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10 - 第10話神像

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2022年08月22日

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「えっと、何を言ったんだっけ」

「ほら、覚えていないだろう? それが答えだよ」

そう言うと、彼は私の顔を覗き込んだ。

彼の瞳はルビーのように赤く輝いていたけれど、どこか冷たく、吸い込まれてしまいそうだ。

彼の視線から逃れようと目を逸らすと、そこには巨大な石板があった。

何か文字が刻まれているようだけど、見たこともない記号のようなものが並んでいるだけで、意味はさっぱりわからない。

私がそれをじっと見つめていたからか、彼が説明してくれた。


「これは古代文字だ。遥か昔に使われていたものでね。今では使う者もいない」

「どうしてこんなところに?」

「ここは神殿だからだよ」

彼はそう言うと、私の手を引いて歩き出した。

「あの、どこへ行くんですか? 私、まだここを見て回りたいんですけど」

「もうすぐ夜になる。きみも疲れただろうし、今日はここまでにしておこう。ほら、こっちだ。おいで」

彼に促されて、渋々ついていく。

神殿の中は広くて、とても神秘的だった。

見たことのない植物が生えていて、天井から水滴が落ちてくる。

私は好奇心を抑えきれず、きょろきょろと見回してしまう。

すると彼は笑みを浮かべ、手を差し出してきた。

その手を握れば、優しくエスコートしてくれる。

そして、連れられた先は、大きな部屋。

部屋の中央には、巨大な石像が鎮座していた。

まるで巨人のような体躯をした男だ。

しかし、その表情は穏やかなもので、慈愛すら感じられる。

「これは?」

「神像だ。この世界を作ったとされる存在」

「これが神様なんだ」

私は、彼の隣に立って、その姿を見上げる。

私も、この世界の生まれだったら、こんな風に育つのだろうか。

「これを見て、何か気付いたことはあるか?」

「えっと、顔が怖くて強そうってくらいしか」

私の答えに、彼は苦笑する。

確かに、この神像は怖い顔をしている。

「そうだな。この顔は恐ろしい。怒りや憎しみ、妬み嫉みの表情をしているからな。だが、この像の顔はそれだけじゃないんだ。例えば、この目をよく見てごらん。涙の跡が見えるだろう? これは、この像が流した涙なんだ。この神は、この世界のために涙を流したんだよ」

この世界に生きる人々を見守る神様がいるとすれば、きっとこの方のように優しいお姿に違いないと私は思う。

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