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なんと、念願が叶い、タイムリープすることができた。
しかし、今度はあの声が言った通り、これが最後のチャンスになるだろう。
麻衣は、これまでとは違うアプローチを取ることにした。
最初に、麻衣は健太との関係を最優先にした。
「健太、大切な話があるの」
その日の夜、麻衣は健太に真実の一部を話した。
もちろん、タイムリープのことは言えないが、会社で危険な状況が発生する可能性があることを伝えた。
「もしかすると、私の仕事の関係で、あなたにも迷惑がかかるかもしれない」
「何があっても君を支えるよ」
健太は力強く答えた。
「ありがとう。でも、もし状況が悪くなったら、一時的に距離を置くことも考えて」
「麻衣、何を心配してるんだ?」
麻衣は健太の手を握った。
「……あなたを失いたくないの」
次に、麻衣は家族を守るために行動した。
両親に事前に連絡し、しばらく親戚の家に避難してもらった。
理由としては、職場でトラブルがあり、家族に迷惑がかかる可能性がある」、と説明した。
そして、最も困難な問題、由美への対処。
まずは、由美と距離を置くことにした。
しかし、完全に関係を断つと由美が警戒する可能性があるため、だんだんと疎遠になるようにした。
「最近、仕事が忙しくて」
「新しいプロジェクトで残業続き」
そういった理由で、由美との会う回数を減らしていくことにした。
一方で、麻衣は玲香への対処も始めた。
今回は、直接対決は避けることにした。
代わりに、麻衣は会社の上層部に匿名で情報提供をした。
機密情報の漏洩が発生している可能性があるという警告を送り、内部調査を促した。
そして、玲香が産業スパイ行為をしている証拠を、会社のセキュリティ部門が自然に発見するよう、巧妙に仕向けた。
麻衣の新しい戦略は効果的だった。
数週間後、会社の内部調査により、玲香の産業スパイ行為が発覚した。
しかし、今回は麻衣が告発者として表に出ることはなかった。
「氷室さんが逮捕されたそうね」
同僚が噂をしていた。
「驚きね。まさかあの氷室人が、ねぇ……」
麻衣は知らないふりをした。
「そうなんですか? 驚きです」
玲香の逮捕に連動して、雅美の犯罪も徐々に明るみに出た。
玲香の取り調べで雅美の存在が判明し、警察の捜査が拡大したのだ。
由美については、玲香の逮捕により、自然に麻衣から離れていった。
協力者である玲香が捕まったため、計画を継続することができなくなったのだった。
そして、最も重要なことは、健太との関係が守られたことだった。
今回は健太が事件に巻き込まれることはなかった。
麻衣が表に出なかったため、健太への影響も最小限に抑えられた。
「麻衣、最近、何だか落ち着いてるね」
健太が言った。
「そう?」
「前はいつも何かに追われているような感じだったけど、最近の麻衣は穏やかだね」
麻衣は微笑んだ。
「きっと、大切なものが何かが分かったからかもしれない」
「それ、どういうこと?」
「うふふ、ナイショ!」
玲香姉妹の逮捕から半年が過ぎた。
三人の犯罪者はすべて有罪判決を受け、懲役刑に処されていた。
麻衣は会社で順調に昇進していた。
しかし、今回は敵を倒したからではなく、純粋に自分の実力が認められた結果であった。
健太との関係も深まっていた。
「麻衣、大事な話があるんだ」
ある日、健太がレストランで真剣な表情で言った。
麻衣の心臓が高鳴った。
「麻衣、結婚しよう」
健太が指輪を差し出した。
「君と一緒に、人生を歩んでいきたい」
麻衣は涙を流しながら答えた。
「はい」
長い戦いの末に、ついに麻衣は本当の幸せを手に入れた。
結婚式はささやかに挙げた。
両親と健太の家族、そして数人の同僚だけが出席した。
それでも温かい式になった。
「麻衣さん、幸せそうですね」
宮塚部長が祝福してくれた。
「ありがとうございます」
麻衣は心から幸せだった。
復讐に支配されていた頃とは全く違う、穏やかで温かい幸せを噛み締めていた。
結婚から一年後、麻衣と健太は新居で平和な生活を送っていた。
麻衣は会社でマネージャーに昇進し、健太も新しい職場で責任ある立場に就いていた。二人の努力が実を結んでいた。
「あなた、たいせつな話があるの」
ある日、麻衣が嬉しそうに言った。
「何?」
「私のお腹の中にね、新しい命が宿っているの」
「本当か!」
「本当よ。私はお母さんに、あなたはお父さんになるの」
麻衣は自分のお腹に手を当てた。新しい命が育っている。これまでの苦しい戦いが、すべて意味のあるものに思えた。
「この子を守るために、私は強くなったのかも」
過去の麻衣は復讐に燃えていた。
しかし、今の麻衣は愛する人を守るために強くなっていた。
それが本当の強さだということを、ようやく理解できた。
妊娠中期に入ったある日、麻衣は久しぶりに由美から連絡を受けた。
「麻衣、お疲れ様。最近どう?」
麻衣は慎重に答えた。
「元気よ。あなたは?」
「実は、相談があって。会えない?」
麻衣は躊躇した。
由美の本性を知っている今、会うのは危険かもしれない。
しかし、もしかすると由美も変わっているかもしれないとも思った。