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若井さんの愛情が一途な純愛ではあるけど、嫉妬から大森さんの全部をコピーしようとする様は、狂気じみて対比がスゴイ!!
side.若井
涼ちゃんが元貴のことをそういう風に見ていたのは感じていた。
元貴を見ている時の視線は熱くてうっとりしたようなものだから。
でもそれは俺も涼ちゃんをそんなふうにみているから気づくものなのかもしれない··· 案の定、元貴は全く気にもしていないようだったから。
抑え込んだ涼ちゃんから甘い声が漏れる。
ぎゅっと目を閉じて何も見ないようにしながら、現実から目をそらしている。
「ぅ、んっ、あ、ぁッ···」
その頭の中には元貴が見えているの?
涼ちゃんは元貴が大好きだもんね。
写真を欲しいと俺にお願いするくらいに。
幸せそうに、切なそうに見つめるくらいに。
でも今は。
涼ちゃんは俺のものだ。
俺に抱きついてその気持ちよさを受け止めることにだけに必死になっている。
俺が望んでいた光景。
例え俺を見ていなくても。
「りょーちゃん、気持ちいいね?」
ふふ、と笑ってやると、びくんっと身体が震える。
元貴みたいに涼ちゃんを呼んで。
元貴がするみたいに前髪をかきあげて。
クセを真似出来るように元貴を観察して。
そんなズルい方法で涼ちゃんの身体と心をこじ開けて。
「ん、ぅん、うん···っ、やぁ···!」
ふるふると顔を振りながらも涼ちゃんの身体は溶けてしっとりと、濡れている。
絶頂ね、あそこもここも濡らして。
錆びついた心に油を差して。
錆びついていたのは俺か涼ちゃんか。
わからないほど溶けあって。
行為を終えてぐったりと抱き合っていると涼ちゃんは眠っていて、 その頬にはうっすらと涙が流れたあとが見えて思わずそれを舐め取った。
服を整えてあげると俺はまた合鍵をそっとポケットに入れて部屋をあとにした。
どちらの恋も叶わないならそれでもいいし、涼ちゃんの恋が叶うなら身を引こう。でも涼ちゃんが俺を少しでも求めているなら少しでも叶えてあげたい。それが身体を求めるだけでも。
「涼ちゃんがあんなこというなんて思わなかったから···」
ひとりでシても、なんて言葉に思わずその光景を想像してしまって挙句好きな人に抱けるか、なんて聞かれたら···あとはもう止まらなくて、涼ちゃんのためになんでもするなんて優しさを盾に抱いた。
涼ちゃんが苦しむほど元貴を求めているのを感じながら。
その瞳が俺を見てなくっても。
脳内で元貴を再生してても。
それでもいいや。
それに涼ちゃんが苦しいなら、 元貴が好きなら、俺が元貴の代わりになってあげれば喜んでくれるかな。
···それもいいと、名案だと思った俺は狂ってしまったのかもしれない。
ゆっくりと歩きながら大通りを目指す。
夏の夜の空気はじっとりと俺に纏わりついてきてひどく重たかった。