視点:ぺいんと
3月9日。
草原が広がる四角の世界で。
俺、ぺいんとは待ち人を待っていた。
『kuronoooaがログインしました』
最初にサーバーにログインしてきたのは、クロノアさんだった。
直ぐにDoscordのミュートを解除する。
「クロノアさんこんにちは!!」
「は、早いですね笑 初めまして、」
クロノアさんが癖のしゃがみを繰り返しながら少しおどおどと言われた俺は、しばらくの間キョトンとしてから、
「あ~、はは、」
と曖昧な笑みを浮かべた。
前まではタメ口で接してくれたのに...と、ヘンな違和感を感じながら、2人で話す。
「なんでしたっけ今日の企画。『集合マラソン』?」
「はい、後2人来る予定なんですけど。」
「4人で協力して集合する企画でしたよね」
「そうです、いろいろミニゲームとかも作ってもらって」
「他の2人は俺の知ってる人ですかね」
「いやぁ、どうでしょ。でもあったら楽しいと思いますよ」
他人行儀なクロノアさんを前にして、少し不安になってきた。
本当に、あの二人が来たら、俺たちとの思い出が蘇るのだろうか。
そもそも、何故俺がこんな世界に来たのか分からないし、俺との思い出なんか無いかもしれない。
でも...うん。
俺はPCの隣のエナドリをぐびと飲み干して一息をついた。
『sinigami1212がログインしました』
そのログを見て、ハッと我に返る。
「しにがみくん!! よく来たね!!」
「ぺ、いんとさん、こんにちは~!!」
「一緒にコラボするのはしにがみさんか」
「えっクロノアさんだ!! 僕コラボとかしたことないのでいろいろ教えてください!!」
「いや...俺もコラボとか慣れてないから...笑」
会話を聞きながら、俺は半ばぼーっと画面を見ていた。
最後はアイツか...。
『torazoneがログインしました』
っ来た!!
「トラゾー!!」
「えっあぁ...俺が最後でしたか...」
「最後はトラゾーさんなんですね!!豪華だなぁ!!」
「よろしくお願いします」
ゲームの世界でトラゾーに駆け寄る俺、戸惑いながらしゃがむトラゾー。
嬉しそうにぴょんと跳ねるしにがみ、優しい声音でお辞儀するクロノアさん。
全員が揃った。
「じゃぁ早速撮影してもいいですか!!」
「待ってください、あの、企画説明をもう一度してもらっても...」
「音合わせしま~す!!」
「強引ですね...?」
視点:クロノア
「はいおはようございますこんにちはこんばんは!! ぺいんとでございます!!」
元気な声が、ヘッドフォンを通して俺、クロノアの耳に届いた瞬間、
俺はなぜだか懐かしい感覚を覚えた。
そして、俺の口が勝手に動いた。
「クロノアでございます」
俺の前で、ぺいんとさん、いや“ぺいんと”が驚いたような仕草でこちらを見た。
次は、“しにがみくん”の番だ。
視点:しにがみ
...なにこの感覚?
なんだか懐かしくて、つい笑かしちゃいそうで、この先が楽しみになる感覚。
打ち合わせしたのか知らないが、クロノアさんがぺいんとさんに倣って挨拶をする。
いや。
打ち合わせなんかしてない。
だって僕達は。
「“日常組”の可愛い担当!! しにがみで~っす!!」
僕が叫んだ直後、静寂が訪れた。
そうだよ。これだよ。
僕の居場所は。
視点:トラゾー
しにがみさんがギャグをかました。
そのセリフが、心に引っかかった。
“にちじょうぐみ”。
日常組か。
理解した瞬間、俺の脳内に膨大な数の思い出が流れ込んできた。
マインクラフターの日常R。GMOD。ニチジョゴン。とらお。脱獄。盗賊。水着コレクション。日常ボール部。デスクエスチョン。俺の休止期間。白昼夢。羅生門。
そうだ。思い出した。
俺はこう言わないといけない。
「...トラゾーでございます。」
視点:ぺいんと
俺の挨拶が引き金となったかのように、みんながすらりと挨拶をした。
驚く俺と、同じように驚いてキョロキョロと辺りを見回す皆。
「え、今の何?“しにがみくん”」
「いや、僕は可愛い担当でしょって!!」
「あなたはもう違うでしょ」
「は?何何何何何何」
「そういうとこだと思うよ笑」
「クロノアさん!!」
「可愛い担当はクロノアさんに譲ろうよ」
「トラゾーさんも?!」
...。
俺は口元だけで笑った。
この世界は俺の知っていた世界じゃないのかもしれない。
でも。
みんなは心の奥底に日常組の記憶を持っていたんだ。
俺がそれを引き出した。
「...皆。」
俺が言うと、3人は向き直った。
「ようこそ、俺たちの世界へ!!」
このセリフは、後で字幕を明朝体にして、ばりばりにエコーをかけてやろう。
3 9 for leading.
コメント
2件
最終話もめちゃ良かったです😇 (間違ってらすみません💦) 素敵な物語を ありがとうございました! 最後に皆んな思い出してあのセリフで終わるの最高過ぎました! それにntjo組が誕生した日に 終わるのも最高過ぎました! 本当にありがとうございました!