結局草は諦め、探偵社にもどることにしたは良いが、先ほどの中也の顔が頭に残り、顔の熱が冷めないでいた。
このまま帰ったら仕事なんてできない。いや、しないんだけども。そう思い、近くの公園のベンチに腰掛けた。
「くっそ、あんのちゅうやろうめ…」
「何故貴方はそんなに怒っているのですか?」
「うひゃあ!?…ああ、フェージャ。聞いてくださいよ、さっき元上司に会いに行ったんですけど(不本意)その時戻ってこないかって引き止められて。その時の顔が頭から離れないんです。」
以前露西亜へと出張へ行った時迷った私を助けてくれた露人、フョードル・ドストエフスキーさん。
どうやら住んでいる場所は日本らしく、私の帰国時間と合わせて一緒に来てくれたハイパー優しい人。
「そうですか。…恐らく相手が普段しない顔をしているのを見てそれが印象に残り、頭から離れないのでは?」
「成程!」
確かに、中也があんな寂しそうな顔をしているのは初めて見たな…
「フフッ、早い者勝ちということですか…良いでしょう」
「フェージャ?何か言いました?」
小声で何かを呟いた様だったが風の音でかき消されてしまった。
「いいえ。それよりぼくには貴方を抱きしめる権利は無いのでしょうか?」
「え?!だ、抱きしめる?、見てたんですか?!」
またもや顔に熱が集まる。アレを見られてたとなると穴があったら埋まりたい。そのまま生まれ変わって原因である中也を呪いたい。
「見てませんよ。ただ貴方の服の皺、言動、口調から予測したまでです。」
「えなにそれ凄すぎ…目いいんだね…皺とか見えるんだ…え私がおばさんとかになったら顔の皺とか見られる…?!イヤアアアアア…」
「言うところソコじゃ無いでしょう…と言うより、はぐらかしても無駄です。単刀直入に言います。ぼくが貴方を抱きしめてもいいですか?」
くそぉ、治さえはぐらかす私の言葉が読まれていたとはっ…て、そこじゃなくて抱きしめる…?ん…?彼は抱きしめて何を得たいのだろうか…
「別に抱くことに利益があるわけではありません。ぼくがしたいだけです。」
おおう、考え読まれていたな…てか抱くて。でもこんな頼まれてるし少しぐらいなら、ね…?
「…まあ私でよければ減るものじゃ無いですし、どうぞ?」
正直すんごく恥ずかしいが意を決してフェージャに手を広げる。するといつのまにか距離を詰めてきて意外にしっかりしていた体が思いの外きつく自身の体に腕を絡める。
覚悟していたとはいえ、矢張り恥ずかしい。離してもらおうと口を開こうとすると先にフェージャの方から口を開いた。
「いつか絶対に、ぼくのところへ来てもらいますね?羅紫。」
「ひょえええ…耳元で言わないでくださぁぁい…と言うか恥ずかしいのでそろそろ…」
なんだあのけしからん色気ヴォイスはっ!?と言うか今日だけでかなり恥ずかしい思いしてるなあ?!
1人脳内で悶えているといつの間にか離れていたフェージャが何かを思い出したかの様に席を立ち、公園の出口へと足を向ける。
「…長居しすぎました。妬かせるのも少しにしておいてください。ではまた。」
「は、はい、またどこかで………」
公園を出ていくフェージャをぼーっと見ているとふと探偵社に行かねばならないと言うことを思い出した。するとやけに冷静になり、ぽやぽやと火照っていた頭は国木田くんの般若顔によって現実に戻された。
「やばいやばい、国木田くんを怒らせたら偶にめんどくさい事になるから早く戻らないとっっ!!死ぬ!!!」
異能を使いながら急いで探偵社へと向かって行った。
「ただいま〜賢治くん、草いいの見つかったから送るね!」
とりあえず最高級のものを贈ろう。
「ありがとうございます✨…あれ、羅紫さん、首元が赤いですよ。虫刺されですか?」
「え、本当?公園で刺されたかなぁ…右左どっち?」
「どっちもです!虫刺されにはよもぎをすり潰したのが効くんですよ!昔はよくおばあちゃんに塗ってもらいました〜!」
「そ、そっか。とりあえずムヒ塗っておくね。ありがとう。」
いつの間に刺されたんだろ…痛みも痒みもないから気づかなかったな…
「あ、国木田くん!草は下見できたよ!よかったら国木田くんもいる?」
「!!!!いらん…わ…………」
あれ?急にこっち見た途端固まったぞ…?私が美しすぎた‥?
「((バリーン!!!(バタッッ……」
「え、どうしたどうした…」
メガネが割れてぶっ倒れたんだが。
「あれれ〜国木田くぅ〜ん、どぉし……………」
「あ、治。ねえ国木田くん急に倒れたんだけど。私のせい?」
「……羅紫、ここに来るまでに誰に会った?」
私の方を見て直ぐ、昔の治の目に戻り、ひどく重い圧をかけられながらそう聞かれる。
「誰って…えっと、中也と、芥川くんと、露人の友達。」
普通の人間なら逃げ出したくなる様な圧だが、既に慣れている。しかし探偵社でこんな圧を出すのは初めてではないか?質問に答えるとまた質問が来る。
「その露人は誰?名前は?」
「えっと、フョードル・ドストエフスキーさんって言う人。」
またより一層圧が増す。…あれ、これキレてる?…
「チッ…遅かったか…ねえ羅紫、その首元の赤いの、何?」
「何って、虫刺されって((ングッ…」
フェージャの時よりもきつく、少しの隙がないほど抱きしめる治。
すると首筋に鋭い痛みを感じた。
「ッッッ!ちょ、治?!痛い痛い痛い…って噛んだ?噛んだでしょ?!」
「…今はこれで勘弁してあげるよ。でもまた余計な虫に刺されたらこれじゃ済まさないからね。」
「ええええええ…」
「まあ羅紫がお仕置きされたいなら別だけど。」
「いや勘弁してよ…じゃあとりあえず与謝野女医に治してもらってくるね…」
「治したらまた噛む。」
「いやヤメロ。」
なんなんだこの犬は……
御負け
「おやおやぁ、羅紫を解体するなんてまたとない機会じゃァないか…」
「ヒイイイイイイイイ」
「ほら、怖くないからさあ!!!」
「ヒギャアアアアアアア!!!!!」
十回ほど行きました😇
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