コメント
0件
「……あのさ、なんで君はいつも私の後をつけているわけ?」
私は、後ろを振り返る。そこには、一人の少年の姿があった。彼は、私の同級生だ。
「それは、あなたが好きだからですよ!」
そう言って、彼は私に向かって飛びついてきた。
「ちょっ! やめてよ!! 離れろ!!」
私は必死に抵抗する。しかし、彼の力は意外に強く、なかなか振りほどけない。
しばらく暴れたあと、ようやく彼を引き剥がすことに成功した。
「もう、なんでこんなことしてるんだよ」
私は、息を整えながら彼に問いかける。
すると、彼は顔を赤らめながらも、こう言った。
「その……僕が先輩のこと好きなの知ってるでしょう?」
そう言って、照れ隠しなのか、目を逸らす。
知っている。だからって、どうして私を押し倒す必要があるんだ。
私は呆れた目で彼を見つめる。
「ねぇ、僕の気持ちに応えてくれなくてもいいからさ、ちょっとだけ付き合ってよ」
「嫌だよ」
「なんで? 別にいいじゃん」
「よくない」
私は、彼の手を振り払った。
けれど、彼は諦めずに私の腕を掴む。
そして、そのまま引き寄せた。
「っ!? 何すんの!」
「ほら、こっち来てよ。星が綺麗だろ?」
空を見上げると、そこには満天の星が広がっていた。
思わず言葉を失うほどに、その景色は美しかった。
まるで吸い込まれてしまいそうなほどの輝きに、心を奪われる。
だけど、それは一瞬のことだった。
私は、彼に背を向けるようにして歩き出す。
この景色を忘れないようにするために。
「おーい! 待ってよー」
彼は私を追いかけてきた。
私の隣に並ぶ。
そして、私と同じように夜空を見上げた。
「すごいね。こんなにたくさん光っているんだから、きっとたくさんの人が見ているんだよ。綺麗だよね!」
キラキラとした瞳でそう言った彼の横顔を見て、胸が高鳴る。
私は咄嵯に顔を逸らした。
「うん、そうだね。すごく、きれい。……あっ、ほら、見て。流れ星だよ。お願い事をしないと」「え? ほんとうだ! 何をお願いしようか?」
嬉しそうな笑顔で私を見る彼に、私は精一杯の作り笑いを浮かべた。
そして言う。
「ずっと、一緒に居られますようにって、お祈りしましょう」
「ああ、それが良い!」
満面の笑み。本当に嬉しいんだろう。
そうして、彼は私と一緒に手を合わせて、目を閉じた。
私はその横顔を見ながら、思うのだ。
──ランプの魔神なんているわけがない 私は知っている。
私は、彼が私と同じ気持ちでないことを知っていた。