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短いやつ

29 - 安心感

♥

953

2025年04月04日

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💙×💛  ※同棲、付き合ってます

💙視点


「ただいま〜……」

玄関の方から聞こえた恋人の声に、スマホに向けていた意識をそちらに向ける。今日は俺の方が早く帰っており、涼ちゃんは仕事と会食で遅くなると言っていた。もう時刻は22時。くたくたになって帰ってきたに違いない。

「あぁぁ………疲れたよ若井ぃ……」

「お疲れ様。お風呂沸かしてあるから入ってきちゃいな。」

リビングの扉が開くや否や、完全に疲れ切っている涼ちゃんの様子が目に入る。何だか髪も乱れており、忙しかったのは一目瞭然だ。

「うん……、ありがと。」

涼ちゃんがリビングを出ていく直前、一瞬だけ視線が向けられた。恐らく俺の服装を確認したのだろう。もう既にパジャマを纏っており、お風呂は済ませてしまった。きっと涼ちゃんのことだから、一緒に入ろうという魂胆だったはず。

「……よし。」

バタン、と閉まった扉を合図に立ち上がる。今日は頑張った涼ちゃんをとことん甘やかすんだ。その為に、今日は仕事帰りにケーキ屋さんに寄ってきた。プリンとチョコレートケーキで迷ったが、いちごが乗っていたチョコレートケーキの方にしてしまった。勿論2つ分。涼ちゃんと食べるなら一緒のものを食べたい。まあ、俺がいちご好きだからなんだけど。


「んー………。」

ケーキを取り出すために冷蔵庫を開けたが、共に添える飲み物に迷う。やっぱりお風呂上がりは水が1番良い気もする。

「いやでも…、疲れてる時って甘いものだよね。」

ちょうど視界に映ったオレンジジュースに手を伸ばしたところで、また別の考えが頭に過ぎる。

「…でも甘いものはケーキで間に合ってるし…、甘いものと甘いものってちょっとくどいかな…。」

そんなことを繰り返していたら、リビングの戸が開く音と共に涼ちゃんが帰ってきてしまった。

「上がったよ〜、ありがとう!」

冷蔵庫の扉を閉じ、声のした方向に振り向けば、濡れた髪をタオルで乾かしながら微笑む涼ちゃんが居た。お風呂上がりで頬が赤いから、先程よりも何だか眠たげに見えた。

「どういたしまして。ほら、髪乾かしてきて。」

「うん………、」

風邪を引く前に、と促してみるが、歯切れの悪い返事をするばかりで一向に動こうとしない。それどころか、何か言いたげな視線をちらちらとこちらに向けている。

「………?あ、髪乾かして欲しいの?なんて、冗談……」

「うん!!!!」

揶揄うつもりで言ってみたが、食い気味に返事をされて思わず言葉が止まる。キラキラと輝かせた目を向けてくる涼ちゃんの姿。仕方ないな、なんて思いながらも、ちょっとだけ嬉しかった。




寝室に備えられた鏡の前に椅子を置き、そこに涼ちゃんを座らせて乾かすことにした。いざ乾かすとなると、上手く距離感が掴めなくてうっかり燃やしてしまいそうな心配がある。

「大丈夫?熱くない?」

「へ??」

鏡越しに目があった涼ちゃんにそう問いかけてみるが、ドライヤーの音で何も聞こえないのか、間抜けな返事が返ってきた。この様子なら大丈夫そうだ。そう思い、また手元に目を落とす。スキンシップで髪に触ることがあるとはいえ、こんなにもまじまじと見ることはあまりない。細く繊細で、綺麗な髪を丁寧に乾かす。途中で櫛を通すことで指が通りやすくなる髪に楽しさを覚えていた頃、涼ちゃんの頭ががくりと大きく動いた。

「……涼ちゃん?」

思わず鏡に目をやると、そこには気持ちよさそうに目を閉じている涼ちゃんが居た。ただ目を瞑っている、と言うよりかは夢の中にいる方が近い。余程疲れていたんだろう。起こすのも気が引けて、なるべく優しく髪に触れる。

そろそろドライヤーも終わる時、鏡の中の涼ちゃんがゆっくりと目を開けた。まだ眠たげな瞳をキョロキョロとさせ、鏡越しの俺の姿を目に映せば、にへらと笑った。

「……?おはよ?」

意図の分からない笑顔に、ドライヤーの電源を切って話しかけてみる。そうすると、ぼんやりとした瞳を向けたまま、小さく口を開いた。

「若井に触ってもらえると、なんかねむくなっちゃう。」

えへへ、なんて可愛い笑い声を零しながら言われてしまえば、完全に俺の心を撃ち抜かれた。そんなのもう、「若井と居ると安心する」って言ってるようなものじゃないか。これが無意識なんだから本当にずるい。

「もうちょっとで終わるから寝てていいよ。」

「んーん、ねないよ。」

ゆるゆると首を横に振った様子を一瞥し、またドライヤーの電源をつける。まだ湿っぽい箇所に温風を当て、丁寧に乾かす。最後に全体的に冷風を当てながら櫛で梳かし、電源をオフにした。終わったよ、と声を掛けようとして、視界に映した涼ちゃんの姿に言葉を止める。

「……寝てるじゃん。」

寝ないよ、なんて言ってたのに、すやすやと規則正しい寝息を立てる様子に頬が緩む。きっと椅子じゃ寝ずらいだろう。そう思い、起こさないようにそっと横抱きにする。幸いベッドはすぐ近くだ。あまり重さを感じない身体をゆっくりとベッドに沈ませ、布団をかけた。

「お疲れ様、頑張ったね。」

起きる様子を見せない涼ちゃんの額に、キスを1つ落とす。

買ってきたケーキは……明日一緒に食べよう。


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