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放課後の図書館を出ると、外の空気は昼間とはまるで別物だった。
風が少し冷たくて、空はもう群青から夜の色へと変わっている。
校庭の方からは、音楽と歓声が混じり合った声が聞こえてきた。
葵:「……行こっか」
隣で葵が、いつものように明るい笑顔を向けてくる。
私は小さくうなずいて、歩き出した。
校庭に着くと、そこはまるで別世界みたいだった。
提灯やイルミネーションがあちこちに飾られていて、地面には光がやわらかく反射している。
キャンプファイヤーの火が中央で揺れていて、その周りを囲む生徒たちの笑い声が夜空に響いていた。
(……昼間の文化祭より、こっちのほうが綺麗)
賑やかなはずなのに、不思議と胸の奥は静かだった。
それはきっと、葵が隣にいるからだ。
葵:「ねぇ見て、あれ! すっごい綺麗じゃない?」
葵が指差した先では、上級生たちが音楽に合わせてダンスを踊っていた。
楽しそうな笑顔と光が混じって、まるで映画のワンシーンみたいだった。
凛:「……たしかに」
素直にそう返したら、葵は「でしょ!」と得意げに笑った。
その笑顔が、夜の光を受けて少しきらめいて見えた。
(……なんで、そんな顔で笑うのよ。心臓、うるさいじゃない)
人が増えてきて、少し押されるように歩き出す。
ふと、隣の葵と肩がぶつかった。
葵:「ご、ごめ──」
凛:「あっ……」
そのとき、手と手がふいに触れ合った。
ほんの一瞬だったのに、火の粉に触れたみたいに心臓が跳ねる。
お互いに一瞬目を見合わせて、すぐに逸らした。
(な、なにこれ……! ちょっと触れただけなのに……)
人の流れに押される形で、自然ともう一度、彼女の手を掴んでしまった。
昼間のあのときみたいに──でも、今は自分から。
凛:「……こっちのほうが歩きやすいから」
苦しい言い訳みたいにそう言うと、葵は少しだけ目を丸くして──にこっと笑った。
葵:「うん。ありがと」
その声が、夜の空気の中でやけに近く響いた。
やがて音楽が少し静かになって、司会の先生の声が校庭に響く。
「──それでは、今年の後夜祭、最後のイベントです!」
歓声があがり、みんなが一斉に中央の火を囲むように集まっていく。
私と葵も、その輪の端に立った。
空を見上げると、少し星が見えていた。
夜風が頬をかすめて、指先の温度がはっきり伝わってくる。
葵:「……ねぇ、凛」
葵が、少し小さな声で呼びかけてきた。
凛:「ん?」
葵:「今日さ……楽しかった?」
それだけだった。
でも、なんでもないようなその言葉が、胸の奥にストンと落ちた。
凛:「ええ……とっても」
葵:「そっか、よかった」
葵はくすっと笑って、火の方に顔を向けた。
その横顔を見ていると、胸がじんわりと熱くなった。
(……なんで、こんな気持ちになるんだろう)
夜空と火の光の中で、みんなが笑っている。
でも私にとって、この時間は──葵と過ごしている「この瞬間」こそが特別だった。
(……もし、ずっとこの時間が続けばいいのに)
そんなこと、ふいに思ってしまった自分に驚いて。
だけど、それを否定する気にはなれなかった。
こんにちは~最近♡がたくさんきてて、ハッピーな主です!
またまたここまでたどり着いてくれて、ありがとうございます!これからどうのるのでしょうか??
ではまたねーん!♡、コメント、フォロー、よろしくお願いします。