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📖 第一章:「静寂と混沌」
雨の音だけが、静かに教室を満たしていた。
放課後。
誰もいないはずの教室に、ひとつの気配が残っている。
窓際の席に座っているのは、 糸師冴。
肘をつきながら、無表情で外の雨を見ていた。
○○:「……まだ帰らないの?」
突然、後ろから声がした。
彼は振り向かない。
ただ一瞬だけ、視線を横にずらす。
冴:「別に」
短く、それだけ。
○○「ふーん。つまんない人」
軽い足音が近づいてくる。
そのまま、彼の前の席に座り込む影。
○○だった。
髪は少し濡れていて、呼吸もどこか不安定。
それでも笑っている。
いや――笑っている“ふり”をしている。
○○:「ねえ、サエくん」
冴:「……何」
○○:「人ってさ、どこから壊れると思う?」
静かだった教室に、その言葉だけが妙に重く落ちた。
普通なら、冗談として流す。
普通なら、関わらない。
だが彼は――
冴:「最初から壊れてるやつもいるだろ」
一切の迷いなく、そう答えた。
沈黙。
一秒。二秒。三秒。
そして――
○○:「……あははっ」
○○は突然笑い出した。
○○:「やっぱり好きだなぁ、そういうとこ」
冴: 「……意味がわからない」
○○:「だってさ、みんな嘘つくじゃん。“大丈夫?”とか、“無理しないで”とか」
彼女は机に頬をつけながら、ぼんやりと呟く。
○○:「でもサエくんは、ちゃんと壊れてるって言ってくれる」
その目は、どこか空っぽで――でも、確かに彼を見ていた。
○○:「ねえ」
冴:「……何だ」
○○:「私、壊れてると思う?」
一瞬だけ、雨音が強くなった。
彼はようやく彼女を見る。
感情の読めない目で。
冴:「……ああ」
迷いはなかった。
優しさもなかった。
ただの事実のように。
冴:「壊れてるな」
その言葉を聞いて――
○○は、少しだけ安心したように微笑んだ。
○○:「そっか」
小さく、そう呟く。
そして、立ち上がる。
○○:「 じゃあさ」
彼女は振り返らずに言った。
○○:「壊れてる私、サエくんが見ててよ」
――逃げないでね。
そう言い残して、教室を出ていった。
再び、静寂。
雨の音だけが残る。
彼は何も言わない。
ただ、さっきまで彼女が座っていた席を見つめる。
冴:「……くだらない」
そう呟いたはずなのに。
なぜか、帰る気にはなれなかった。
END
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