桜国

桜国

ここは桜国。ずっとずっと桜が咲いていて、人々は皆桜の下で一生を終える。

人々は狂ったようにそこに居た。この桃色の景色の中で、何も変わらない景色。人々はずっとここで暮らしてきた。皆お祭り騒ぎの日々。酒を飲み、泥水し暴れ出す親父さんもいれば、ずっと飯を作る女もいた。

子供は皆走り回って、学生は桜の下で勉学に励んだ。ここは景色も変わらないければ、天気も季節も変わらない。ずっと春で、ずっと晴れで、ずっと桃色なのだ。こんな何も変わらない日々の中で、狂わないはずがない。

誰かがまたおかしくなって、叫び出した。そいつの事を皆は狂っていると言って罵倒した。でもおかしな話だ。皆狂っている事を誰も知らない。皆が狂っているせいで、誰も気づかないのだ。毎日のように酒を飲んでは暴れ、飯を作る事を強制され、走り回って勉学に励む事を強要される。これのどこがおかしいと思う。みんなこれが当たり前だと思い込んでいるのだ。だからこそ、違う生き方は許されにくい。

ここは桜国。何かが変わる事が許されない国。皆同じ。何か変われば、その変化を無かったかのように消そうとしたがる国。みんな狂っているせいで、この狂いが正常だと思っている。きっと真逆の世界なのだ。他の世界とは違う国。正常の人を狂っている人々がおかしいと言っているのだ。馬鹿げた話。そう思う事は人にもよる。だが、事実も混ざっているかもしれないのだ。