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カタカタカタカタカタ
他の都道府県も誰も居ない暗いオフィスにキーボードの音が響く。
時計の長い針は11時ぴったりを指していた。
普通ならもう目を閉じている時刻。こんな時間にまだ仕事をしていたのは東京だった。
東京「はぁ…」
一つため息をつき、コーヒーを飲む。
今日だけで2L以上はコーヒーを飲んだだろう。
東京「カフェインの過剰摂取は体に良くないってよく聞きますけど」
東京の眠気を抑えられる唯一のものはコーヒーだけだった。
東京「さて、今日はもうここまでにしましょうか。」
流石に終わらなそうな仕事にやる気がなくなった。
明日の仕事量が増えるだけだが、今日しっかり睡眠をとれば明日もまた頑張れるだろう。
東京「さてと…このコップを洗いに行きますか」
東京はそう言い、水道へと向かった。
ジャー
聞き慣れた音で水が流れる。
毎日仕事終わりにこのコップを洗うのは10回や20回どころではない。
つまり、それほどコーヒーを飲んでいたというわけだ。
東京がコップの汚れを洗おうと、スポンジを取ろうとしたときだった。
東京「隈が…」
水道の蛇口に反射した東京の目の下は、真っ黒になっていた。
明らかに疲れ果てた、社畜の顔。
東京「4時間も寝たら消えますかね…」
消えるわけのない隈に呆れ果ててしまった。
会社を出ると、冷たい空気が流れた。
もう…冬になったんだ。
東京が会社に勤め始めたのは春だった。
それからずっと仕事をする毎日。
東京「正直私って、結局何もできてないですね」
終電を逃した東京はタクシーで帰ろうと何もかもを失ったような背中でゆっくり歩いていった。
“変態”と言われる毎日。
何回言われたんだっけ、変態って
変態と言われるごとに自分の心が少しずつ希望を失っていくように感じる。
タクシー乗り場に着くと、ふと上を見上げた。
東京「北海道さんと沖縄さん…」
2人は仲良く高級レストランで食事を楽しんでいた。
いいなぁと思いつつも、こんな未来は100年後か1000年後。
2人に呪いの呪文を唱えていると、背後からまた2人の声が聞こえた。
もう、声で分かってしまった。
東京「群馬さんと栃木さん…」
盗み聞きは良くないことは分かっていたが、こっそり2人の話を聞いてみることにした。
栃木「東京さんってさ、本当変態だよね」
自分の話題だった。
特に”東京さん変態だよね”は本当に嫌いな話題。
こんなに気軽に変態だよねって言われることに悔しみを感じた。
栃木「大阪さんとかもしょっちゅう犯してるとか。」
そうですよ。
しょっちゅう犯してます。
でも、
群馬「東京なんて死ねばいいのにな」
心臓が一瞬止まったような気がした。
やっぱり私って嫌われてるんですね。
嫌われてる都道府県ワースト1位。
ちっとも嬉しくありません。
群馬「早く帰って韓ドラでも観ようぜ」
栃木「え、!?やったー!!」
私の心は完全に壊れた。
変態って言われるの、
これで何回目だっけ。
本当は、セックスなんて
したくないんですよ。