テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
下手くそ注意!!
多分感動系だと思います。
無惨を討ち果たした後の夜明け。血に濡れた大地の上で、冨岡義勇は空を仰いでいた。
――生き残った。だが、心に刻まれた痛みは消えはしない。
桜が咲く季節。義勇は一人、墓前に立っていた。
風に揺れる花びらを見つめながら、口を開く。
「……終わったよ、錆兎」
低く、震えを抑えた声。
返事はない。それでも、錆兎がそこに笑っているような気がした。
義勇は目を伏せ、喉奥に熱を堪える。
「錆兎、お前がいたから俺は立ち続けられた」
仲間と過ごした日々は、短いながらも輝いていた。
炭治郎の笑顔に救われ、善逸の泣き言に苦笑し、伊之助の無鉄砲さに振り回される。
彼らの笑い声の輪に、自分も少しずつ混ざれるようになった。
――あの孤独に沈んだ日々はもう遠い。
義勇は初めて、自分が「居ていい」と思えた。
だが、寿命の影は確実に忍び寄っていた。
痣を宿した者の運命。二十五まで生きられぬことは、既に覚悟していた。
残された時間を知りながらも、義勇は決して顔に出さなかった。
ただ、皆の笑顔を守るように、静かに寄り添い続けた。
――二十五歳の春。
縁側に座り、庭を眺めていた義勇の指先に、ふと力が抜けた。
空は晴れ渡り、桜が舞っている。
遠くで子どもたちの笑い声が響き、世界は穏やかに続いていた。
「……炭治郎。……みんな……ありがとう」
掠れる声で、義勇は微笑んだ。
その目には、かつての少年の姿が映っていた。
錆兎が、桜の下で笑っている。
「……錆兎、今度は俺も一緒に行く」
静かに瞳を閉じる。
次の瞬間、義勇の呼吸は止まった。
頬を伝う涙のように、一片の花びらが彼の胸に落ちる。
まるで錆兎が「よくやったな」と囁きながら、義勇を迎えに来たかのように。
縁側に横たわるその顔は、穏やかで、安らぎに満ちていた。
戦い続けた男が、ようやく眠りについたのだ。
おわり。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!