恋を餌に客を繋ぎ止め、外で遊んだ女をそのまま店に引っ張ってくるような、救いようのないクズだった男だ。殴られて当然、むしろ刺されなくて良かったねと思う。
「普通旦那のそういう話聞きたくないもんなんじゃないの」
「あんたのそういう話は退屈しないから」
心底嫌そうな顔をする雅に平然と言い返すと、隣で玲くんが笑っていた。
「夏帆ちゃんがたくましすぎる」
「こんくらいじゃないとこいつの彼女の時点で逃げ出すわよ。酷かったんだから、出かける先々でこいつが女性に声かけられてどんだけ鼻で笑われたか。いまだにだけどね」
「ええ、夏帆ちゃんレベルで鼻に笑われるなんて。その相手見てみたいけど」
「もうすっごい美人」
「なんなのお前ら。今しなくて良くない?その話」
雅が眉間に皺を寄せてツッコんだ瞬間、別の女性客からお呼びがかかった。雅は逃げ場ができたことに安堵したのか、吸いかけの煙草を灰皿に押し付けると、伝票を掴んでそちらへ向かう。
雅を呼んだ女性客は、頬を上気させて彼を見上げていた。一目見ればわかる。彼女は雅に会いたくて、このバーへ通い詰めているのだ、と。えげつない客引きなんてしなくても、雅が店の前に数分立っているだけで、大抵の女性はそれだけでこの店に入ってくると思う。
「減らないよね、雅狙いのお客さん」
「不倫なんてしたら慰謝料がっぽり請求しなきゃ」
「本当たくましいね、夏帆ちゃん」
玲くんが感心したように笑う。
こんな強気なことが言えるのは、彼がそんな裏切りをしないとわかっているからだ。
だけど、もし本当にその時が来たら、今の言葉通りに強く振る舞えるのかどうかは、その瞬間になってみないと自分でも分からない。
「これからもきっとあんな風に言い寄られる雅の姿は見るんでしょうけど、別れるとは考えられないのよね。本当に嫌なのにね。結婚して私のになったのに、人に手を出される雅を見ているのは」
「……夏帆ちゃん素直になったよね本当」
「素直? 最初から素直じゃない?」
「雅の事になると、めちゃくちゃ頑固だったから。夏帆ちゃん」
そう言われると、何も言い返せない。
確かに、あんな男を好きになるはずがないと頑なに思い込んでいたし、心が動いてからも好きじゃないと言い張り続けていた気がする。
あんなに女遊びが激しかった男が、私だけに一途になるなんて信じられなかった。
そう思えば、私たちはお互いに随分と変わったのかもしれない。
「雅も夏帆ちゃんも幸せそうで、本当に安心した」
玲くんが優しく微笑んだその時、フロアにいた雅が玲くんの方を向き、手元で小さく「チェンジ」と合図を送っていた。
玲くんは小さく溜息を吐くと「行ってくるね。さすがに可哀想だから」と笑って、雅の方へと向かった。
入れ替わるようにこちらへ戻ってきた雅は、私の隣に座るなり「表情筋、疲れた」と深い溜息を吐いた。
さっきまで見せていた完璧な営業スマイルは、彼なりに無理をしていた証拠らしい。
……私の前でもプロ意識を見せてほしいくらいだけれど。
「あんな美人と話せてむしろあんたが感謝しなさいよ」
「全然嫁から言われるセリフじゃなさすぎてウケる」
雅は鼻で笑うと、つい先ほど消したばかりのはずの煙草にまた手を伸ばした。慣れた手つきで火を点け、ゆっくりと紫煙を吐き出す。
家でもかなりの本数を吸っている。
そこまで多いといい加減、体は大丈夫なのかと心配になってくる。
「やっぱお前が一番楽。それなりに癒やされるし」
「そうね、私もあんたの顔にだけは癒やされる」
「眺め放題で良かったな。幸せな奴」
軽口を叩きながら、雅は煙草を唇で挟んだままグラスに氷を入れた。冷蔵庫から取り出した炭酸水を注ぎ、弾ける泡を見つめている。いつもなら迷わず酒に手を伸ばすはずなのに、今日はなぜか炭酸水。
「飲まないの?」
「今日はいいや、酒飲む気分じゃない」
「あんたにそんな気分の日あったの?」
「俺の中ではもう昔みたいにバカみたいに飲む年齢はとっくに終わってんだよ」
一度、煙草を灰皿の縁に置くと、雅は炭酸水を喉の奥へと流し込んだ。
大学時代はあんなに頻繁に飲み会へ顔を出していたし、バーテンダーをしているくらいだから、根っからのお酒好きなのだと思い込んでいたけれど、実はそうでもなかったらしい。
「それなら煙草もやめなさいよ、あんたに早死にしてほしくないし」
「……禁煙なあ」
雅は気のない返事をして、既に次の煙草を指に挟んでいる。
言うだけ無駄、この男が煙草を止める訳がないと溜息を吐いた。
やめろと言われている側から火を点けて、一口深く吸い込む。白く濁った煙を吐き出すと、そのまま灰皿で火を消し、そのまま身を乗り出した雅の手が、カウンター越しに私の後頭部を掴み、強引に引き寄せた。
そして、そのまま唇が重なる。肺に残っていた煙草の苦い香りが流れ込んできて、思わず顔を歪めた。この男とキスをする時の、この独特な味にはまだ慣れそうにない。
「夏帆が孕んだ時は考えようかな」
唇を離し、雅が笑う。あまりに直球な言葉に、私は目の前の男を凝視した。
さっきまで雅を熱烈な目で見つめていた女性客達の視線が刺さり、一気に居心地が悪くなる。
玲くんは溜息を吐くと、険悪になりそうな空気を逸らすように女性客たちへ話しかけていた。
「本当……、あんた場所と発言考えなさいよ」
「思った事言っただけ。勘違い女性客に牽制も出来て気分良いだろ?」
「バカじゃないの」
確かに妊娠なんてことになれば、煙草はやめてもらわないと困るけれど今のところそんな予定はないし、何より人前でキスをするなと何度釘を刺しても、この男は聞きやしない。
「うわ、それめっちゃいいな。仕事行かせずに閉じ込めておけんの。産む?」
「倫理観が欠落してる事思い出した。バカねあんた」
私を縛り付ける手段として子供を望むなんて、雅らしいというか何というか。そんな理由で産まれてくる子が可哀想すぎて、この男の発想に呆れを通り越す。
「子ども、うるせぇし扱い方わかんねぇし汚すし、全然好きじゃねぇけど……」
「……あんた絶対子供作んないほうが良いわよ。不安だわ」
「でも、お前との子なら絶対可愛いだろうなって思う」
ふと、雅が優しい表情を浮かべた。
本気なのか、と錯覚してしまいそうになる。自分が今、どんな顔をしてそんなことを言っているのか自覚があるのだろうか。
発言自体は最低なのに、その眼差しを見てしまうと案外、いい父親になるのかもなんて信じたくなってしまう。よく考えれば、この男は私のことをこれ以上ないほど大事にしているのだから、他人を愛せないわけではないはずだし、子供の事だって、自分の子供となれば、案外大事に出来るのかもしれない。
「あとシンプルに生でヤッて中に出してみたい」
「もう全部台無しだから死んで。死ななきゃバカは治らないんだった」
発言がとことん最低で少しでも感動した時間を返してほしい。