最強無敵連合 死ネタ 。暗い。
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「 いらっしゃい 。 」
軽く頭を下げ入ってきた青年。綺麗な白髪。スタールビーのような桃色の瞳。整った顔。彼が優れていればいるほど、残酷な夜だと感じる。
「 贄としての名を果たしに来ました。 」
眉を顰めながらも、 彼は笑った。
「 お前の命賭した所で、街は救われない。お前は、報われないよ。 」
俺には何も出来ない。そう、伝えた。若い青年が。つい最近 、友人を亡くした筈なのに。
「 俺も直ぐに死ぬよ 。疫病にかかってる 。」
通りで生気が無いわけだ。元から白かった肌が、青白くなってしまっている。
何も話すことない。もう時期あいつも来るだろう。あいつと俺でどうにもできなかった。どうにかなるわけが無い。この疫病は、きっと若者を贄にしようとする愚かな村の、愚かな老人達を。一掃するためだろう。
「 なぁ りぃちょ。俺はさ、生きてほしいよ。お前に 」
こいつが贄となったところで、俺には何も出来ないんだ。だから、少しでも生きて欲しい。笑って欲しい。そう思った。この疫病は、村の奴らが始めた物語だろうに。
「 なんで 、 名前知ってるの ?」
驚いたように目を開く彼に、くすりと笑みが漏れた。
「神様だからかな」
それが 、俺の。答えられる最大限の答えだった。少しづつ思い出してきたのはいいものの、それを誰かに伝えることは無い。伝えたところで、もう誰も助からない。
「 そっかァ 、なら 、なら 当たり前だね 。」
綺麗な月明かり。綺麗な青年の顔が照らされる。諦めたように笑う、それがどうにも不気味で、まるでひとつの絵画のようだった。
「 俺は、どうしたらいい?死ぬまでここにいたらいいの?」
村のものから渡されたであろう長い縄を持っている彼。何を言うにも、もう死んでしまうのだから。俺が寿命でも吸うてやろうか。
「 どうしたい ?もう、楽になりたい? 」
死ぬ気で出向いた青年の、死を止めることはもう出来ない。体は疫病に侵され、贄に出てきたのだから精神も参っているだろう。村に戻っても迫害され朽ちていくだけ。
そんな、こいつの運命。俺にはどうもできない。
「 すぐにでも死のうかなって思ってるよ。見たくなかったら、見なくていいから。 」
適当なところに、慣れたように縄を結んだ。悲しくなる。疫病の進行状態が不味いらしい。少し息が荒い。手が震えている。 これは、恐怖か。当たり前だ。こんな齢30にも満たない青年が。自ら命を擲つというのだから。
「 せめて天国へ行けるように 。俺が何とかするから。 」
2度目の別れ。今度は俺が置いていかれる番だった。
「 ありがとう。 」
ふわ、と宙に浮いた足。意志とは反して生きながらえようとする本能のせいか、ばたばたと動いて。痛々しい嗚咽が響く。
やがて聞こえなくなった頃、もうそれは物と化して。
「 え 、 え 。 え? なに、え ?こいつ死んだの ?」
「 止めらんなかったわ。流石にあれは無理だ。 」
ふわりと戻ってきたそいつと会話をする。
彼が成仏できますように。何も出来ない俺でごめんな。
「 こんなんしてもさ。 疫病流行るだけじゃんかよ。 」
「 え? そうなの 。」
俺の言葉に、そいつは眉を顰めて
「 ほんとに覚えてねぇのな 。」
ぽつりと、 そう呟いた。
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