地下鉄に乗って、窓の外の無機質で変わらない景色をぼーっと見つめる
あぁ…11年前は考えもしなかったな。こんな生活…
ブルーロック内で戦っていた時、決して甘い覚悟でいたわけではない。
毎日自主練をしてマスターに改善点を聞き、ライバルを観察して予測。
日々努力していた筈なのに…なのに…
ーーーー 潔世一 脱落 ーーーー
その言葉だけは聞きたくなかった。聞きたくなかった言葉が絵心さんから発せられたんだ。
その時俺はどんな顔をしてた?
みんなからどんなふうに見えた?
脱落しても、俺と「契約をしたい」というチームはたくさんあった。
だが俺はそこで折れてしまったんだ。
ポッキリ折れてそのままサッカー界から姿を消した。テレビにも出ていない。俺のことをみんなもう知らない。
それでいいんだ。それでいい…
いい…はずなのに…
あぁ…ダメだ…もういいって言ったろ…?
下からあついものが込み上げてくる。
急いで電車を降りてトイレに駆け込む。
すれ違う人の反応を見るにもう手遅れかも知れない
いや、もう手遅れだ。
涙が頬をつたる感覚がする。
トイレの個室にバタンと大きな音をたてながら入った。
幸いなことにトイレには誰も居なかった。
俺は昔自分の選択の間違いで負けてしまった試合を連想させるように泣きじゃくる。
あぁ…俺は今回も間違った選択をしてしまったのか?
誰かにボールをパスせずに走り続ければ良かったのか?
教えてくれよ…
誰か俺をここから出してくれ…
お願い…お願いだから…
俺はその後のことをよく覚えていない。
ただ、朝、目が覚めたらいつもと同じスウェット姿だった。
***
涙を流してパンパンに腫れた目を抱えながら俺は今日も出勤した。
上司や先輩は、俺の顔を見て何かあったのを察してくれたのか、目のことについては触れないでくれていた。
正直ありがたかった。
部長も今日は早めに帰りなさいと言ってくれた。
定時退社なんていつぶりだろうか。
嬉しいはずなのに、どこか沈む気持ちを抱えながら帰った。
◇◇◇
W杯が近いからだろうか。街はサッカームード一色だ。
昔は欠かさず見てたサッカーの試合も今はすっかり見なくなった。
俺はこの時が嫌悪の対象だ。
何故って…この時期になると、いまだに取材の話が入ってくる。
「元ブルーロックの申し子!現在は⁉︎」
「潔世一!サッカーをしない理由!」
などと言う企画書がしばしば送られてくるのだ。
特にこの時期は多い。
W杯では蜂楽や凛たちが活躍するからだろう。
今日も送られてきた。
ぜひテレビに出演してほしいだって?しかもゴールデンタイムで中々名前の知れたテレビ番組。
パネル開けなんて出来るわけないだろう。
引退してから何年経ったと思ってるんだ。
断りのメールを入れるべくパソコンのキーボードに手をかける。
するとスマホがバイブした。
大方、多田の謝罪メールだろう。
俺はあいつからの連絡に出たくないので無視をした。
すると、俺の考えを見越してなのか、スマホが慌ただしくバイブし始める。
なんなんだ。出たくないと言っているだろう
ついには電話までかかってきた。
俺は痺れを切らして、とうとう電話に出た。
「もう〜やっと出た‼︎あっ、潔〜?元気〜?」
「…は?」
ーto be continuarー
コメント
2件
続きが、続きが気になる
あ!タイトル決まったんですね。潔くんをあそこまで怒らせた多田ちゃんすごいです。