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彷徨う漆黒

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1-2.挨拶

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2023年11月28日

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佐川が声をあげるも依然として、周囲の反応もなく鎮まり返っている。

タキシード男はゆっくりと立ち上がった。

服に付いた汚れを軽く叩く。

やれやれという表情を浮かべながら、佐川を真っ直ぐ見た。

「君の名前は佐川 涼ですか、ならば私も挨拶をするのが礼儀ですかね」

周囲をキョロキョロし、ハットを見つける。

男は左手を伸ばした。

ハットを深々と被り、視線を佐川に向けた。

「私の名前はサーザスです、どうぞお見知りおきを」

服装からかなりお高いタキシードと思われる。

ネクタイも黒色でお葬式かと感じる程だ。

紳士的な雰囲気に苦手意識を持ちながらも、佐川は相手を観察してみた。

身長は180cmくらい、黒髪ロングのオールバック、目は赤色でつり目、体型は痩せ型。

恐らく50歳と思われるが、姿勢が良く年齢を感じさせない佇まいだ。

反撃の拳が左頬にヒットしたが、赤みもなく平然としている。

「うーむ、苦手なタイプだ」

口には出さないが、ゲンコツ制裁するお爺さんタイプの方がまだ話が通じそうだ。

佐川は左足を前に踏み出し、目線をサーザスに向ける。

「ごめんなさい」

軽く会釈した。

サーザスは無反応だが、佐川は続けた。

「右ストレートが見事に決まったことは謝罪します」

突然の出来事だが、佐川も悪く反省していた。

だが、どこかむず痒い。

なぜ、自分は川へ投げ飛ばされなければいけないのか。

佐川は強い口調で言った。

「だが、あんたも悪い」

「お互い、ごめんなさいでこの場を納めませんか」

サーザスは不敵な笑みを浮かべ、右手を挙げ振り下ろす。

その瞬間、目に見える三日月の風を佐川へ向けて放った。

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