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基本感情と呼ばれる六つの感情、怒り、悲しみ、幸福、驚き、恐怖、中性の6つといわれているらしい。いわれていると言うのは、これもあくまで一説によるからだ。中性とはなんなのか、速度が興味という原動力によりました眼球が書き連ねられた文字を読み進める。
「なるほど。わかりやすい。」
中性とは、感情を仮に座標平面で表した時、
原点に位置するもののことらしい。
要するに平常心ということになる。
この感情の分類を主軸とすると。
僕は少し考えてから、八幡のところに向かおうと思った。八幡は亀の捜索も兼ねてこの街に滞在しているらしい。無論どこにいるかは教えてくれない。なのに何故会いに行くと思ったのか、らしくもなく僕は考えていた。この街には八幡神社(はちまん)という神社があるのだ。
そう八幡だ。論理性に欠けるとは一概には言い切れないのではないか。何故なら八幡は僕に居場所を伝えなかった。つまりはそこにいるということ。改めて整理すると、我ながら乱脈だな。平安京を連想させる、本棚の並びを何となく眺めながら出口へ向かう。
なな、7は素数だよな。本の題名にその数字が書かれていた。
「やあ、まさか蕪木君がスピリチュアルなタイプだったなんてね。少し意外だよ。」
「それはどういう意味なんだ、一応、僕はあんたを見つけたんだよ。」
「まあいい僕に会いに来たってことは話があるんだろう。」罰当たりにも賽銭の上で足を組んで座っている。
「ああそうだ。時亀が食った感情によって具現するものの特性は変わったりするのか。」
「そうだね。食った感情に依存しているよ。だけどね、亀は他人に対する感情は食べないんだよ。あくまで、未来や過去に対する感情のみを食べるんだ。だからこそ具現したものが実害を与える事は理論上ないんだよ。具現されたものは自立はしていても自律はしていないんだよ。
食べた感情に支配されているからね。」
「理論、その理論は正しいのか。」
「少なくとも、間違いはないだろうね。今回の亀が新種なのか、升沢ねりが異例なのか。君は升沢ねりについて何かわかったのかい。」
「まだ何も、周りから切り崩していこうと思って。」
「それで、感情の分類とか思いついたわけか。」賽銭箱がきしんでいる。黒く長い髪が風でたなびいている。八幡は少し考えてからこう言った。
「人を騙くらかす。そうだな。わかりやすい行動パターンではないな、対人関係は多いに関わっているとは思うんだが。」
僕は顔に出やすいタイプなのだろうか、表情が曇っている事を指摘された。
「心当たりがありそうだね。」
僕は升沢ねりが頼み事をされることについて話た。
「升沢本人はそれをよしとしているのかい。」
「わからない、けどよしとしてはいないと思う。」
「君はいつもそれを見てどうしているんだい。」
「手伝う。」
「なるほど。でもね、それ自体は珍しいことではないよね。升沢ねりがそれをどう受け取るか、それに、それだけじゃ感情に実害は伴わないと思うよ。」
「それでも」僕は胸が張り裂けそうだった。
八幡は同情とか、諭すわけでもなく、事実を淡々と述べるように言った。
「そうだね。自分を押し殺すというのは褒められたことではない。それに、蕪木君の行動も彼女に浅い希望を与えてしまっていると、僕は思うよ。」
「そうか」僕はどこか胸を撫で下ろした気がする。八幡はショートケーキの上にのっかている苺を最後に食べるかのように言った。
「けどね、間違えちゃいけないよ。重要なのは彼女自身が1人で助かることなんだよ。出ないと根本的な解決には至らない。君はもうすでに傍観者じゃないみたいだからいうけど、あくまでも手助けをするんだよ。真の升沢ねりを知り、受け入れるんだよ。友として。」
「手助け」
境内の静けさが木々のざわめきを際立てる。
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