「……あのさ、なんで君はいつも私の後をつけているわけ?」
私は、後ろを振り返る。そこには、一人の少年の姿があった。彼は、私の同級生だ。
「それは、あなたが好きだからですよ!」
そう言って、彼は私に向かって飛びついてきた。
「ちょっ! やめてよ!! 離れろ!!」
私は必死に抵抗する。しかし、彼の力は意外に強く、なかなか振りほどけない。
しばらく暴れたあと、ようやく彼を引き剥がすことに成功した。
「もう、なんでこんなことしてるんだよ」
私は、息を整えながら彼に問いかける。
すると、彼は顔を赤らめながらも、こう言った。
「その……僕が先輩のこと好きなの知ってるでしょう?」
そう言って、照れ隠しなのか、目を逸らす。
知っている。だからって、どうして私を押し倒す必要があるんだ。
私は呆れた目で彼を見つめる。
「ねぇ、僕の気持ちに応えてくれなくてもいいからさ、ちょっとだけ付き合ってよ」
「嫌だよ」
「なんで? 別にいいじゃん」
「よくない」
私は、彼の手を振り払った。
けれど、彼は諦めずに私の腕を掴む。
そして、そのまま引き寄せた。
「っ!? 何すんの!」
「ほら、こっち来てよ。星が綺麗だろ?」
空を見上げると、そこには満天の星が広がっていた。
思わず言葉を失うほどに、その景色は美しかった。
まるで吸い込まれてしまいそうなほどの輝きに、心を奪われる。
だけど、それは一瞬のことだった。
私は、彼に背を向けるようにして歩き出す。
この景色を忘れないようにするために。
「おーい! 待ってよー」
彼は私を追いかけてきた。
私の隣に並ぶ。
そして、私と同じように夜空を見上げた。
「すごいね。こんなにたくさん光っているんだから、きっとたくさんの人が見ているんだよ。綺麗だよね!」
キラキラとした瞳でそう言った彼の横顔を見て、胸が高鳴る。
私は咄嵯に顔を逸らした。
「うん、そうだね。すごく、きれい。……あっ、ほら、見て。流れ星だよ。お願い事をしないと」「え? ほんとうだ! 何をお願いしようか?」
嬉しそうな笑顔で私を見る彼に、私は精一杯の作り笑いを浮かべた。
そして言う。
「ずっと、一緒に居られますようにって、お祈りしましょう」
「ああ、それが良い!」
満面の笑み。本当に嬉しいんだろう。
そうして、彼は私と一緒に手を合わせて、目を閉じた。
私はその横顔を見ながら、思うのだ。
──ランプの魔神なんているわけがない 私は知っている。
私は、彼が私と同じ気持ちでないことを知っていた。
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