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前編の次の日です。
月下に酔いて、汝を想う ― 続
夜風が冷たくなり始めた頃、私は再び中庭に立っていた。
呼ばれた気がしたのだ。あの声に。
零「……やはり来たか」
月影から零さんが現れる。
逃げ道を塞ぐように、静かに距離を詰めてくる。
零「覚悟せよ、と言ったはずじゃが」
その声音は冗談めいているのに、赤い瞳は冗談を許さない。
◯◯「……零さん」
零「安心せい。今宵は、奪い尽くす気はない」
顎に指を添えられ、顔を上げさせられる。
視線が絡んだ瞬間、空気が甘く沈んだ。
零「ただ……少し、分けてもらうだけじゃ」
首元に、冷たい吐息。
衣擦れの音とともに、唇が肌に触れる。
ちくり、とした痛み。
次の瞬間、それは熱を帯びた感覚に変わった。
◯◯「……っ」
声を漏らすと、零さんは小さく喉を鳴らす。
零「声を抑えよ。夜は耳が良い」
そう言いながらも、離れる気配はない。
血を吸う仕草は驚くほど丁寧で、まるで大切なものを味わうようだった。
零「……美味いのう」
囁きが、首筋に落ちる。
零「恐れて震える血より、こうして……わしを受け入れておる血の方が、ずっと」