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和泉
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#るなさん愛され
もか🍑@🐣🎀🪽腐女子
100
#ヤクザ
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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柔らかな湯気の匂いが、微睡みの中へゆっくりと溶け込んできた。
誰かが部屋の中を静かに歩く気配。
衣擦れの幽けき音。
それから、控えめなノック。
「旦那様、お湯の準備が整いました」
扉の向こうから聞こえてきたのは、侍女頭ブリジットの落ち着いた声だった。
「ああ、ご苦労」
穏やかに返事をするランディリックの声に、リリアンナの意識は急速に浮上する。
「リリーはまだ眠っている。湯が冷めないよう頃合いを見て知らせよう」
「かしこまりました」
静かに足音が遠ざかっていく気配を見計らって、リリアンナは口を開いた。
「……ランディ……」
ゆっくりと身体を起こし、辺りを見回す。
窓から差し込む朝の光が部屋を柔らかく照らしていた。
扉付近にたたずんでいたランディリックが、リリアンナの声を受けてこちらへ近づいてくる。
既に身支度を整え、執務服へ着替えた姿。ふと視線を巡らせれば、机の上へは読み掛けなのだろう。積まれた書簡のうちのいくつかが開封され、手紙が無造作に置かれていた。
昨夜も遅くまで仕事をしていたはずなのに、いつから目を覚ましていたのだろう?
まるで疲れを感じさせない顔だった。
「……起きたかい?」
リリアンナのすぐそば――覗き込むようにされて、柔らかく微笑まれた。
「おはよう、リリー」
「お、おはよう……」
「今日もキミは本当に綺麗だ」
寝起きの、寝乱れた姿を手放しに褒められて、リリアンナはソワソワしてしまう。
これは、このところのランディリックの通常運転なのだけれど、リリアンナはなかなか慣れることが出来ない。
「じょ、冗談はっ」
恥じらいに身じろいだら、身体のあちこちが鈍く軋んで、小さく眉を寄せる羽目になった。
「すまない。どうも僕は、リリーが相手だと加減ができなくなるらしい」
ランディリックが、寝台へ腰掛けるようにしてリリアンナの腰へ手を添えてくれる。
「ひゃっ」
いつものことだけれど、リリアンナは未だ一糸まとわぬ姿のままで、身体を起こした背中側は無防備に肌をさらしていた。
そこを柔らかく撫でられて、戸惑わないわけがない。
悲鳴を上げてシーツを身体に巻き付けるリリアンナを見て、ランディリックが楽し気に微笑んだ。
「湯を用意させている。身体を温めた方が少しは楽になるだろう」
そう言って髪を優しく撫でられる。
その何気ない仕草が、昨夜の熱を思い出させてしまって、リリアンナは頬を染めた。
「……もしかして……一人で入るのは無理? 手を貸そうか?」
返事をしないままでいたからだろう。
くすくす笑いながら問いかけられて、リリアンナは慌てて首を振った。
「……だ、大丈夫っ。一人で入れる!」
「そう。それは残念だ」
「ランディ!」
リリアンナがぷぅっと頬を膨らませるのを見て、ランディリックは安堵したように微笑む。
「元気そうで良かった。ナディエルを呼ぶから……ゆっくりお湯に浸かるといい」
そのまま部屋を出ていこうとするランディリックを、リリアンナは慌てて呼び止めた。
「待って、ランディ!」
昨夜も結局、話を切り出せないまま眠ってしまった。
本当は聞かなければならないことがあったのに。
「どうした?」
「私、……ランディに聞きたいことがあるの」
リリアンナは小さく息を吸い込んだ。
ランディリックの動きが一瞬だけ止まる。
けれど、その表情は変わらないままだった。
「聞こう」
静かな声音だった。
シーツの上で重ねたリリアンナの両手指先は、緊張で小さく震えていた。
「私……これから、どうなるの?」
ランディリックは黙って続きを待ってくれる。
「私、今、ここにいるけど……実際はウールウォード伯爵家の当主でしょう?」
「……ああ」
「お父様やお母様が遺してくださった家も、領地も守らなきゃいけないと思うの」
胸が苦しい。
けれど目を逸らすわけにはいかなかった。
「このままランディの傍にずっといたい」
そこまで言って、リリアンナは小さく唇を噛む。
「でも……それは叶わない夢かなって思うの」
そう口にした瞬間、胸の奥がきゅっと締め付けられた。
コメント
3件
ランディは、ちゃんとそこらも考えてくれているよね😊
やっと聞けたね、リリアンナ!
ランディリックの「残念だ」の冗談混じりの返しと、それにぷくっと頬を膨らませるリリアンナの掛け合いが微笑ましかったです。昨夜の熱を思わせる空気を引きずりつつも、朝の光の下で「これからどうなるの?」と本音を切り出すリリアンナの緊張に胸が締め付けられました。領主としての責務と、ただそばにいたいという願いの板挟み——この先どう折り合いをつけるのか、続きがすごく気になります。いいエピソードでした。