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何も耳に入らないままゴングが鳴った
会場が割れんばかりの歓声に、怒り狂った牡牛のごとく、マカフィーが雄たけびを発し柚彦に突進した
柚彦はマカフィーのすさまじい一撃をさっとかわし、くるりと振り返ると、さらにマカフィーからの強烈なキックもブロックした
そして目にも止まらぬ速さで、マカフィーの右頬にぐしゃりと裏拳をめり込ませ、脇の下から腕を入れて相手の首を絞めるフルネルソンという技をかけた
途端にマカフィーの口から泡が吹き出る、そのままギリギリ締め上げ、窒息死寸前で床に叩きつける
マカフィーがふらつきながら起き上がろうとするけど、自分の足につまづいて、そのタトゥーだらけの体がバタリとリングに倒れた
あまりにも一瞬の出来事で、あまりにも滑らかで、敏捷な動きだったため、何がどうなったかわからず、観客は水を打ったような静けさになった
そしてしばらくすると地獄から這い上がってくるような怒涛の歓声が響いた
柚彦はさらに拳を引き付けたものの、マカフィーの顔を見ると、それをやめて自分のコーナーに戻った
今はロープに両腕をかけ、て優雅にカウントを待っている
マカフィーは失神していた
―試合終了だ―
やんやの喝采の中、柚彦が観客席にいる鈴子を見た
地べたに座り、目が見えないのか困惑しているマカフィーのセコンドと医者が、リングに入り、彼に詰め寄った
そのままマカフィーは担がれて退場
数秒後には柚彦のトレーナやセコンドが大騒ぎでリングに上がっていた