第一章.「第一夜」
重いまぶたを無意識に起こし、視界に入ってきたのは薄暗く年季の入った知らない天井だった。
意識が混濁する中。体全体に確かな重量を感じた。寝ぼけた目を擦りながら、体に乗っている物体に目を向けた。
女…?そこには、目をつぶって穏やかな表情で眠っている、藍色髪の少女がいた。少女を認識した瞬間。首に疼痛が走る。
「…っ!?」
首を縄で締められるような感覚。反射的に手が自分の首を掴んでいた。
「死…?カハッ..!はあ…はあ…うっ…」
熱い。痛い。苦しい。熱い…!熱い熱い熱い!!!死…?
「大丈夫?」
消えゆく意識の中。誰かの声が。俺の意識を覚ました。
「ァ…?あ”ぁ..うっ..だ…ェ..?」
「覚えてないの?あれだけカーラルが暴れたのに。」
カーラル…?一体誰のことだ…?
「正直。今日はあなたで終わらせてもいいんだけど。もう死にそうだし。」
自分の横でかがんだ藍色髪の少女は、俺の顔を覗き込んだと同時に驚いた表情をして、俺に呟いた。
「…!?き…君がなぜ……だめ。死んじゃだめ。君が私達に…」
「ぎ…みは..だ..ェ…?」
俺は焼けそうな喉を必死に抑え、心からの疑問を感情から引っ張り出して声に出した。
「…私はイローナ。大丈夫。すぐに冷やすもの持ってくるからね。」
少女は名を告げそう言うと、中位の水の入った桶やタオルを早足で持ってきた。
「…さ。もう大丈夫だからね。すぐに冷やしてあげる。」
「…ェ?」
すると。首にひんやりとした感覚と今まで感じたことのないくらいの激痛に襲われた。
「っづァア”ア”!!!」
「え!?ご、ごめんね…今はしてあげられることがこれくらいしかないの。大丈夫。大丈夫だからね。」
少女はこちらを見て心配そうにそう言う。
痛い。熱い。そう思っていたのもつかの間、アドレナリンで痛みが引いてきた。
どうやら死は避けられたらしい。視界が徐々に鮮明になっていく。
「…!良かった。意識が元に戻ってきてるね。じゃあこれを飲んで。」
少女はそう言うと、薬と水の入ったコップを渡してきた。
俺はうなずき痛みに抗いながらも薬と水を飲み干し落ち着きを取り戻した。
「…あ、ありがど…ぅ…」
「あぁダメダメ。まだ治りきってないんだから。夜の7時だしもう安静に寝たほうがいいよ。 ほら。私のベッドでいいから、寝よ?」
俺は言われるがままベッドへ行き目を閉じた。ベッドは柔らかくふかふかで、まるで雲の中を漂っているようだった。
「おやすみなさい。…さようなら。」