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(ふふふ……順調、実に順調だわ!)
自室で職業訓練所の報告書をチェックしながら、私は口角を吊り上げた。 就職率70%突破。訓練期間中の衣食住を保証し、成績に応じて食料品をインセンティブ支給する「ソフィア・システム」は完璧に機能していた。
(これで私の『逃走用セカンドライフ資金』も、もうすぐ目標額に到達ね♡)
建国祭当日。カイル殿下とパレードで皇宮周辺を巡ったあと、私はある貴族主催のお茶会に招かれた。
主催者は、スラムの学校に押しかけてきた聖女派の貴族。
(ふん。どうせこうなると思っていたわ)
「カイル殿下のお隣は聖女様がお似合い。捨てられる予定の貴女には、その椅子(ボロい木の箱)がお似合いですわよ」
扇で口元を隠した令嬢たちが嘲笑う。
隣でアンナが、今にも飛びかからんばかりの勢いでプルプル震えている。
「ムキーッ! お嬢様をこんな箱に座らせようとするなんてっ!」
その時、令嬢の側のメイドがわざとらしく手を滑らせ、私の横にいたアンナに紅茶をかけた。
「あら失礼」
「きゃっ! ……アツアツアツ!……もう、袖がビショビショになっちゃいましたぁ!」
私は彼女にハンカチを差し出すと、主催者を正面から睨みつけた。怒りの導火線は、焼き切れていた。
「……私の侍女への侮辱は私に対する不敬と同じですわ」
私は迷いなく、目の前の木箱をテーブルに向かって思い切り蹴り飛ばした。 ガッシャァァン!! と食器がぶつかる音を立てる中、私はテーブルのポットを掴み、悲鳴を上げる主催者の頭に紅茶をポットごとぶちまけた。
「あつっ、ひ、ひぃいっ!?」
「勘違いしないことね。私が捨てられるんじゃない、私が殿下を捨てるのよ!(生き残るためにね)」
そこへ、聖女シェリーを連れたカイル殿下が現れた。
(ゲームの聖女登場イベント通り、推しカップルがお出ましね)
ふわふわしたピンクの髪に、砂糖菓子のようなピンクの瞳。魔法は本来、王族の血筋にのみ許された力。けれど彼女は、平民ながら神に選ばれ、魔力を授かった特別な存在――それが、聖女シェリーだった。
前世の私は、この二人の幸せを画面越しに願っていた。けれど、いざ現実として目の当たりにすると……。
(……何かしら、この妙な違和感は)
「カイル殿下ぁ、ソフィア様が怖いですぅ……」
上目遣いで、わざとらしく殿下にすがりつくシェリー。
「ムギギッ! あんなにクネクネしちゃって!」
アンナが私の耳元で囁く。
「――あとはよろしく頼みますわ、殿下」
私は彼を一瞥し、アンナを連れて背を向けた。
「待て! ソフィア」
呼び止める声を無視し、私は歩き出した。
#溺愛
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