拾った青年の経緯が随分と複雑だったため、ここにメモを残すこととする。
まず、彼の名はクライブ。16歳。
身長は180ほど。ワイバーンの首を片手剣で軽々と飛ばす剛腕だが、やや痩せ過ぎなきらいがある。食が細い。私より食べない。
出身地は、此処より西方と云うことしかわからないらしい。貧しくはないが富んでもいない、小さな村だったそうだ。思い当たる節がない。確認したが、地図にも載っていないようだ。
そして、自覚はないようだが、村で随分酷い扱いを受けていたようだ。確かに彼の柔らかな金の髪は、地方ではかなり珍しい。……迫害の理由になるくらいには。
少食なのも痩せ過ぎなのも、村で十分に食事をとらせてもらえなかったせいだろう。ありふれた話だが、何度聞いても嫌な話だ。
……しかし、彼の扱いは去年を区切りに一変する。
にわかには信じられない話だが、なんと彼は今代の勇者だというのだ。瞳孔に変化は無く、嘘をついている様には見えないが、彼が騙されているという可能性も……。いや、兎も角だ。村の者たちはそれを知った時、
……彼を村から追い出したのだった。
食事も金も持たせず。一本剣を持たせて、お前は勇者だ。魔王を倒せと、それだけ告げて追い出した。
そこから、外の世界を全く知らないクライブは魔物を狩りながらどうにかこうにか東へ進み、あの場所で遂に力尽きた………という訳だ。
………明日、街に着く予定だ。彼と別れるかどうか、今一度考えるべきかもしれない。
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