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#🤍🩷
まつ
976
初投稿です
※メンバーの悲しい過去を題材にしています。
苦手な方は閲覧されないようお願いいたします。
※(🧡)💙←💛
※💛💙予定です
※ご本人様には関係ありません
_________________________
「……太智」
名前を呼ばれて、顔を上げた。
「今日、うち来る?」
目の前に立っている仁人は、いつもと変わらない顔をしていた。
「……なんで?」
「なんでって、別に。飯でも食おうかなって」
「……俺、今日そういう気分じゃない」
「うん」
「だから、帰って」
「……わかった」
そう言って、仁人は一度背を向けた。
けれど、数歩進んだところで立ち止まる。
「太智」
「……なに」
「無理して笑わなくていいから」
その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられた。
「……笑ってないし」
「うん。そうだね」
仁人はそれ以上何も言わなかった。
ただ、俺の頭を一度だけぽん、と撫でて、楽屋を出ていった。
……なんで。
なんで、仁人はいつもそうなん。
俺が隠したいことばっかり、気づくん。
数日前。
スマホに届いた知らせを見た瞬間、時間が止まった気がした。
『板垣瑞生さんが亡くなった』
最初は、何かの間違いだと思った。
だって。
だって、瑞生は。
俺の、初めての恋人だったから。
もう何年も前のこと。
M!LKを脱退することが決まった頃、俺たちは別れた。
「太智、ごめん」
「……なんで謝るん」
「俺、もう一緒にはいられない」
「グループ辞めるから?」
「……うん」
「それと付き合っとることは別やん」
瑞生は何も答えなかった。
ただ、困ったように笑っていた。
「俺、瑞生のこと好きやで」
「……知ってる」
「じゃあ、なんで」
「太智には、ちゃんと幸せになってほしいから」
「意味わからん……」
泣きながらそう言った俺を、瑞生は最後に一度だけ抱きしめた。
「大好きだったよ」
それが、恋人として交わした最後の言葉だった。
あれから何年も経った。
もう好きじゃない。
そう思っていた。
なのに。
「……なんで、死んじゃうんよ」
声に出した瞬間、視界がぼやけた。
「……まだ、ちゃんと話したかったのに」
一度だけでいいから。
元気にしてる?
そう聞きたかった。
もう一度、笑った顔が見たかった。
「……太智?」
楽屋のドアが開いた。
「……っ、仁人」
慌てて顔を伏せる。
「まだいたの?」
「……うん」
「電気消えてたから、もう帰ったかと思った」
「……帰るところ」
立ち上がろうとした瞬間、足に力が入らなかった。
「おっと」
仁人が咄嗟に腕を掴む。
「大丈夫?」
「……大丈夫」
「……太智」
「大丈夫やって」
少し強い声が出た。
仁人は黙ったまま俺を見つめていた。
その目が優しすぎて、嫌だった。
「……そんな顔せんといて」
「どんな顔?」
「……俺がかわいそうみたいな顔」
「そんなつもりないよ」
「……じゃあ、ほっといて」
「……それは無理」
「なんで」
仁人は少しだけ迷ってから、口を開いた。
「瑞生のこと、知ってるから」
心臓が跳ねた。
「……っ」
「太智がどれだけ好きだったかも、別れたあとどれだけ泣いてたかも」
「……やめて」
「うん」
「……その話、せんといて」
「わかった」
「……っ、なんで……」
涙が落ちた。
「なんで、仁人は……」
言葉が続かない。
仁人は何も言わずに俺の隣へ座った。
しばらく沈黙が続いた。
「……俺さ」
先に口を開いたのは、仁人だった。
「太智が瑞生と付き合ってたとき、ちょっと羨ましかった」
「……え?」
「瑞生には、俺の知らない太智の顔を見せるんだなって」
「……なにそれ」
「なんでもない」
小さく笑った仁人の横顔が、いつもより少し寂しそうに見えた。
「でも、今はそんなことどうでもいい」
仁人が俺を見る。
「太智がちゃんと泣けるなら、俺、何時間でもここにいるよ」
「……っ」
「だから、我慢しなくていい」
その瞬間。
ずっと堪えていたものが、全部溢れた。
「……っ、仁人……」
「うん」
「……瑞生が……っ」
「うん」
「……死んじゃった……」
「……うん」
「……もう、会えへん……っ」
「……そうだね」
「……俺、まだ……」
息が詰まる。
「……まだ、好きやったんかなぁ……っ」
仁人は答えなかった。
代わりに、そっと俺を抱き寄せた。
「……いいよ」
「……っ、なにが……」
「まだ好きでも」
その声は、少しだけ震えていた。
「無理に忘れなくていいから」
「……っ、んと……」
「うん」
「……苦しい……」
「……うん」
「……めっちゃ、苦しい……っ」
仁人の服を強く握った。
子どもみたいに泣きじゃくる俺の背中を、仁人は何度も撫でてくれた。
「……大丈夫」
「……っ、うぅ……」
「俺、ここにいるから」
その言葉を聞いて、もっと涙が出た。
どれくらい経ったんだろう。
泣き疲れて、仁人の肩にもたれたまま目を閉じていた。
「……仁人」
「ん?」
「……ごめんな」
「何が?」
「……服、濡らした」
「洗えばいいじゃん」
「……ふふ」
久しぶりに笑えた気がした。
仁人が少しだけ安心したように息を吐く。
「……なぁ」
「ん?」
「……今日、仁人ん家行ってもええ?」
「……もちろん」
「……一人になりたくない」
「うん」
「……今日だけ」
「……うん」
仁人はそう答えた。
けれど。
俺は知らなかった。
そのとき仁人が、どんな顔をしていたのか。
俺の知らないところで、どんな想いを抱えていたのか。
「……今日だけ、か」
太智が寝息を立て始めたのを確認して、小さく呟いた。
ソファに座った俺の肩に、太智の頭が乗っている。
泣き腫らした目。
まだ少し震えている指先。
「……ほんと、ずるいよな」
そっと前髪を避ける。
ずっと好きだった。
瑞生と付き合っていたときから。
別れたあとも。
何年経っても。
ずっと。
だけど、太智の心にはいつも瑞生がいた。
それでもいいと思っていた。
好きになってもらえなくても。
隣にいられれば、それで。
「……太智」
小さく名前を呼ぶ。
「俺じゃ、だめかな」
もちろん、返事はない。
「……今、そんなこと言うべきじゃないよな」
自嘲するように笑った。
太智が泣いている。
大切だった人を失って、こんなにも苦しんでいる。
なのに。
そんな太智を抱きしめられたことが、少しだけ嬉しかった自分がいる。
最低だ。
「……ごめん」
眠っている太智の手に、自分の手を重ねた。
「今は、何も望まないから」
ただ。
「……俺の前では、泣いていいよ」
太智が、無意識に俺の服を掴んだ。
「……じ..と……」
「……ん?」
「……いかんといて……」
寝言だった。
それでも、胸が苦しくなった。
「……行かないよ」
もう一度、背中を撫でる。
「ずっと、ここにいる」
たとえ今、太智が見ている夢の中にいるのが、俺じゃなかったとしても。
コメント
1件
読了しました〜!😭💦 もうね、最初から最後まで切なさが込み上げてくるお話でした…。太智が「まだ好きやったんかなぁ」って泣きながら言うシーン、胸がギュッてなったよ…。ずっと堪えてた涙が仁人の前で全部溢れ出す流れ、めっちゃリアルで感情移入しちゃった。仁人の「無理に忘れなくていいから」って優しさも、最後の「俺じゃだめかな」も、どっちも苦しくて尊い…。初投稿とは思えない丁寧な心理描写、めちゃくちゃ響きました!続きが気になる〜!✨