「大丈夫? 怖くない? 高いところが苦手なのに…無理したんじゃない?」
「大丈夫。どうしても、穂乃果と乗りたかったから」
「嬉しい、本当にありがとう。ねえ見て。ここからだと夜景が綺麗に見えるよ。一面キラキラしてて、すごく幻想的だね。何だか夢みたい……」
「ああ、本当だ。すごく綺麗だ」
そう言うと悠人は、急に真面目な表情で私を見た。
そして、深呼吸してから、ゆっくりと話し始めた。
「穂乃果……こういうシチュエーションはありふれてるかも知れない。でも、ここで言おうと思う」
悠人の改まった態度に、急に心臓が音を立てて動き出した。
この胸のドキドキは、高いところにいるから?
ううん、違う。
だって私は、高所恐怖症じゃない。
「穂乃果。もう一度ちゃんと伝える」
「あっ、う、うん」
「俺は、穂乃果と結婚したい。来年の3月。2人が出会った月に……2人きりで式を挙げたいんだ」
悠人……
嘘みたいだ、こんな素敵な場所で、こんな素敵な景色に包まれながらプロポーズしてくれるなんて。
すごく嬉しい……
確かにベタかも知れないけど、私には憧れのシチュエーションだよ。
来年3月には、私達、夫婦になるんだね。
実感が湧かなくて、まだ全然信じられないけど、でも私、悠人の奥さんになるんだ……
「嬉しい……。悠人、ありがとう、よろしくお願いします」
その返事を、悠人はとても喜んでくれた。
私達は2人とも笑顔だった。
そして、その笑顔のまま、私の頬をひとすじの涙がこぼれ落ちた。
悠人は、私の手を取って、指輪を薬指にはめてくれた。プラチナの綺麗なエンゲージリング。
ピッタリのサイズだ――
「悠人、ありがとう。嬉しい……」
さっきから涙が止まらない。
「穂乃果。俺は、お前を愛してる。結婚して、夫婦になって、どんなに歳を重ねても、ずっとずっと変わらずに愛してるから。死ぬまでずっとだ……。穂乃果が嫌だと言っても、俺はお前を愛し続ける」
「嫌だなんて言うわけないよ……」
私は、こんなに悠人のことが大好きなんだから。
今のこの幸せ、めいっぱい感じていたい。
この景色と、悠人の言葉――
私は、絶対に忘れないよう、胸に刻んだ。
観覧車から降りた私達は、遊園地のイルミネーションに包まれながらゆっくり歩いている。
恥ずかしいけど、私は悠人の腕に自分の腕をからませた。
「いいね、ドキドキする」
悠人が前を向いたまま、言ってくれた。
私の方が、きっと何倍もドキドキしてるはず。
悠人、今日は……本当にありがとう。
遊園地デート、すごく楽しかった。
プロポーズも、指輪も、腕組みも……
全部が全部、最高の想い出になったよ。
ねえ、悠人。
お願いだから、私のこと離さないでね。
ずっと、ずっとだよ、約束ね――