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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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君の声が聞きたいよ

あのライブの、あの歌詞がずっと心に突き刺さったままの上鳴。ノマドとTroupe de musique seuleの正体が歌だと分かってから、2人はお互いのことを意識し始めていた。

「なー耳郎。楽器貸してくんね??」

共同スペースで雑談している耳郎に声をかける。

「良いけど、なんかあった??」

「歌ちゃんにさ、気持ち伝えようと思って。歌ちゃん、音楽以外の音聞こえないからさ。」

「歌で告白かぁ!!いいと思う!!」

耳郎の言葉に共同スペースにいる全員が頷く。もはや上鳴と歌の関係はA組公認になっている。

「なるべく早く返すから。」

「いや、ゆっくりでいいよ。納得いくまで使って。」

と自分の部屋に、上鳴を案内した。

明くる日の放課後。

「今日の訓練、どうだった??」

「もうヘトヘト。個性を伸ばす訓練でさ。最大出力出すだけで精一杯なのに、それよりもっと、限界まで出せって。」

「なかなか、手厳しいね。」

「そうなの。相澤先生厳しいの。勉強でも赤点取ったら除籍とか。もうついていくのに必死。」

「ヒーロー科ってそんなに大変なんだね。」

「普通科はどんな感じ??」

「ほんとに、普通だよ??この前みたいなヤなヤツいるけど。1日座学して帰る感じ。」

「たまには、その普通な日常を送りたいよ。」

苦笑して、空を仰ぐ上鳴にどうしたのと手話する歌。

「今度、オレとデートしてくれないかな??」

唐突な手話に、スマホを落として固まる歌。

「嫌、かな??」

首を目一杯横に振って、デートする。と嬉しい感情を込めて手話をした。

「ありがとう!!遊園地とかどうかな??」

「良いよ。私絶叫系大好き。」

「よっしゃ。ガンガン乗ってこうぜ。」

この後、歌と別れてからも気分が浮き足立つ上鳴であった。

遊園地デート当日。お揃いのカチューシャを買い、全ての絶叫マシンを堪能した。

「観覧車、乗ってから帰らねぇか??」

「良いよ。」

休憩がてら、軽食を済ませたあと、いざ観覧車へ。観覧車に近づくにつれ、上鳴は落ち着かない様子。

「緊張してるの??」

「いやぁ。密室で2人きりって始めてじゃん??」

その言葉に歌も動揺してしまう。いざゴンドラに乗車。

「(タイムリミットは観覧車が1周するまで。)聞いてほしい歌があるんだ。耳栓外してもらって良いかな??」

手話で伝え、耳栓をはずしたのを確認するとスマホの再生ボタンを押す。流れてきた音楽と上鳴の歌声に驚くと同時に涙する歌。

君と僕だけの世界に響くこの歌

止むことなくずっと…

柔らかなでも凛とした声でサビの歌詞の最後を締めくくった。

「歌ちゃんのことが好きです。僕と付き合ってくれませんか。」

歌い終え、手話で告白した上鳴に、涙を拭って。

「はい。もちろんです。」

と手話で返した。

「ありがとう!!」

思わず叫び、歌を抱きしめたところで終着した。歌の手を取りゴンドラを降りる。歌を自宅近くまで送る時まで決して手を離すことはなかった。上鳴が寮へ戻ると。

「どうだった…??」

共同スペースに全員が集まっており、先陣きって切島が聞く。上鳴は感極まった顔で両親指を立てた。それを合図に皆が一斉にクラッカーを鳴らし、祝賀会が始まった。明日も休みということで皆で夜遅くまで騒いだ。

歌に告白してから見える景色が変わったような気がした。それでも放課後にやることは変わらない。

「手話、ほんとに上達したね。」

「ありがとう。でもまだ筆談がないと不安。」

手話と筆談、使い分けながら会話する2人。

「あの曲作ってくれてありがとう。大切にするね。」

「君の声が聞きたいよってライブで歌ってたから、感化されちゃって。」

「上鳴君に届くように作ったんだよ。届いて良かった。」

「ちゃっかり告白されちゃってたんだなオレ。先越されちゃってたか。」

微笑む歌の頬をそっと撫でる。その手を優しく握る歌。照れる上鳴を悪戯っぽい目をして見つめる。数秒見つめあい思わず笑う2人。

あの日あの時、声をかけなかったら決して始まることのなかった恋。

その恋を祝福するかのように柔らかな風が2人の間を吹き抜けた。



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