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【俺はもう、大丈夫だヨ】
Episode.18 雨
《🎼🍍side》
帰り道。
今日も、こさめもいない。
いるまもいない。
一人。
足元の小さな石を蹴る。
コツン、コツン、と前に転がる石を追いかけるみたいに歩く。
時間を潰す。
ギリギリまで。
早く帰っても
……気まずいだけだから。
空を見る。
曇り。
朝より、少し暗い気がする。
まぁ、気のせい。
風が吹く。
ひやっとした、冷たい風。
その瞬間、胸の奥がざわついた。
嫌な予感。
『この風は雨が降るサインなんだよ』
ふと、思い出す。
小さい頃、 父さんがよく言ってた言葉。
足が止まる。
少しだけ、 立ち止まる。
父さん───
ポツ。
ポツ。
地面に、小さな水玉ができる。
🎼🍍「……あ」
次の瞬間。
ザーッ………
🎼🍍「っまじかよ」
一気に降り出した。
強い雨。
叩きつけるみたいな雨。
肌に当たると、少し痛いくらい。
🎼🍍「やば……」
辺りを見る。
屋根、ない。
店、ない。
家、ない。
🎼🍍「っ……ここなんもねぇ」
最悪だ。
人の家に入るのも無理だし。
俺は走った。
ランドセルが背中で跳ねる。
バタバタと音を立てる。
髪が一瞬で濡れる。
服も、水を吸って重くなる。
体が、一気に冷えていく。
やっと見つけたのは。
古びたバス停。
屋根はある。
けど、穴だらけ。
そこから雨が落ちてくる。
それでも、ないよりマシだ。
俺は座る。
ランドセルを膝の間に挟む。
濡れた髪をかきあげる。
🎼🍍「……はぁ」
力が抜ける。
寒い。
鳥肌が立つ。
腕をさする。
最悪だ。
天気予報、見とけばよかった。
外を見る。
雨は、弱まるどころか強くなってる。
道路に打ち付けられて、跳ねてる。
……帰れない。
待つしかない。
時間が、ゆっくり過ぎていく。
***
……どれくらい経ったんだろう。
寒い。
体が震える。
歯が少しカチカチ鳴る。
🎼🍍「……さむ……」
小さく呟く。
いっそ、走って帰ろうか。
そう思う。
でも。
……足が動かない。
父さんの顔が浮かぶ。
びしょ濡れで帰ったら、
どんな顔するんだろう。
心配、するよな。
きっと。
それを考えたら。
動けなかった。
車が通る。
バシャッと水が跳ねる音。
それだけが、やけに大きく響く。
屋根の穴から空を見る。
真っ暗。
……これ、夜まで続くのかな。
「───!」
……?
何か、聞こえた気がした。
遠くから。
誰かが叫んでるみたいな。
……気のせい。
車の音だろ。
そう思った。
「───ん!」
また。
今度は、少しだけはっきり。
男の人の声。
……?
バシャンッ。
車が近くを通る。
ビクッとする。
心臓が跳ねる。
🎼🍵「ひまちゃんっ……」
…………え?
今の。
耳が、はっきり拾った。
🎼🍵「ひまちゃん…どこにいるのっ…」
間違いない。
父さんだ。
俺は、立ち上がる。
迷わない。
雨の中に飛び出す。
一瞬で、また全身が濡れる。
冷たい。
でも、そんなのどうでもいい。
🎼🍍「っ父さん…!」
声を張る。
🎼🍍「ここにいるよ!俺、ここ!」
雨にかき消されそうになる。
それでも、叫ぶ。
🎼🍍「───父さん!!!」
遠くに、影。
背の高いシルエット。
細くて。
少し頼りなくて。
でも。
分かる。
俺の、父さんだ。
🎼🍵「ひまちゃん───!」
声が近づく。
バシャバシャと水を踏む音。
父さんは、傘をさしていた。
でも。
全然意味ないくらい、びしょ濡れだった。
髪も、服も。
全部。
🎼🍍「っ……父さん……?」
近づいてくる。
息、荒い。
肩が上下してる。
🎼🍵「ひま……ちゃん……っ、はぁ……よかった……」
息切れ、 すごい。
胸が、苦しそうに動いてる。
俺は、一瞬だけ考える。
でも。
口から出たのは。
🎼🍍「……父さん、びしょ濡れじゃん」
なんか、 笑ってしまった。
自然に。
🎼🍵「ひまちゃんこそ、びしょ濡れだよ?」
父さんも、少し笑う。
メガネのレンズは水滴だらけで。
ちゃんと見えてるのか分からないくらい。
でも、 その顔は。
いつもの父さんだった。
🎼🍵「ごほっ……げほっ……」
咳。
強い咳。
体が少し折れる。
🎼🍍「父さん!?大丈夫…?」
思わず近づく。
🎼🍵「……大丈夫、大丈夫」
息を整えながら、笑う。
🎼🍵「ちょっと、走りすぎただけだから」
……嘘だ。
分かる。
でも。
俺も、何も言わない。
言えない。
父さんは、もう一本の傘を差し出す。
🎼🍵「ほら」
🎼🍵「これ、ひまちゃんの」
🎼🍍「2本持ってきたの?」
🎼🍵「うん。どうせ濡れてると思って」
少し得意そうに笑う。
🎼🍍「……ありがと」
傘を受け取る。
開く。
バッと広がる音。
その下に入る。
雨の音が、少し遠くなる。
🎼🍵「……帰ろっか、ひまちゃん」
父さんが言う。
その声は、 いつもと同じで。
優しくて。
何も変わってないみたいで。
🎼🍍「……うん」
頷く。
並んで歩く。
雨の中。
傘の下。
少しだけ、距離が近い。
肩が触れそうなくらい。
……あったかい。
父さんの存在が。
すぐ隣にある。
それだけで。
さっきまでの寒さが、少しだけ消えた気がした。
next.♡1000
コメント
6件
幸せがたくさん....だからこそ別れる時がいちばん悲しくなるんだよな.....、 🍵くん優しすぎるよ、激しい運動って大丈夫なのかな、?
やっぱり🍵くん優しいな… また2人の笑顔が見れて嬉しいよぉ😭😭 これからどうなるんだぁァ、想像つかない𓈒𓂂𓏸 続き楽しみ😁😁
こういうちょっとした時間がかけがえのない時間なんだなって伝わりました。 サムネ?の赫くんと翠くんの笑顔の写真を見ると更に切なくなってくる😭