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「だから、俺は大丈夫だって!部下も俺ん所で処罰を決めるから! 」
「そんな甘ったれたこと言ってる場合じゃないでしょ!お前殺されかけたんだよ!?」
「四肢吹っ飛んでも数日経ったらピンピンしてる俺らが今更毒云々でウンタラカンタラ言う必要はないっつってんだよ!」
ああ、だからバレたくなかったんだ。面倒くさいことになるから。
何時もは俺の事罵ったり馬鹿にしたり虐めたりする癖に、俺が他人に何かされるのは酷く嫌うコイツら。
理解が及ばない。嫌いな奴が、運が良ければ苦しむかもしれないのに、なぜ放っておけないのか。
他の国が毒を飲んだなら分かるさ。でも、飲んだのは俺だ。両手でも収まりきらない程の回数毒を飲んできたし、飲まされてきた。
今回みたいに盛られることも、その逆で敵に盛る為に被検体にされたことも、捕虜として捕まった時の拷問時にと、とにかく、沢山飲んできた。
そりゃ、最初の頃は苦しくて苦しくて仕方がなかったさ。でも、今は誰もやりたがらない毒味役を買ってでる位には耐性もついたし、抵抗もなくなった。
ましてや国体の中でも嫌われ者の俺が飲んだのなら、喜べばいいのに。
寧ろ、そうしてくれた方がいつもの様に振る舞えて気楽というものだ。
「もう毒なんて慣れてるんだよ俺は…今まで何回盛られたと思ってんだ!上司に部下に刺客に…色んなやつに色んな毒盛られたんだ…今回の奴なんて特に飲まされ来たやつだ、気になんてしなくていいんだよ!」
「なら尚更、もっとご自身の体に気を使わなくてはですよ…そんな事をなさっていては、どんどん体が弱っていきますよ」
「国の経済状況は悪くないから…大丈夫だ」
「そういう問題じゃないよ!イギリスが苦しい思いするの、俺やだよ〜!!」
「はぁ?なんでだよ、俺が苦しんでるなら逆に喜べよ、お前らなら 。嫌いな奴が苦しむなら願ったり叶ったりだろ」
あー嫌だ。優しくされるのに慣れなくてソワソワする。これじゃまるで俺がMみたいじゃないか。
「俺たちが君のことを嫌い?一体何言ってるんだい君は、嫌いなわけないんだろ!」
「今つまらねぇ嘘はいいっての、お前ら散々俺の事罵ったり馬鹿にしかり怖がったりしてるだろ」
「それはそうだけど…嫌いって言ったことは、1度もないだろ?」
「……………」
確かに、と納得してしまった自分が悔しい。
アメリカの言う通り、散々罵られたことはあった。小馬鹿にされることも、逃げれる事も当たり前のようにあった。でも、そんな中でも” 嫌い “という言葉を聞いた記憶は、確かになかった。
じゃぁ、こいつらは本当に―――
「本気で、俺の事心配してんのか…?」
「だからさっきからそう言ってるだろ!」
全く…、なんてため息混じりに言われたのが、俺はどうしようもなく嬉しくなった。 誰かにこんなにも心配されるのは、俺の中では珍しすぎた。
国と国との戦いで、手足を失っても、敵から拷問されて苦しんでも、被検体として苦しんでも、国の経済状況が悪くて寝込んでも、人はみな「人外なら大丈夫」と言って目も止めてはくれなかったから。
” 毒を飲んだ “というのは、俺にとってはまるで珍しくないし、なんなら慣れ過ぎたものだ。けれど、皆の中では違う。皆の中で” 毒を飲んだ “というのは酷く大事で、大事件らしい。
血反吐も吐いて居ない、ピンピンしている国にも、こんなに優しくしてくれるのが信じなくて、驚いて、嬉しくなる。
こんな時に浮かぶ感情としては不正解だと言うのは分かっている。分かっていても、嬉しいと思ってしまう。
思わず、驚きで下がっていた頬が緩んでしまう。
「お前…なんで笑ってんの?」
「…いや、前言撤回しないとな…って」
「今日は、いいティータイムを迎えられたよ」
今まで不幸を運んでいた毒が、1000年経って漸く幸を運んでくれたみたいだ―――
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END
コメント
4件
続ききたーよかったねアーサー!
最高でした!!!! アサぁ…自分のことを大切にしてくれぇ…!