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言い淀む横山に、わたしはもう一度言った。
「真面目に聞くから言っちゃいなさいよ」
横山は決心したように頷き、話し出した。
「自分で言うのも恥ずかしいんだけど……前の部署でさ、なんか知らないけど異常にモテたんだ」
「ふむふむ」
「東京きてからも妙にチヤホヤされて、なんだかどこに行っても自分自身を見てもらえていない気分になってイラついていたところに、あんたが来てさ」
「わかるよ。言い寄る理由に同期を使ったと思ったんだね」
「うん。か、可愛いタイプではあったし、男に囲まれていたからな。でも、あんたと働いてたらそういう人間じゃないってわかったから」
「そりゃどうも」
可愛いって言われて少し動揺したけど、本題はそこじゃないだろうと、ここは大人の対応としてスルーした。
「とりあえず、仕事頑張ろう」
「そうだな」
今日の仕事はうまくいきそうな予感かした。
私たちはターゲット層にどんどん声をかけてアンケート結果を増やしていった。大モテの私と横山が声をかければ大抵の人は話を聞いてくれる。入れ食いだ!
想定していたより早く、予想以上に内容の詰まったアンケート結果を集めることができた。
その後、カフェでお茶をしながら必死にアンケートを集計し、資料にまとめた。その頃には私たちはすっかりくだけた関係となっていた。
「横山さぁ、昔からモテた?」
「いや高校卒業あたりから急にきた」
「だいたい同じかも。私はその時の彼氏とその他のクラスメイトの男子が急にお父さん化したの」
「お父さん? あー、俺も初めての彼女ができたんだけど、思ったのと違う感じになったと言うか……」
「例えば?」
「こんなこと言っていいのか……なんか、全てを捧げますみたいな感じに……」
「嬉しくなかったの?」
「重すぎるじゃん! 高校生だよ」
私は聞いていいのか悩んだ。でも聞きたい! ほんの少しだけ悩んで思い切って言った。
「あのさぁ、プライベートすぎることだから答えたくなかったら答えなくてもいいんだけど」
「なに?」
「大人になってからもモテたんだから、彼女とかできたでしょ? 普通に付き合えた?」
「……お前は?」
「思い切って言っちゃうね。大学の時にできた彼氏が途中から抱いてくれなくなった。大切すぎて無理って」
「そう言う人もいるかもな」
「違う! その次の彼氏もその次の彼氏も! 最初はするの、何回か。でもそのうち私を崇拝するようになるの!」
変なことを言っているのはわかってる。
「私の魅力がなさすぎるのかと思ったんだけど、みんなそうじゃないって言うの」
しばらく黙っていた横山が口を開いた。呆れてものが言えないのかと思ったけど、そうじゃなかったらしい。
「実は……俺も最初は普通にセックスしてたんだ。でもしばらくすると、なんて言うか……彼女の方だけが奉仕してくるようになったんだ」
「えっ、どういうこと?」
「だから、俺は何もしなくていい状態、マグロっての?」
「それは、ラッキーなの?」
「いや、なんか変な気分。俺だって好きな子とは一緒に楽しみたいと思ったし」
「でも、してるだけ羨ましい。私なんて抱いてもらえないんだよ」
「いや、そのせいでもう一年以上彼女作ってないよ」
「理由に心当たりは?」
「ないよ、全然」
これはもしかして……
私たちは、仕事を結構早く終わらせることができたけど、少し時間を潰して直帰の連絡をした。もちろん了承された。
私は横山を連れてツクシちゃんのいる喫茶店へと急いだ。途中で私の前世の話をしたが、流石に横山は胡散臭そうな顔をしていた。ま、仕方がないか。
ファンシーな喫茶店に連れてこられて、おすすめのロイヤルミルクティーを飲むイケメン横山。いいもの見たなと私はニヤついた。写真撮っちゃおうかな。
ツクシちゃんは接客中なので少し待つことになっていた。その間に、もう一度私の前世の話を聞かせた。今朝の夢の話も聞かせた。半信半疑といった顔の横山。
「おまたせ〜あらあら? イケメン連れてくるなんてやるじゃないイチゴちゃ……」
途中で黙って席に着くツクシちゃん。なに? 怖いんだけど。
「彼のことも占っちゃっていいの?」
「お願いします! 特に前世関係」
ツクシちゃんはタロットを混ぜながら彼の目をじっと見る。それを見て、私は初めてツクシちゃんの瞳が少しグレー寄りのブラウンなとこに気づいた。ツクシちゃんてハーフかなんかなのかしら。
「こんなことがあるなんてねぇ。あなたお名前は?」
「横山夏樹です」
「なっちゃんね。なっちゃん、イチゴちゃんから彼女の話は聞いた?」
「前世で国を救ったってやつですね」
「そう。実はね、あなたもなの。心当たりあるでしょ?」
「救った心当たりはありませんが」
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「あなたはね、略奪されて隣の国に攫われていく女性たちを大量に救って命を落としたの。だから、女性にはモテて尽くされるわ。そして、その親御さん世代にも感謝されているはず」
「……」
「今はどの程度?」
「えっ?」
「その尽くされ方が激しくなってきてるかってことだと思う。ちなみに私はピークって感じ。付き合ってた彼が二ヶ月でお父さん化したよ」
横から口を出した。
「なるほど。どうだろう。みんなすごく優しいけど、彼女はもう一年いないからなぁ」
「もうここまできたんだから言っちゃえ言っちゃえ」
彼は言葉を濁しながら、最後の彼女の尽くし方を話した。やはり、徐々に崇拝っぷりが激しくなってきていたようだ。あまりの生々しさに顔が熱くなった私は、アイスコーヒーを追加注文した。
なんだかすごい話になっちゃって、私たちはとりあえず落ち着こうとそれぞれの飲み物を飲んだ。
「イチゴちゃんには前にも言ったけど、その年齢が近くなるほど崇められるし、その後亡くなった年齢を越せば少しずつ元に戻っていくと思うのよね」
ツクシちゃんが説明する。
「あ! ツクシちゃん! 私夢を見たの。私を送り出す宴の夢。ううん、夢じゃないと思う」
「そう。辛かったわね。その中で何か変わったことはあった?」
「私の婚約者は私の妹と結婚することになることになったみたい。私は妹の幸せを願って自ら志願したんだと思う」
「そう。今のあなたの状況を見ると、妹さんも幸せになったし、国中の人が安心して暮らせるようになったんでしょうね」
よかった。前世の私グッジョブ。でも、見返りはいらないんだよ。