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kaede🍁
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みら

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#AI
みら

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収録が終わり、帰りの車の中。
阿部は静かに考えていた。
(まずい。)
本当にまずい。
歩行禁止のせいで自分と目黒は、しばらくグループ全員での仕事しか入れられていない。
マネージャーも、メンバーも、今は個人の仕事は出来ないと判断している。
つまり。
(二十四時間監視されてるようなものだよね……。)
阿部は心の中で大きくため息をつく。
(お詫びしたいのに……。)
目黒は本気で「サプライズを考えて」と言った。
それなのに。
仕事へ行くのも抱っこ。
帰るのも抱っこ。
家でも常に一緒。
料理を作ろうとしても、
「危ないから座ってて。」
荷物を持とうとしても、
「俺がやる。」
少し歩こうとしただけで、
「歩行禁止。」
すぐ抱き上げられる。
(こんなの準備できないよ……。)
阿部は頭を抱えた。
(サプライズなんて……。)
実は得意ではない。
周りからは器用だと言われる。
資格の勉強も。
料理も。
細かい作業も。
全部コツコツ積み重ねるタイプ。
でも。
(道具も準備も無しで人を驚かせるのは苦手なんだよなぁ……。)
唯一、自信があるのは。
(謎解き。)
宝探しや暗号を作ること。
相手が考えながらゴールへたどり着くような遊び。
それだけは昔から好きだった。
けれど。
家中どこへ行くにも目黒が一緒。
こっそり何かを用意するなんて不可能だった。
しかも。
阿部はちらりと目黒を見る。
機嫌が良すぎる。
鼻歌まで歌っている。
(絶対楽しんでる……。)
「めめ。」
「ん?」
「気、済んだ?」
期待を込めて聞いてみる。
目黒は満面の笑みで答えた。
「全然。」
「……。」
「まだ全然足りない。」
「歩かせる予定もない。」
「えぇ……。」
阿部は肩を落とす。
目黒は笑いながら阿部の頭を撫でた。
「でも。」
「サプライズ、楽しみにしてる。」
「……。」
「きっと、あべちゃんなら俺が一番喜ぶもの考えてくれるでしょ?」
その言葉に、阿部は返事ができなかった。
期待されている。
だからこそ。
ちゃんと応えたい。
目黒が本当に欲しいもの。
目黒が笑顔になるもの。
阿部は家へ帰ってからも、ベッドへ入ってからも、目を閉じても考え続けた。
思いついては首を振る。
何度考えても答えは出ない。
それでも諦めたくなかった。
___________
翌朝。
「今日はちょっと出掛けるよ。」
目黒にそう言われ、阿部は何も分からないまま車へ乗せられた。
着いた場所を見て、小さく息をのむ。
「……ここ。」
女性になる前から住んでいた、自分の家だった。
駐車場ではすでに佐久間、岩本、康二が待っていた。
「おはよう。」
佐久間が笑顔で手を振る。
「今日は引っ越し屋さんでーす。」
「え?」
阿部が聞き返す間もなく、目黒は阿部を抱き上げる。
「め、めめ?」
リビングへ運ばれ、ソファへ座らされる。
「ここで見てて。」
「……見てるだけ?」
「うん。」
目黒は当然のように答えた。
そのまま四人は部屋中の片付けを始める。
「これは持って帰る。」
「これは処分。」
「確認お願い。」
何かを捨てるたびに必ず阿部へ見せる。
「これ、いる?」
「うん。」
「じゃあ持って帰る。」
「これは?」
「もう使わないかな。」
「処分ね。」
誰一人勝手に決めない。
何度も確認しながら、荷物を丁寧に分けていく。
その様子を見ていた佐久間が笑う。
「あべちゃん、荷物少なくて助かるわ。」
「涼太と翔太の時なんてさ。」
「重たい段ボール何十箱もあったっけ?」
康二が苦笑する。
「あれは本当に終わらんかった。」
「服も多いし。」
「調理器具も多いし。」
「ほんまに引っ越し業者さんみたいやった。」
続いて岩本が部屋を見回した。
「家具も小さい。」
「ふっかの時より全然楽。」
「ふっかのソファ重すぎた。」
「山のように処分する物出もてきたし。」
四人が笑う。
康二はスマートフォンを取り出した。
「この家具いらんのやったら。」
「欲しい後輩いっぱいおる。」
「呼んでええ?」
「お願い。」
目黒が頷く。
それから一時間もしないうちに、何人もの後輩が家へ集まってきた。
「失礼します!」
「ありがとうございます!」
「冷蔵庫いただきます!」
「テレビ持ちます!」
家具や家電が次々と運び出されていく。
阿部は落ち着かない様子で立ち上がろうとした。
「俺も手伝――」
「だめ。」
目黒が即座に抱き上げる。
「めめ!」
「俺、座ってるだけなんだけど!」
「うん。」
「だから座ってて。」
「でも!」
「歩行禁止。」
「うぅ……。」
またソファへ戻される。
しばらくすると、後輩が声を掛けてきた。
「あの。」
「このソファいただいていいですか?」
「もちろん。」
目黒は笑顔で答えた。
目黒は阿部をひょいと抱き上げ、部屋の隅へ運ぶ。
そこには一枚の座布団。
阿部はしょんぼり座布団へ座るしかなかった。
後輩たちは手際よくソファを運び出していく。
「失礼しまーす!」
「ありがとうございます!」
昼が近付く頃には。
テレビも。
棚も。
机も。
冷蔵庫も。
洗濯機も。
家具はほとんど姿を消していた。
広くなった部屋。
残っているのは、座布団へ座る阿部だけ。
その光景を見て、阿部は静かに周りを見渡した。
(……何もない。)
ここへ逃げ込んだ日。
(もし目黒が幸せになれるなら。)
そう思って選んだ場所。
だけど今、その逃げ場所は目の前で少しずつ消えていく。
(めめ……。)
目黒は笑っている。
穏やかに。
優しく。
でも、その行動は一切ぶれていない。
(本気なんだ。)
歩かせないことも。
前の家を片付けることも。
逃げ道をなくすことも。
全部。
本気だった。
『一緒に生きていく。』
何度もそう言ってくれた。
それなのに、自分は一人で答えを決めた。
別れたと嘘をついた。
勝手に家を出た。
目黒がどれほど傷つくかも考えずに。
(俺……。)
(本当にひどいことをしたんだ。)
ようやく、その重さが胸へ落ちてきた。
逃げ場所をなくしたいんじゃない。
目黒は。
もう二度と、一人で逃げないでほしい。
その願いを、行動で伝えていたのだ。
阿部は膝の上で拳を握りしめた。
(ちゃんと伝えなきゃ。)
(言葉だけじゃなくて。)
(めめが安心できるくらい。)
(俺の覚悟を。)
何もなくなった部屋の真ん中で、阿部の決意だけが静かに固まっていった。
コメント
2件
やり方はぶっ飛んでるけどメンバー、マネージャー、スタッフみんなが🖤💚の幸せを願っての行動と発言、ここまで愛される💚は幸せ者だな
ああ〜もう、めっちゃじんときたわ…😢 目黒くんの「逃げ道なくす」執念がエグいほど愛で、でも阿部がやっと自分のしたことの重さに気づくところでグッと来た。家がスカスカになっていくのに「座布団にちょこんと座ってるだけ」の阿部、切ないけど笑ったw 歩行禁止かわいすぎて困る。次、阿部がどう覚悟を形にするのか、めちゃくちゃ気になる!