💙×💛 ※同棲、付き合ってます
💙視点
すっかり暗くなった空を背に玄関の扉を開ける。まだリビングの明かりはついていて、何かガヤガヤとした音も聞こえる。急ぎめに靴を脱ぎ揃え、リビングの扉を開ければ、テレビゲームに勤しんでいる涼ちゃんが居た。
「ただいま涼ちゃん。」
「ん!おかえりわか……」
Switchのコントローラーを手に振り向いた涼ちゃんが、僕の顔を見るなり動きを止めてしまった。何か顔に付いていたのかもしれない、なんて不安を抱いた俺を他所に、涼ちゃんの肩が大きく震えた。
「へくしゅ!!!!」
「なんだ……くしゃみじゃん。」
「えへ、…ごめんごめん。あ、ご飯……お風呂の前にする?」
「んー……じゃあそうしよっかな。」
準備するね、と立ち上がってくれた涼ちゃんに短いお礼を伝えて部屋を後にする。
すぐ側にある自室の扉を開け、片手に持っていた荷物を床に置く。そういえば差し入れにスイーツを貰ったな、なんて思いながら羽織っていたアウターをハンガーにかける。
「……涼ちゃんお腹いっぱいになっちゃうかな。」
置いておいた荷物の中からそれっぽい箱を取り出し、じっ、と見つめながら考えてみる。きっと涼ちゃんのことだ、「え?甘いものは別腹でしょ?」なんて言うに違いない。容易く想像出来る姿に口角を緩ませながら、箱を持ちリビングへと向かった。
「涼ちゃーん!スイーツ食べるー?」
リビングの扉を開けると同時に、箱を掲げながらそう言ってみる。せっせと夕飯の準備をしてくれていた涼ちゃんの瞳が向けられた。
「!!今甘いもの食べたかった!」
一瞬で輝いた瞳。嬉しそうに微笑む様子に釣られて笑ってしまう。
「ちょうどいいね。ご飯食べ終わったら一緒に食べよ?」
ちょうどキッチンに立っていた涼ちゃんに箱を手渡そうと歩み寄った時、差し出されていた涼ちゃんの手のひらが揺れた。
「ありがと…………、…へくしゅ!!」
「…………。」
またくしゃみをした涼ちゃんが、何事も無かったかのように箱を受け取り冷蔵庫へと閉まった。別にくしゃみをすることは何も問題は無い。無いけれど、タイミングが何とも絶妙だ。まるで俺が近付いた時にくしゃみをしているような…………
「……俺アレルギー、?」
「え?なんか言った?」
「いや、…何も。あ、食器運ぶよ!」
無意識に零れていてしまった言葉にハッ、とする。そんなアレルギー存在するわけが無い。頭ではそう思っているけれど、1度意識してしまうと気にしてしまって仕方がない。どことなく涼ちゃんが涙目な気がして、本当に俺アレルギーなんじゃないか、なんて思う。
「…よし!」
「よし、って何。」
「え〜?だって今日のご飯あんま自信ないんだもん…。どんな若井の反応でも受け止めよう、!みたいな?」
机上に並べられているのは、メインのナポリタンと、色合いの良いサラダ。心配そうにこちらを見つめる涼ちゃんを前にフォークを手に取る。作ってくれた料理にイチャモンを付けるつもりもないし、涼ちゃんが作ってくれたものならなんでも嬉しい。
「いただきます。」
「いただきまーす!」
美味しそうな湯気を放つナポリタンを器用にフォークで巻き取り、口に運ぶ。
「…おいしい。」
「ほんと!?良かった!」
口いっぱいに広がるナポリタンの風味に、和えられていたベーコンが最高に相性がいい。そんな俺の言葉を聞いて嬉しそうに笑顔を浮かべる涼ちゃんも相まって、凄く幸せを感じる。
「あ、口に付いてるよ!」
「え、まじ…」
俺の口元に視線を落としていた涼ちゃんから徐に指先が伸ばされる。
「……取れた!」
「ありがと。これティッシュ……」
満面の笑みでそう報告してくれる涼ちゃんにティッシュを手渡そうと目を離した時、視界の端で涼ちゃんの影が動いた。まさかと思い視線を戻せば、俺の口を拭った指先をペロリと舐めて、キョトンとした表情を浮かべている涼ちゃんが居た。
「?ティッシュ要らないよ? 」
「…………舐めたから要らないって訳でもないけどね、」
「え〜?もう必要ない……、くしゅ!!」
一瞬目を細めた涼ちゃんが慌てて横を向いて手のひらで口を覆った。もうこれで3回目だ。それに、さっき俺に付いていた食べ物を食べたばかり。典型的なアレルギー症状じゃないか。このままでは涼ちゃんを苦しめかねない。真剣にそう思い、涼ちゃんに話してみる。
「……涼ちゃん。アレルギーだったならそう言ってよ。確かにいっぱい摂取したらなるとか聞くけどさ。隠さなくても良かったのに。」
「へ……、?別に隠してないよ?でも今日はちょっと強いかもね〜…。2倍になってるらしいし。」
困惑した表情を浮かべ、そう言葉を続ける涼ちゃんに俺も困惑が募る。2倍、という全く身に覚えのない単語。俺が2倍……?
「どういうこと…?俺は1人だよ?」
「うん、?若井は1人だね。」
頭の中がハテナで埋め尽くされる。何だか会話が噛み合っていない気がする、なんて思い始めていた時、つけていたテレビから聞こえてきた声に涼ちゃんが反応を示した。
「うわ〜…ほら、やっぱり明日も花粉強いって。黄砂とかもうほんとやだよぉ…、わざわざ花粉2倍にしてくれちゃってさ。」
「かふん……?」
花粉、という響きに拍子抜けしてしまう。確かに今は春。去年もこの時期に涼ちゃんが同じような事を言っていた覚えがある。自分が花粉症を持っていないからか、全く気にしていなかった。とにかく俺アレルギーじゃなくて良かった。安心からかどっと力が抜けた。
「……良かったあ……。」
「?あ、このサラダ美味しい。」
コメント
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若様のかわいい勘違いで良かった(*^_^*)涼ちゃん花粉症辛そう、😔
俺アレルギー?って感じちゃう若井さん可愛い…好き… ちょうど主様の短いやつ見終わったところで最新話出たから嬉しすぎます…笑