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星キラリ

2,012
ムメイ
661
まなこ〜友
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77
時は、蒸し暑さの残る八月尽を迎えた頃のこと。
蓉子は婚活パーティーに参加した日から一週間後、これまでのように週末
を奥田と過ごした。
◇ ◇ ◇ ◇
毎週末、仕事終わりの華金に奥田とデートをすることは、これまでふたりの間で
恒例となっていて──
リッチなディナーを楽しみ、カフェバーで酒を味わい、そのままホテルへ向かうことが、
ふたりの間では変わらず続いている。
今回、ふたりは山の手にあるレストランに足を運んでいた。
ほのかに照明を落とした個室で、ライトアップされた庭園を眺めながら、ゆるやかに
食事を始める。
この夜、テーブルを彩ったのは、濃厚なソースの牛フィレ肉とサフランライス、香ばしく
焼き上げられたオマール海老、そして温かなコンソメスープだった。
「お肉が柔らかくて美味しい」
「そうだね」
「私、先週シースルーの素敵なロングドレスを買っちゃった」
「へぇ~、いつかそのドレスを着たところ、見てみたいな」
「ふふっ」
綺麗な子だけど、この日の彼女はひときわ美しく映った。
ドレスは、何のために買ったのだろうか。
考えられるのは、誰かの結婚式に参加するときとか、何かのパーティー?
とか……。
それとも自分に見せるためか……。
この夜の彼女は、最近の彼女とは少し違う雰囲気を纏っている気が
する。
何なのだろう? 何が、と言われても明確に答えられないのだが。
何かいいことでもあった?
俺たちの付き合いも気がつけば5年が過ぎており、この間に横たわっている
溢れ出そうな彼女の感情が、最近ではチラホラと見え隠れしていた。
優柔不断で意気地のない俺は、なかなか妻に離婚を申し入れ彼女と一緒に
なるという選択肢が取れないでいる。
どうすればいいのか、今の状況を苦しく思うようになっていた。
なので、今夜の彼女のカラっとしたオーラに救われるというか、纏うふんわりとした
雰囲気に、俺は重苦しさから解放されたような気分になった。
コンソメスープを口に運びながら、いつもの同じ返事を想像しつつ俺は橋本に訊く。
「ところで、今回も行きつけのホテルの中にあるカフェバーにする?」
すると、意向を訊かれた彼女は
「う~んと、今日は繁華街にあるカフェバーがいい」
と即答した。
『えっ?』
何がどうとは言えないが、少しだけ彼女の選択に違和感を覚えた。
だがすぐに、俺は気にし過ぎかと思い直す。
……というのも、いつもなら彼女は移動がめんどくさいのか、大抵はホテル内の
バーがいいと言うからだ。
それでも彼女がそう言うのならと、俺は軽く頷き、店を後にした。
夜の街はまだ熱を残していて、路地裏は、ネオンの灯りに煌々と照らされ、
夜がゆっくり深くなってゆく。
並んで歩く彼女の横顔は、どこか軽やかで――その理由までは、うまく掴めなかった。
ほどなくして、彼女の選んだカフェバーに入る。
照明を落とした店内には、琥珀色の灯りが点々とともり、長い木のカウンターに
やわらかな陰影を落としていた。
壁際には酒瓶が整然と並び、奥には丸いテーブル席がひっそりと置かれている。
窓の向こうには夜の闇が広がり、この場所だけが静かに切り離されているようだった。
「ここ、いいでしょ」
彼女はそう言って微笑んだが、その笑みはどこか、これまでとは違って見えた。
―――――――――――――――――――――――
八月尽──8月31日
コメント
1件
いやもう、この回の空気感の描写がやばいっすね……。レストランの照明の落とし方とか、カフェバーの琥珀色の灯りとか、映像が浮かぶようでした。そして彼女の「今日は繁華街にあるカフェバーがいい」って即答、ここで一気に読者の違和感スイッチが入る设计、めちゃくちゃ効いてる。5年も付き合ってて離婚を切り出せない奥田と、カラっとしたオーラをまとう彼女の温度差が不穏で、続きが気になりすぎます。次回、どうなるんだろう。