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「」せりふ ()こころ
桃 side .
お節介な元・委員長の名前が学校の連絡網から消えたのは、俺がすちに「お願い」をした次の日のことだった。
テレビもネットも見ないこの部屋に、外の世界の情報は入ってこない。
あの男がどんな風にすちに『処分』されたのか、俺は知らないし、知る必要もなかった。
ただ、すちが帰ってきたときに「らんらん、お掃除終わったよ」と、いつも通り世界一優しい恋人の笑顔で報告してくれただけで、俺の胸は甘い全能感で満たされた。
「お疲れ様、すち。やっぱりすちは、俺の言うことを何でも聞いてくれるね」
「当たり前だよ、らんらん。俺はらんらんのものなんだから」
すちは俺の膝に頭を乗せ、従順な飼い犬のように目を細めて俺の手のひらに頬を寄せてくる。
人を何人も消してきた凄惨な怪物の、俺の笑顔ひとつにすべてを捧げるこの姿。
そのギャップがたまらなく愛おしくて、俺はすちの髪を何度も優しく撫で回した。
だけど、そんな二人の歪な楽園に、静かに、けれど確実に『外の世界のノイズ』が這い寄り始めていた。
「ねえ、らんらん。今日、仕事の帰りにちょっと気になることがあってさ」
すちが膝の上から俺を見上げ、少しだけ困ったように眉を下げた。
「気になること……?」
「うん。俺の車の後ろを、見覚えのない地味なセダンがずっとついてきてたんだ。それに、俺たちのこのマンションの周りにも、最近、知らない大人がうろついてる気がする」
すちの言葉に、俺の背中を冷たい緊張感が駆け抜けた。
……警察だ。
いくらすちが用意周到に、社会的な行方不明や事故を装ってノイズを排除してきたとしても、一人の高校生の周囲からこれだけの人間が短期間に消えれば、外の世界が放っておくはずがない。
ついに、外のしっぽが俺たちの『セカイ』を嗅ぎつけ始めたんだ。
普通なら、ここで激しい恐怖や焦燥に駆られるのだろう。
でも、すちの隣にいる今の俺は、驚くほど冷静だった。
恐怖はとっくに麻痺して、別の黒い感情へとすり替わっている。
「そっか。外のゴミどもが、まだおれらを邪魔しようとしてるんだね」
俺はふふ、と喉を鳴らして笑い、すちの頬を強く包み込んだ。
すちの瞳に、俺の濁った笑顔が映り込む。
「らんらん……怖くないの? 警察が来たら、俺たちのこの時間が壊されちゃうかもしれないんだよ」
不安げに揺れるすちの瞳。
自分が捕まることではなく、俺との世界が壊れることを恐れている恋人。
俺はすちの唇に、深く、甘いキスを与えて、その不安を融解させてあげた。
「怖くないよ。だって、おれらを引き離せる人間なんて、この世界にはもう一人もいないもん。ねえ、すち。ノイズが近づいてくるなら、もっと深いところに隠れちゃおっか」
「らんらん……っ」
すちの瞳に、一瞬にしてギラギラとした狂気と、狂おしいほどの忠誠の光が戻る。
俺が言葉を与えるだけで、この怪物は何度でも生き返り、俺のためだけに牙を剥く。
「うん、そうだね。誰にも邪魔させない。俺たちのセカイに、余計な奴らは一人も入れないから」
すちは俺をベッドへと押し倒し、むさぼるように身体を重ねてきた。
外の世界の包囲網がじわじわと狭まっている不穏な気配。
それを、二人はむしろ自分たちの絆をさらに強くするための最高のご馳走のように受け入れて、お互いの熱の中に深く、深く溺れていった。
【イ】
episode 18 . fin_
奏.KaNaDe
28
仁名
524
コメント
5件
🌾失&超遅失… 警察が来そうなのに変わらず愛し合ってる翠桃すこ やはり翠桃、やっぱあま共。 すこぉぉぉぉ 次話、待ってますっ
あの〜初コメ失礼しますm(_ _)m最高過ぎるのでフォローさせていただきます!
ああ〜〜〜もうこの歪み合う感じたまらん!!😭💖 外の世界が迫ってきてるのに、むしろそれで二人の絆が深まっちゃうの、狂ってるけど美しすぎるよ…!!すちの「怖くないの?」って不安げな顔にキスで応えるらんらんの支配っぷりにもう惚れた…この世界観に浸りながら次の話待つわ🌸