テラーノベル
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酷く、険しい山道を歩き続けてきました。
かつては誇らしく生い茂っていた藤であろうの木は、今では見る影もありません。
生まれ変わってしまったその木は、幾度となく、私の足を絡め取ろうとしてくるのです。
私は藤のツタに足を取られ、転び、幾度となく傷を負いました。
その度に冷たい風が吹き荒れ、私の体温を奪うのです。
暗い
寒い
このままだと凍えてしまいそうだ。
そんな思いで山道を歩き続けた先にふと、あるものが目に写りました。雑草に引火した、小さな小さな火種です。
それはあまりにも小さく、雫が二、三滴降ってしまえば、消えてしまうのではないかとまで思ったほどでした。
このままでは山火事になってしまう。
そうわかっていながらも、私にはその火種が、大層尊く見えたのです。
私はその火種に、ふぅっと優しく息を吹きかけました。
二度
三度…
それを何度繰り返しただろう。
なんと小さかった火種は、大きな火柱となって大きく、力強く燃え上がったのです。
やがてその火は私を、山全体を包み込みました。
あぁ、優しくて暖かい。
不思議と、苦しくはありませんでした。
それどころか、私を優しく包み込むその火が温かくて、癒しさえ感じられた程です。
どれだけの時間が経っただろうか。
ふと辺りを見回すと、藤のツタは焼き払われ、一本の道ができていました。
まるで、私を山頂へ導くかのように。
その時、人生の道標が見えた気がしたのです。
そうか、私が生まれた意味は…
第四語 一陽来復 道導となる存在。
1947年 1月4日
「……さん」
誰かの声が聞こえる。
「…えこさん」
私を、呼んでいる?
「知恵子さん!……おいババア、起きろ!朝だぞ!」
その時、私はやっと現実に返り、先程の出来事が夢だったのだと気付きました。
夢にしては、なんだか意味がありそうなものでしたが。
「…とうとう昇天したかと思った。」
「また靴べらで引っ叩くわよ、クソガキ。」
目の前にいるクソガキ…ではなく、少年の名は星夜一縷。私の孫で、養子です。
私の息子である星夜守の死を機に、私の養子となりました。
一縷が養子になってから、一人で息苦しかったこの家の空気がすうっと軽くなったように思います。
そして一縷はあまり笑わない子です。
元々そのような性格だったのか、あるいは成長過程でそうなったのか。
いずれにせよ、私の大事な大事な子供である事に、変わりはないのですが。
ですが気が緩んだ時には、まるで”太陽に照らされた満開の花畑”のような、目が眩むほどの眩しい笑顔を見せるのです。
この子のそんな笑顔を初めて見た時、
あぁ、この子も人間なのだ。
と、当たり前の事ですが、そんな事を思いました。
そして、
私の残り少ない人生を、この子の笑顔を守るために、使いたい。
そう覚悟しました。
コメント
1件
シオンさんの第4話、読み終わりました。山道で藤のツタに足を取られながらも、小さな火種を大事に育てていく描写がとても印象的でした。あの火が徐々に大きくなって、最後には道を示してくれる温かい存在になる展開、胸が熱くなりました。そして現実パートで一縷くんの「太陽に照らされた花畑のような笑顔」という比喩が美しくて、知恵子さんの「この子の笑顔を守るために人生を使いたい」という決意にもじんと来ました。夢と現実の対比が効いていて、次が楽しみです。
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