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「透子大丈夫？」
修さんの店を出て、歩きながらゆっくり帰る道の途中で透子に声をかける。
「うん。大丈夫大丈夫。今日はいいお酒だったし、そんなに酔い潰れるほど飲んでないから大丈夫」
「まぁ。今日酔い潰れてもまたオレがちゃんと介抱して連れて帰ってあげるから大丈夫だけどさ」
「そうだね。今はもう樹がいてくれるんだもんね」
「だからってあんまり飲みすぎも困るけど」
「樹ホントお酒強いもんね。同じペースで飲んだら絶対私すぐ酔い潰れちゃうもんね」
「オレはね。でも透子はそれくらいでちょうどいいよ。オレほど強くても困るし」
「なんで？ 同じくらい飲める方がもっと楽しそうだけど」
「いや、透子にはたまにほどよく酔ってもらわないと困る」
「ん？ だからなんで？ 私酔った方がいいの？」
「そう。酔った時の透子ってさ。すっげぇ甘えて来てすっげぇ可愛いから」
「えっ？ 私樹にそんなことした記憶がないんだけど・・・。あっ・・・もしかしてこの前の・・・」
「そう。酔ってる時の透子はすげぇ素直だから。またあんな風に好きだって酔い潰れながらでも言ってほしいし」
「いや、あーいう感じまでになると、もう自分でもよく覚えてないっていうか・・・」
「だからいいんじゃん。たまにホントの気持ちが聞ける」
「それは・・・」
なかなか素直に本音を言ってくれない透子だから。
たまにそんな酒の力を借りてでも聞きたい。
きっとそこには普段言えない本当の透子の気持ちが隠されている気がするから。
「あっ、そうそう。最初に酔い潰れてオレの部屋で介抱した日あったでしょ？」
「あの時も、ホントに、迷惑かけちゃって・・・」
「迷惑なワケないじゃん。あの日オレ透子介抱出来てめちゃめちゃ嬉しかったんだから」
いきなり舞い込んだチャンス。
あの日知らない透子をたくさん知れた。
初めてオレに甘えてくれて、あの時はまだオレ自身戸惑うことも多くて。
だけど、甘えてくれたのは嬉しかったけど、酔い潰れて記憶がないままで、実際オレを意識して甘えてくれたワケではなかったから。
やっぱり素直にオレだと意識してちゃんと甘えてほしい。
「そっか。樹はそんな時からもう私を好きでいてくれたんだもんね」
「そっ。だから美咲さんに透子介抱してやってって言われた時は、絶対このチャンスをモノにしようって思った」
「そうだったの？」
「でもさ。いざそんなチャンスが巡ってきたのはいいけど、当の本人は酔い潰れてまったく記憶はないし、全力でオレ否定されるし？（笑）」
「いや・・それは・・ごめん・・」
「ハハ。謝らなくていいよ。オレはあの時間一緒にいれただけでも幸せだったし」
「樹・・・」
まだあの時は全然オレに心を開いてくれてなかったのはわかっていたし。
だけど今までのことを考えたら、あんな風に一緒にいれただけでオレには夢みたいな時間だった。
「それにあの酔い潰れた時のさ、透子の甘えっぷりがもうたまんなくて」
「えっ？ 私、樹に甘えてたの？」
「そう。迎えに行った時も透子からオレの腕にしがみついて来て」
「嘘ッ！？ 知らない！そんなの！」
「だろうね（笑）あそこまで酔い潰れた後の記憶だし、普段の透子なら絶対しない甘え方だったから（笑）」
「えっ・・じゃあ、私そんな最初から樹にそんな自分でも知らない姿見られてたってこと・・？」
「そういうことになるね」
まったくその時の記憶がない透子にとっては不安だろうけど、オレにとってはあの時間があってくれたことで、今の透子との時間があると思ってる。
美咲さんが協力してくれたからこそ、きっとオレも透子ももっと前に進めた。
「そんな私を樹は変わらず好きでいてくれたの？」
「当たり前じゃん。逆にあんな甘えられてオレの気持ち今までにないくらい高まって勢い増したから」
初めてだった。
あんなにもすぐ近くにいるのに、大切で怖くて手が出せなかったなんて。
だけど、そんなこと以上に、ただそこにいてくれるだけで、その寝顔を見れるだけで、あんなにも心が満たされて幸せな気持ちになるのだと初めて知った。
「なんか初めて知ってちょっとビックリしてる」
「それも透子だからさ。しかもオレにとっては普段見れない嬉しい姿だからさ。たまにはそんな姿も見せてよ」
「樹・・・」
「あっ、でももちろんそれはオレの前だけね。あんなに酔い潰れるまで飲むのは他の男の前では絶対禁止。あんな可愛い姿絶対誰にも見せたくないし、あんなの他の男にされたらオレ正気じゃいられなくなるから」
ホントあの時はオレも気持ち抑えるの必死だった。
絶対普段見せないあんな可愛すぎる姿や表情を無防備に見せて、オレ的にはもう今までにないくらい透子への気持ちが爆発しそうで。
だけど、改めてその反面今までの男にもあんな姿見せてたのかと思うと、やっぱり嫉妬でおかしくなりそうだから。
でも少し透子だから安心するところもある。
もっと普段から誰にでも甘えるような女性なら、嫉妬と心配でずっと気が狂いそうになるけど。
でも透子は誰にでもそんなことするような人じゃなく、絶対そんな自分を他人に見せたくない人だから。
きっとそんなことはないはずだと信じれる。
だからその分たまに甘えて来れられると、そのギャップと反動でそれがまたオレ的には嬉しい反面威力が凄すぎて正直心臓持たなくなるけど。
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